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NY原油21日:米原油在庫増加、OPEC協議不調で、反落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油12月限 前日比1.09ドル安

始値 45.88ドル

高値 46.08ドル

安値 44.86ドル

終値 45.20ドル

米原油在庫の急増、石油輸出国機構(OPEC)の技術会合で何ら進展が見られなかったことが嫌気され、反落した。

アジアタイムは46ドル水準で揉み合う展開になったが、欧州タイム入り後は断続的に下値を切り下げる展開となり、一時45ドルの節目も割り込んだ。為替がドル高方向にふれたことに加えて、OPEC技術会合で価格押し上げ議論が進展しなかったこと、米原油在庫の急増が、断続的に投機売りを呼び込んでいる。45ドル割れ後は下げ一服となったが、その後も安値是正の動きは限定された。

米エネルギー情報局(EIA)発表の原油在庫は前週比+803万バレルの4億7,659万バレルとなった。製油所がメンテナンスシーズンで稼動を落す中、主に需要サイドの要因から在庫積み増しが促されている。シェールオイルの生産量は抑制されているが、10月入りしてから減産圧力が鈍化する中、需要減退圧力を相殺するには至っていない。これで米原油在庫の増加は4週連続のことであり、前年同期の3億7,770万バレルを1億バレル近くも上回った状態が維持されている。季節要因に沿った動きだが、これはシェールオイルの減産で仮に在庫積み増し圧力が鈍化しても、なお過剰在庫が市場に残されることを意味する。少なくとも原油相場の反発力は限定されるとの見方が、改めて原油相場を下押ししている。

一方、OPEC技術会合については、ロシアエネルギー省から減産や目標価格レンジの設定については協議されなかったことが明らかにされている。今回の会合については、ベネズエラが主張する目標価格レンジが協議されると事前にOPEC筋からの情報が流されていたが、今会合では具体的な協議を行うことができなかった模様。ベネズエラは12月のOPEC定例総会に先立つ11月にOPEC加盟国と非加盟国の首脳で協議を行うことを要請しているが、他産油国の反応は鈍い。

財政難に陥ったベネズエラが積極的に原油価格コントロールの国際協調を訴えているが、OPEC内でさえも十分な意思統一ができない状況にあることが再確認できる。いずれにしても産油量や価格コントロールの合意はできないとみられていたが、協議さえ行えなかったのは意外感があり、産油国の政策対応で原油価格が反発するリスクが急速に後退していることが、原油相場に対する売り安心感を促している。

引き続き過剰供給懸念が強く、特に米原油在庫の増加傾向にブレーキが掛かるまでは、原油相場の下振れリスクは大きいと見ている。再び40ドル台割れを打診する流れは維持されよう。為替もドル高傾向に回帰しつつあり、米雇用統計後の過剰流動性期待を織り込む動きにも一服感が浮上している。年間安値を更新する可能性も残されている。ただ、現行価格では一定の生産調整圧力が確認される中、40ドル割れからの深追いは避けるべきだろう。瞬間的には大きく下押しされる可能性も残されているが、これ以上の安値は持続可能性が乏しい。35~60ドル水準をコアとした安値ボックスを想定しており、突っ込んだ局面では逆に買い拾っても問題はない。短期スパンで戻り売り対応を継続し、突っ込んだ局面で押し目買い優勢の地合に転換する見通し。

マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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