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NY金10日:ドル高再開も、下げ過ぎ感で小幅続伸

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比0.40ドル高

始値 1,090.80ドル

高値 1,094.80ドル

安値 1,084.00ドル

終値 1,088.50ドル

為替はドル高方向に振れたが、急ピッチな下げ相場の進展で押し目買いやショートカバー(買い戻し)が膨らみ、小幅続伸している。

アジア・欧州タイムは安値是正の動きが強く、総じて1,092~1,094ドルのレンジでの取引になった。ニューヨークタイム入り後はドル高再開を手掛かりに戻り売り圧力が強まり、11月6日安値1,084.50ドルも下抜いた。ただ、そこから更に年初来安値1,072.30ドルを試すような動きはみられず、引けにかけては押し目買いと戻りが交錯する不安定な値動きになっている。

11月6日に発表された10月米雇用統計が極めて良好な内容になったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利上げ着手に対する期待感は著しく高まっている。ただ、その結果として既に12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ着手はほぼマーケットに織り込んだ状況になっているため、一段と金相場を大きく売り込むような動きまではみられなかった。本日はボストン連銀のローゼングレン総裁が、12月の利上げが適切になり、更にドル高が緩やかなペースでの引き締めの可能性を高めると発言しているが、マーケットの反応は限定された。

FF金利先物市場では既に年内利上げ着手を67.8%の確率まで織り込んでおり、年内利上げ観測のみで大きく売り込むことには無理が生じ始めている。今後は追加利上げのペースにマーケットの関心がシフトしていく可能性が高く、来年に段階的な利上げ局面に突入できることを確信できるような良好な経済統計の蓄積が要求されている。

その意味では、9月卸売在庫が前月の+0.3%に続いて+0.5%と拡大していることは、売り上げ拡大に対応して企業の生産活動が活発化していることを示唆しており、金相場にネガティブ材料と言える。ただ、9月中旬からの金相場の下げ幅は100ドル近くに達していることもあり、やや日柄・値柄調整のニーズが意識された状況と考えている。引き続き金相場を積極的に買い進むような必要性はみられず、金上場投資信託(ETF)市場からの資金流出傾向も維持されている。このため、ドル高・米金利上昇と連動した金相場の下落傾向は維持される可能性が高いと考えているが、ここからの下落ペースは緩やかなものに留まろう。まずは1,100ドル水準を抵抗線として認識し、改めて年初来安値更新を打診できるのかが試される。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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