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NY原油16日:米国内在庫増加、輸出解禁の動きで軟化

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油1月限 前日比1.83ドル安

始値 36.79ドル

高値 37.35ドル

安値 35.29ドル

終値 35.52ドル

米原油在庫の増加、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明の発表を前に買い玉整理の動きが一段と強まり、反落した。米国で原油輸出解禁の動きがみられたことも、ネガティブ。

アジア・欧州タイムは37ドル水準で揉み合う展開になったが、ニューヨークタイム入り後は一気に36ドル台も割り込む急落地合になっている。ただ、改めて35ドルの節目割れを打診するまでの勢いはみられず、その後は35ドル台後半で下げ一服となっている。

米エネルギー情報局(EIA)発表の原油在庫(12月4日時点)は、前週比+350万バレルの4億8,590万バレルとなった。製油所向け原油需要が着実な回復を見せるも、在庫は予想外の積み増しになっている。前年同期の3億8,080万バレルを1億バレル以上も上回る中、在庫のタイト感が強まるような状況にはない。

一方、米議会では与野党が原油輸出解禁で合意したことが明らかにされている。米国内で在庫余剰感が強まる中、1975年から続けられてきた禁輸措置を解除し、国内在庫の削減と同時にシェールオイルの生産増を促すことになる。これまでは米国の原油輸入量削減という形でシェールオイルは原油価格にダメージを与え続けてきたが、今後はより積極的な下押し圧力になる可能性がある。特にWTI原油に対して割高な油種に対しては下向きの水準調整が行われ易くなる。実際の輸出解禁にはなお幾つかのハードルが残されているが、2016年の原油相場の反発リスクを限定する動きとして、今後の展開に注意が必要。

OPECサイドから原油安是正に向けた取組などは確認できず、原油安に政策的な対応を望めない以上、更に原油安を進めて協調減産を促すか、高コストのタイトオイルに減産を迫ることが要求される。国際原油需給の緩和見通しを修正するのが困難な状況が続く中、原油相場はなお下値不安の大きい相場展開が続き易い。シェールオイルの減産傾向にもブレーキが掛かっており、更に生産調整を促すプレッシャーが要求されている。足元では35ドルの節目割れを達成したこと、季節要因から在庫積み増し傾向にブレーキが掛かり始めていることなどが下値をサポートしているが、自立反発的な動きに留まろう。ドル安圧力も一服しており、なお下値不安の大きい相場環境を想定しておきたい。

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(注)在庫についての記載がおかしかったため、訂正します。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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