OPEC総会直前も、減産合意に不透明感あり

(写真:ロイター/アフロ)

11月30日、石油輸出国機構(OPEC)の第171回総会が開催される。2014年中盤以降の原油価格急落に対して静観姿勢を保っていたOPECが、改めて原油需給に対する介入を開始するか否かは、原油価格変動を通じて世界経済に与えるインパクトも極めて大きく、デフレ脱却が進まない日本経済にとっても重大な関心事になる。

OPECは9月28日に臨時総会(当初は非公式会合としていた)を開催し、OPEC全体としての産油量を日量3,250万バレル~3,300万バレルにすることで合意していた。OPECはこれを減産とは明言していないが、その時点での最新統計だった8月産油量が3,323万バレルだったため、マーケットでは23万~83万バレルの減産合意と同義と評価されていた。

しかし、具体的にOPEC加盟国のそれぞれが具体的にどのような形で生産調整を行うのかの合意には至らなかったことで、その時点では11月30日のOPEC定例総会で最終合意を目指す方向性が示されるに留まっていた。OPECとしては「合意」という成果を急いだものの、OPEC内での足並みの乱れを解消するまでにはいたらず、2カ月の「時間稼ぎ」を行う形で、マーケットに原油価格は上昇するとのメッセージだけを先行して発したのである。

そこで2カ月にわたる協議を経て、OPECが協調減産に最終合意できるのであれば話は単純だった。どの程度の期間にわたって減産を行うのか、OPEC非加盟国の協力を得られるのかといった論点も存在したが、少なくともOPECが生産調整を確実に実施すれば、過剰供給状態が続く国際原油需給が均衡状態に達する目途も付くためだ。

実際に、国際エネルギー機関(IEA)も最新の11月月報において、OPECの動向によっては「非常に早く」需給均衡状態が実現する可能性を指摘している。しかし、そのIEAもOPECの政策調整合意が失敗した場合には供給過剰が続き、再び原油価格が下落する可能性があると指摘するなど、OPECの最終合意が見送られた場合には漸く底打ち感が広がり始めていた原油相場が再び大きく下落するリスクを指摘している。

そして、OPEC総会まで残り4日に迫ったにもかかわらず(11月27日時点)、未だにOPECが生産調整で再集合意に至ることができるか分からない不安定な状態が続いているのが現状である。

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■イランはOPEC総会にどう臨むのか?

論点だけは明らかになっており、イランとイラクに(少なくとも)増産凍結を受け入れさせることができるかになっている。10月28~29日には、最終合意を目指す事前協議の場としてハイレベル協議が開催されていたが、そこではイランとイラクが増産凍結を拒否する一方、サウジアラビアがあくまでも増産凍結(更には減産)を求めたことで、最終合意には至らなかったとされている。サウジアラビアは減産の必要性を認識しているが、自国のみが過剰な減産を負担することでOPEC内の生産シェアが低下し、国際原油市場に対する影響力が低下することを強く警戒している。特に、中東地区の覇権を競うイランとの産油バランスが崩れることは強く警戒しており、イランに対してはあくまでも生産調整の実施を要求している。

一方、イランは核開発問題で欧米から経済制裁を受けた原油生産体制も復旧過程だとして、自国は生産調整の例外扱いとすることを求めている。また、イラクも「イスラム国」との戦費負担を理由に増産継続の必要性を訴えており、この両者の調整が未だに終了していない状況にある。

OPECは9月に日量3,250万~3,300万バレルの生産枠設定で合意した後も増産を続けており、最新の10月統計では3,364万バレルの産油量に達している。この数値を前提にすれば、3,250万バレルの産油量を達成するためには、全てのOPEC加盟国が3.4%の減産を行えば良いことになる。しかし、ナイジェリアとリビアは政情不安で著しい減産状態にあり、この二カ国に関しては産油量の回復が広く容認されている。このため、現在はこの二カ国を除く加盟国が4.0~4.5%の減産を行うことで調整を行っている最中である。

イラクに関しては、11月22日にアルジャファリ外相があくまでも増産を継続する方針を打ち出していたが、翌23日にアバディ首相が増産凍結を飛び越えて減産での協力の用意があるとの声明を出したことで、協力の目途が立ち始めている。しかし、イランに関しては未だに明確な態度表明が行われておらず、OPEC総会にどのような立場で臨むのかが読みづらい状況になっている。

シンボリックだったのが、サウジアラビアが11月28日に予定されていたOPEC加盟国・非加盟国との協議に欠席する意向と報じられていることである。本来であれば、この場はOPECの政策調整の方針を事前に固めた上で、OPEC非加盟国からどのような形での国際協調を得られるのかを話し合う場のはずであった。しかし、サウジはOPEC内での合意形成が遅れている現状でOPEC加盟国・非加盟国間の協議は意味がないとみている模様であり、OPEC内の調整を優先する意向を示している。

こうしたサウジの動きは、未だにイランとの調整が順調に進んでいない可能性が強く示唆しており、これまでOPECの政策調整に対する楽観ムードから上昇傾向を強めていた原油相場は、OPEC総会が迫る中で急落に転じており、マーケットにも強い気迷いムードが見受けられる状況にある。

■11月30日で世界経済見通しは大きく変わる可能性あり

今回のOPEC総会については、何も「合意」できないという最悪のメッセージを発するのは避けられる可能性が高い。このため、マーケットでも取りあえずはOPEC全体の産油枠だけを設定して、焦点となっている個別加盟国の産油量については継続協議扱いにする案なども有力視されている。ただ、マーケットの期待していることは、あくまでもOPECが個別加盟国の産油量を設定して、着実に減産合意を履行することであり、そうした見通しが立たない場合には原油相場は再び急落し、トランプ米次期政権の政策期待で強力なリスクオン環境にある世界の株式市場に対しても強力な逆風が吹き荒れる可能性がある。

いずれにしても、このまま何もしなければ原油需給は緩んだ状態が続く可能性が高く、OPECの推計では2017年にOPECの産油量を現行の日量3,364万バレルから3,269万バレルまで削減しない限り、国際原油需給バランスは均衡化しないことになる。OPECがこのまま生産調整実施で最終合意できれば何も問題はないが、それが不可能であることがOPEC総会で露呈した場合には、原油価格の急落でOPECやロシアといった伝統的な産油国、または、米国のシェールオイルやブラジルの深海油田、カナダのサンドオイルなどに対して改めて減産対応を迫る展開が要求されることになる。

11月30日のOPEC定例総会の結果は、原油価格に対して極めて大きなインパクトを及ぼすことが予測され、本格的な原油高の時代への回帰が進むのか、再び原油相場低迷の時代を迎えるのかは、世界経済にとっても無視できないインパクトを及ぼすことになりそうだ。

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