高金利通貨でも下げ続けるトルコリラ

(写真:アフロ)

トルコ通貨リラの下げが続いている。昨年末の時点では1リラ=33.12円で取引されていたのが、年明け後は30円の節目割れ定着を打診する展開になっている。1年前のこの時期には40円近辺で取引されていたが、そこから対円でリラの価値は4分の1程度も失われた計算になる。年初からだけでも10%程度の下落であり、リラ相場の底が見えない状況になっている。

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トルコのエルドアン大統領は1月12日、対ドルでリラ相場が過去最安値を更新したことを受けて、投機的な動きから通貨を防衛するために国民が結束することを訴えた。「投機筋が為替レートを武器にしてトルコ国家転覆をはかっている」として、国民運動として外貨を売って投機筋に対抗することを呼び掛けている。民間ベースの為替介入とも言える案だが、当然に国民が外貨売り・リラ買いを進めるような必要性は見当たらず、寧ろ購買力が失われるリラを売却するニーズが高まる一方の状況にある。

背景は単純であり、トルコのインフレ環境に見合った金融政策が展開されていないことに尽きる。エルドアン大統領は「投機筋」を批判しているが、マーケットではトルコがインフレをコントロールできないとの不安が広がっていることが、通貨に対する信認低下を促しているのである。つまり、リラ安の犯人は「エルドアン大統領」とその意向に逆らえない「中央銀行」とマーケットはみているのである。

トルコの消費者物価指数(CPI)は昨年12月時点で前年比8.5%上昇と、11月の7.0%から大きく上振れしている。1月の9.6%は下回っているが、通貨安で食品と飲料を中心に物価上昇圧力が強くなっている。本来であれば、中央銀行はこうした状況に対抗するために「利上げ」が求められているが、エルドアン大統領は景気刺激のために逆に「利下げ」を強く求めており、政治的圧力から中央銀行は身動きが取れない状況になっている。ただでさえ、銃乱射事件や爆撃事件などで投資家マインドは冷え込んでいるが、中央銀行が通貨防衛に消極姿勢を崩さない中、通貨リラを保有するリスクは高まる一方の状況にある。

さすがに現在の通貨安環境は放置できないとして、1月24日の金融政策会合では翌日物貸出金利を年8.50%から9.25%まで0.75%引き上げた。しかし、マーケットでは不十分な対応として失望感の方が強く、同日のリラ相場は逆に「売り」で反応している。すなわち、金利が上がって売られたのである。

トルコ中央銀行に求められていることは、積極的な利上げでインフレと通貨安に歯止めを掛けることだが、政治からの独立性を有していないことで、必要なことができない状況になっている。年初からは、米国でトランプ新大統領の政治リスクからドル安圧力が強くなっているが、こうした中でもリラ相場は対ドルで下げ止まるのに精一杯であり、ドル安連動の反発さえ見送られていることが、リラ相場を取り巻く環境の厳しさを明確に物語っている。

トルコリラは高金利通貨として日本でも個人投資家の人気の高い通貨だが、高金利通貨とは資本を呼び込むためにそれだけの高い金利が必要な通貨ということでもある。政治、経済、金融と全ての部門にわたって投資家の信認を失う中、ここ最近のトルコリラ相場の値動きは高金利通貨の抱える高いリスクが顕在化した状況と言えよう。

もちろん、高金利は当該通貨保有の大きなメリットであることは間違いないが、金利以上に通貨の価値が下落することも少なくはない。投資家にとっては、単純に高金利通貨だけにつられるのではなく、なぜ高金利なのか冷静な判断が求められる。そして現在のトルコリラは、政治的、経済的な安定欠如などの以前の問題として、中央銀行の金融政策の独立性が不安視されている通貨の信認そのものが失われた状況になっている。