米大統領選から1週間で上がった株・下がった株

(写真:ロイター/アフロ)

11月8日の米大統領選の投開票から1週間が経過したが、米株式市場では各銘柄の間に大きなパフォーマンスの違いが観察されている。ダウ工業平均株価30種全体では、11月8日から15日にかけて590.32ドル高(3.2%高)の1万8,923.06ドルとなっている。特に、直近4営業日は連続して過去最高値を更新しており、トランプ新大統領の誕生に対して一応の歓迎の意向を示した格好になっている。

事前のマーケットでは、政策が読みづらいトランプ新大統領の誕生は投資環境に対する「リスク」要因と評価されており、実際に当確が出た9日のアジア時間には日経平均株価が前日比で1,000円を超える下げ幅を記録したことは記憶に新しい。しかし実際の大統領就任後は、言葉を選んだ発言内容に終始しており、反トランプ派からは選挙キャンペーン中に有権者をだましたと批判されるほどに、穏健な態度を見せていることが、マーケットに安堵感をもたらしている。事前の恐怖心が強かっただけに、空売りのチャンスを狙っていた向きが、ある意味で拍子抜けしたというのが実態だろう。

このタイミングで「トランプ銘柄」と言われるトランプ新政権の恩恵を受けやすい銘柄に買いが入ったことが、米国株の予想外の急騰をもたらした。マクロ環境としては、トランプ氏が積極的な財政出動を行うとの期待感もあり、米株式市場は一種の高揚状態に包まれている。

ダウ工業平均株価の急伸に最も大きく寄与したのが、金融大手ゴールドマン・サックスである。同社株価はダウに対する影響度が大きいが、大統領選後に16.1%もの上昇率を記録しており、これだけでダウを200.5ドル押し上げた計算になる。また、JPモルガン・チェースも13.3%高となっており、こちらもダウを63.9ドル押し上げている。トランプ氏が金融規制緩和方針を打ち出していることに加えて、同じタイミングで金利上昇圧力が強くなったことで、足元の業績と将来の業績の双方に拡大期待が高まった結果である。

また、重機大手キャタピラーも11.5%高となっており、ダウを66.8ドル押し上げた計算になる。トランプ氏が財政政策の拡張を志向していることで、公共事業関連需要が膨らむとの期待感が反映されている。これ以外では、オバマケア縮小で民間保険需要の拡大期待から、保険大手ユナイテッド・ヘルスが6.5%の上昇率を記録し、ダウを63.9ドル押し上げた計算になる。

一方、最もパフォーマンスが悪かったのがその他金融のビザであり、大統領選後に5.2%安となっている。ダウに対しては29.5ドルの押し下げ要因になった。ただ、これはトランプ氏の政策に反応したというよりも、金融規制緩和の直接的な恩恵を受けるゴールドマンやJPモルガンといった金融セクターの中心部分に資金が流れただけの影響が大きい模様だ。

これ以外では、アップルが3.6%安(ダウを27.1ドル押し下げ)、マイクロソフトが2.7%安(同11.0ドル押し下げ)など、グローバル展開を行っているハイテク企業の株が軟化した。トランプ新政権で各国との通商関係が悪化すれば、これらグローバル企業に対するダメージが大きいとの警戒感が広がっている。

問題は、こうした「トランプ銘柄」の急騰(急落)については、すべてトランプ新政権の政策を先取りした動きに過ぎず、金融規制緩和や公共事業拡大、オバマケアの縮小、通商関係悪化などの「思惑」が先行して形成されている株価水準であることだ。まだトランプ新政権は政権移行に向けての準備を本格化したばかりであり、少なくともマーケットの期待している程度の政策修正をおこなっていかなければ、今後は投機マネーが早めに買いポジションの決済に動くリスクが徐々に高まることになる。

トランプ新政権がここ1週間の株価急伸に値する政策を打ち出すことができるか、政権移行準備のウェブサイトのURLにもなっている「greatagain.com(再び偉大に)」の実現可能性が注目されている。

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