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NY原油12日:米原油在庫増加を嫌気し、続落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油12月限 前日比1.18ドル安

始値 43.05ドル

高値 43.33ドル

安値 41.63ドル

終値 41.75ドル

米国内需給の緩和状態が再確認されたことが嫌気され、続落した。

アジアタイムは43ドル台前半での展開になるも、欧米タイム入りしてから戻り売り圧力が強まり、一気に41ドル台まで値位置を切り下げている。8月27日以来の安値を更新している。米エネルギー情報局(EIA)が米国内原油在庫が7週連続で増加したと報告したことが嫌気されている。米製油所稼働率の上昇傾向は続いているが、季節トレンドの転換を先取りして安値是正を進めるような動きはみられず、改めて下値を切り下げている。

EIA発表の原油在庫(11月6日時点)は、前週比+422.4万バレルの4億8,703.4万バレルとなった。マーケットでは、製油所稼働率の上昇で在庫積み増しペースの大幅な鈍化を想定していた向きが多かったが、実際には強力な在庫積み増し圧力が報告されていることが嫌気されている。米製油所稼働率は前週比+0.8%の89.5%となっており、製油所向け原油需要環境が着実に改善していることは間違いない。米国内産油量も抑制されており、季節要因からは少なくとも米国内需給緩和圧力は後退に向かう可能性が高い。ただ実際の原油在庫がなお増加トレンドを維持する中、需要期入りの動きを先取りするような動きは鈍く、本日は素直に原油在庫の増加に反応して売られている。

今後は季節要因から一定の安値是正の動きも想定されるが、在庫の絶対水準が前年同期を1億バレル前後上回った過剰状態を維持している以上、反発力は限定されることになる。寒波などの支援があれば50ドル台を回復する程度のエネルギーは十分にあると考えているが、季節トレンドを反映した一時的な戻り圧力に留まる可能性が高い。エルニーニョで暖冬を予想する向きも多く、季節要因で買われるような場面は売り場になる可能性が高い。

一方、本日は石油輸出国機構(OPEC)の11月月報も発表されている。今回は2016年のOPEC非加盟国の産油量が2007年以来で初めて前年比マイナスになるとの意図押しが示されているが、マーケットの反応は限定的。日量-13万バレルは国際エネルギー機関(IEA)の見通しなどと比較すると特にネガティブではなく、相場を押し上げる効果は見られなかった。逆に、先進国の原油在庫が10年ぶりの高水準に達し、供給が需要を上回った状態が維持されているとの見方が、原油相場の上値を圧迫している。OPECは冬のエネルギー需要拡大が過剰供給を和らげる可能性も指摘しているが、この辺の指摘も特に材料視されなかった。

足元ではなお過剰供給状態が維持されていることが、原油相場の上値を強力に圧迫している。13日にはIEA月報の発表も控えており、ここで改めて需給緩和の長期化見通しが示されると、一気に40ドル割れを打診する可能性もある。本日は為替がドル安方向に振れたが、ドルの水準が切り上がる中、商品市況全体に下押し圧力が強まり易いことにも注意が必要。目先の反発シナリオは季節要因に伴う需給引き締め圧力だが、なお製油所稼働率の上昇傾向に対する反応が鈍いことを考慮すると、実際の在庫減少が確認できるまでは、やや下値不安の大きい相場展開になる。実際に在庫の取り崩しが開始されれば一定の反発力が見られる見通しだが、35~60ドルという比較的大きめのレンジ内での上下動に留まろう。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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