OPEC「減産合意」の真相

(写真:ロイター/アフロ)

石油輸出国機構(OPEC)は9月28日、非公式会合において「減産」を合意したことを明らかにした。正式合意は11月のOPEC定例総会まで持ち越されることになるが、OPEC全体の産油量を日量3,250万~3,300万バレルに抑制することが合意されている。OPECの9月月報によると、8月時点の産油量は3,324万バレルであり、これは事実上の減産合意になる。イランのザンギャネ石油相は、「日量70万バレル程度の減産」が決定されたと解説している。

事前のマーケットでは、今会合での減産合意は殆ど想定されていなかった。4月の産油国会合でも協議されたのは「増産凍結」であり、まずは減産以前の問題としてOPECの増産傾向にブレーキを掛けることが議論の第一歩とみられていたためだ。実際に、サウジアラビアのファリハ・エネルギーは会合前に「28日の協議で合意に達するのは困難」とした上で、「年内に産油量凍結を目指す」方針を示していた。その意味では、今回の減産合意は明らかなサプライズと言える。

イランが経済制裁前の産油水準を目指して増産を続ける中、OPEC全体の産油量の上振れを凍結することさえ容易ではない。しかし、サウジアラビアがイランの増産凍結の方向性を前提に減産の負担を担うことを決断した模様であり、原油市場は改めてOPEC(実質的にはサウジアラビア)が原油需給・価格の調整を行う時代に回帰するか否かの分岐点に差し掛かっている。

当然にサウジアラビアとしても減産は受け入れがたいものであり、特に財政難が続く中にあっては原油売却収入の減少は危機的状況につながりかねない。それにもかかわらず今回の「減産」に合意したことは、それだけ過剰供給と原油安の解消が進まないことに対して強い危機感があるということだろう。減産の負担を受け入れなければならないほどに、原油安は容認できない状況になっている訳だ。

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◆今回の合意が原油価格に与える影響は?

問題はこうしたOPECの「減産」合意が原油価格に与える影響であるが、ポジティブであることは間違いない。実際に、同日のNYNEX原油先物相場は1バレル当たりで前日比2.38ドル高の47.05ドルと急伸している。OPECの政策調整に対する期待感がこのまま維持されれば、50ドル台を回復する程度のエネルギーはあるだろう。

しかし、今回の合意が本格的な原油高を促すのかは強い疑問がある。各国の産油量をどのような水準に設定するのかは今後の議論に委ねることになっており、総論には賛成でも自国の減産という各論には抵抗を見せる産油国も少なくない。また、仮に11月OPEC総会で正式に合意が行われても、その合意が順守されるのかにも強い不透明感がある。特に、イランやイラクは市場シェアの拡大を強く志向して積極的な投資を行っている最中であり、ここで突然に増産凍結の決断を下せるのかは強い疑問がある。

リビアやナイジェリアに関しても、地政学的要因から大規模な減産・出荷減を強いられている状況にあり、この二カ国の産油量が正常化すると、今回合意された産油水準を達成するハードルは一気に高まることになる。

また、そもそも今回の「減産」合意が原油需給に大きなインパクトを与えるのかも疑問視している。日量3,250万~3,300万バレルの産油水準は、8月を基準にしても24万~74万バレルの減産に留まる。OPECとしては、「減産」のメッセージを強く打ち出すために幅を持たせた産油水準を提示したのだろうが、裏返せば殆ど減産が行われない可能性も十分にある。

OPECの推計では、今年10~12月期にOPECに求められている産油量は日量3,225万バレルに過ぎず、来年1~3月期には3,130万バレルまで更に落ち込む見通しになっている。こうした中、合意下限の3,250万バレルまで産油量を抑制しても、目先の原油価格を大きく刺激する効果は想定しづらい。

OPECが原油需給・価格に改めて責任を持つことを検討し始めたことは極めて大きな変化だが、原油需給の視点では本格的な原油高が支持されるのは早くても来年下期になる見通しである。