イラン反政府デモで仮想通貨の取引急増か?

(写真:ロイター/アフロ)

中東のイランでは年末・年始を挟んで反政府デモが広がりを見せ、世界的な株高傾向は維持されたものの、一部のマーケットでは緊張感が高まった。イラン産原油の安定供給が維持されるのか警戒感が高まる中、国際原油価格は2015年5月以来の高値を更新している。安全資産の代表格である金市場にも投機マネーが流入し、国際金価格は昨年9月以来の高値を更新している。

イラン政府が情報統制を行っていることで不確実な部分も多いが、一連の反政府デモが広がりを見せる中で、仮想通貨市場では顕著な動きがみられた。すなわち、イラン通貨リヤル(IRR)とビットコイン(BTC)との間の取引量が急増しているのである。

昨年12月にはビットコイン価格が急騰したため、各国通貨とビットコインとの間の取引量が増えたのはイランに限られたものではない。このため、イラン人が単純な「投機」でビットコインを購入した可能性も否定できない。少なくとも、一部はこうした短期売買目的だとみて良いだろう。

ただ週間ベースの取引量をみると、11月中旬時点では週に50億リヤル前後だったのが、一時は700億リヤルを突破し、政情不安が伝わり始めた12月入りしてから一気に取引量が急増したことは注目に値しよう。

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これは、イラン国内の経済環境悪化を警戒して、自国通貨リヤルからビットコインに資金を退避させる動きが活発化した可能性がある。イラン経済環境の混乱は、同国通貨の購買力を毀損する動きにつながりかねず、ビットコインなど値上がりしている仮想通貨で購買力を維持したいとの意向が働いた可能性がある。今回の反政府デモは、米国やイスラエル、サウジアラビアなどとの関係悪化も加速させており、このまま法定通貨であるリヤルを保持し続けることが妥当なのか不安心理が広がった際に、仮想通貨が「受け皿」としての役割を果たした可能性がある。特に、イランに関しては米国が経済制裁を科した場合のリスクから米ドル保有リスクも高く、リヤルからの受け皿の選択肢は多くないことも影響した可能性がある。

また、政府が各種統制を強化する中、匿名性の高い仮想通貨で資産を防衛したいとの意向も働いた模様だ。代表的な仮想通貨たるビットコインのみならず、より匿名性の高いモネロ(XMR)などのいわゆるアルトコインに対する資金流入も報告されている。

■新興国で加速する金と仮想通貨の競合

これと同様の動きは、昨年11月のジンバブエでも観測されている。もともと高インフレで代替通貨に対するニーズが高い土壌もあったが、軍事クーデターの発生を受けて、同国内の取引所では国際相場を無視した高値形成が行われた。同国中央銀行は、ビットコインは合法ではないと警告を発していたものの、国際相場の二倍の値段がついても資金が流入する異常事態になった。

従来の常識では、こうした政治環境の混乱環境では国際基軸通貨のドル、安全通貨としての歴史と定評のある金などを購入する動きが一般的だった。しかし、近年は小口資金の法定通貨に対する退避ニーズ、ヘッジニーズの一部が仮想通貨にシフトする傾向が観測され始めている。欧州債務危機時点では、まだユーロからドルや金貨などに資金をシフトさせる動きが優勢だったが、ネットワーク上のデジタルデータのみで瞬時に取引が完結する利便性もあって、少なくとも一部地域で自国の法定通貨の保有リスクが高まった際には、仮想通貨に資金をシフトするトレンドが形成され始めていることは間違いなさそうだ。

金と仮想通貨では、技術的な方向性が正反対の方向性にある一方で、法定通貨に対する代替通貨としての性格は共通している部分も多い。取引の利便性などの観点では、明らかに仮想通貨が金に対して優位性を有しており、金はこれまでの「法定通貨との競合」から、「仮想通貨との競合」という二つのテーマを同時に消化する必要性に迫られている。

金市場では、ネットワークに依存せず、鉱山から産出された現物の存在による本源的価値の存在によって、逆に代替通貨としての金の魅力を増すといった議論もある。通貨を取り巻く技術の進歩によって、逆に従来から技術環境が大きく変わらない金の魅力が増すとのロジックである。ただ最近の新興国の金融経済危機にあっては、仮想通貨に対する注目度の高さは否めない状況になっている。単純に仮想通貨全体の価格が上昇しているという時代の追い風もあるのだろうが、金と仮想通貨との競合がどのような方向性に向かうのかは、金と仮想通貨双方の将来に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

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