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NY金20日:ドル安で反発、米住宅指標は良好だったが

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比4.70ドル高

始値 1,170.60ドル

高値 1,181.40ドル

安値 1,167.20ドル

終値 1,177.50ドル

為替がドル安方向に振れたことが好感され、反発した。

アジアタイムは1,170ドル水準で上値の重い展開になったが、欧州タイム入りと前後して為替がドル安方向に振れる中、買い優勢の展開になった。ニューヨークタイム入り後はドルが下げ幅を削ったことが金相場も上げ一服になったが、大きく値崩れを起こすには至らなかった。

本日はドルが軟化しているが、何かドルサイドに大きなネガティブ材料が浮上した訳ではない。寧ろ、9月住宅着工件数が前月比+6.5%の121万戸に達して、過去8年で2番目の高水準を記録するなど、ポジティブ材料の方が目立つ状況にあった。ただ、欧州中央銀行(ECB)が与信状況の改善を報告し、それに伴いECBの追加緩和リスクが後退しているとの見方が、ユーロ高(ドル安)を促し、ドル建て金相場を押し上げた。

もっとも、こうしたユーロ高・ドル安の動きは持続性のあるものではなく、引き続き米金融政策環境が金価格の戻り余地を決定付ける地合が続く見通し。10月27~28日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を控える中、ブラックアウト期間入りで当局者の景気や金融政策に関する発言は途絶えることになる。本日はイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)が講演を行っているが、金融政策環境などについては一切の言及を行っていない。このため、経済指標から利上げまでの距離感を探る展開が続くことになる。

急激なドルの反落傾向に歯止めが掛かり始める中、良好な経済統計の発表が続けばドル高再開からのドル建て金相場軟化のフローも想定できる。トレンドとしては、あくまでも利上げ着手サイクル直前の混乱状況に過ぎず、金価格は一時的な戻り局面との評価で十分である。ただ、金上場投資信託(ETF)の残高がなお増加傾向にあることを考慮すると、ダウントレンド再開には利上げ着手に向けてより高いレベルの警戒感が要求されているとみた方が良さそうだ。徐々に下げ再開の兆候は増えているが、決め手を欠いている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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