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NY原油10日:反発、米産油環境に対する警戒感が強まる

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油10月限 前日比1.77ドル高

始値 44.16ドル

高値 46.04ドル

安値 43.36ドル

終値 45.92ドル

米クッシング在庫の減少、米国内産油量の落ち込みを手掛かりに、期近主導で急反発した。

前日は米エネルギー情報局(EIA)が2015年の米産油量見通しを前月の日量936万バレルから922万バレルまで引き下げたが、直近の週の米産油量が前週の932.5万バレルから926.0万バレルまで減少したことが、改めて米国内産油環境に対する警戒感を高めている。このタイミングでクッシング地区の原油在庫が前週比-89.7万バレルと落ち込んだこともポジティブであり、本日は期近限月を中心に安値是正の動きが強くなった。米国株高やドル安もポジティブになり、終日安値是正の動きが優勢になっている。

米産油量データをみると、現時点では40ドル水準に採算ラインが設定されているシェールオイル開発業者が多いことが窺える。その意味では、価格低下を受けての需給リバランスが開始される価格水準に到達していると言える。ただ、これが過剰供給体制を是正するのに十分な動きかは慎重な判断が求められ、なお原油相場の底打ちシナリオが実現するのかは疑問視している。

石油輸出国機構(OPEC)とシェールオイルがどこまでの原油安に耐えられるのか我慢比べが展開される中、シェールオイル生産に鈍化兆候が見られることは間違いなくポジティブ。今年3~4月にかけては米産油量の伸び悩みが原油安是正の原動力の一つとなった経験もあるだけに、8月との比較では反発リスクは高くなっている。

ただ、価格が上昇すればシェールオイル生産は回復する可能性が高い以上、少なくとも原油相場の反発余地は限定されよう。短期スパンでは株価次第の不安定な相場展開になり易いが、需給面からの支援がみられない状況に変化は生じていない。なお、株価が主導権を握った相場展開になっているが、需給リバランスの必要性がこれによって薄れた訳ではなく、今後は株価動向のインパクトが限定される動きと連動して、徐々に戻り売り優勢の地合に回帰する可能性が高いとみている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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