ゴールドマンの金価格値下がり予想が的中なら、円安・株高回帰へ

(写真:アフロ)

米金融大手ゴールドマン・サックス・グループは5月10日、金価格見通しの水準を引き上げる一方で、価格トレンドについては弱気(=値下がり予想)と、強気派と弱気派の双方が不満を抱くような、評価が難しい修正を行ってきた。

金価格見通しについては、足元の1オンス=1,270ドル水準に対して、3か月1,200ドル、6か月1,180ドル、12か月1,150ドルと、従来の3か月1,100ドル、6か月1,050ドル、12か月1,000ドルからそれぞれ100~150ドルの上方修正を行っている。一方で、価格トレンドは従来通りに下向きでみていることが確認されており、金価格の値下がり予想に対して現実の金価格が年初から強含みに推移していることを受けて、対応(相場判断)を苦慮していることが窺える状況になっている。

ゴールドマン・サックスの金価格値下がり予想の根拠は単純であり、良好な米実体経済環境を背景に米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げサイクルは維持され、米金利上昇・ドル高環境においてドル建て金価格は値下がりするとなっている。今回も、こうした基本的な論理構成に変化はみられない。ただ、従来は12か月で100ベーシスポイント(1.00%)の利上げが想定されていたのに対して、現在は50ベーシスポイントの利上げしか想定できなくなっていることが、価格予想を引き上げる一方で、弱気トレンドを想定するという強弱が交錯した奇妙な対応になっている模様だ。

同社は、6日に発表された4月米雇用統計で雇用者数の伸びが過去7か月で最低だったにもかかわらず、その後のドル相場が上昇をみせたことで、ドルが底を打った可能性を指摘している。今後2年間で15%のドル高を想定していることを明らかにしている。この想定通りであれば、単純に考えて今後2年のドル建て金価格は15%(約190ドル)の値下がりが正当化されることにある。これは、ドル高(円安)を通じて円高にも終止符が打たれることも意味し、同社の予想通りであれば円安時代への回帰が実現することになる。

既に投機筋の金買い・ドル売りが膨張していることもあり、更に金相場上昇・ドル相場下落が進む余地の小ささも指摘されている。また、年初にみられたようなリスクオフ環境への回帰については懐疑的な見方が示されており、良好な実体経済、リスクオンの投資環境、金相場下落・ドル相場上昇を基本シナリオとして想定していることが再確認できる。

ゴールドマン・サックスがこのような予測を発表しているとなれば、当然にその見通しに沿った相場展開に期待する向きも多いだろう。従来といっても昨年までであれば、同社のこうした価格予想だけで、金相場が下落し、ドル相場が上昇することも珍しくなかった。それくらいに、同社の価格分析に対しては信頼が厚かった。しかし実際には、同社の金売り・ドル買い推奨は今年に入ってから損失拡大で撤回されてきており、ゴールドマンさえも予想できなかった程に米実体経済回復の足取りは依然として不安定であり、FRBも利上げスキームの消化に慎重姿勢を崩していないという訳だ。

裏返せば、安全通貨・ドルの代替通貨である金価格がゴールドマンの予想通りに値下がりするような相場環境が実現するのであれば、その時はドル高(円安)圧力によって年初からの急激な円高局面に終止符が打たれる可能性が高い。そして、金価格がなお強含みの展開が続いていることは、ゴールドマンの予想しているドル相場高・金相場安は未だ実現せず、円高時代にも終止符が打たれていないことを意味していると言えよう。

円高局面に本当に終止符が打たれたか否かを判断する指標として、金価格の値下がりが実現しているか否かにも注目したい。金価格の値下がりと円安が同時進行する局面を迎えることができれば、それはゴールドマンの繰り返し失敗してきた相場シナリオが実現に向かっていることを意味し、円安・株高トレンド再開の可能性が高まることになりそうだ。