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イエレン証言を受けて、金価格は5年5ヶ月ぶりの安値更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

国内外で金価格が急落している。国際指標となるCOMEX金先物相場の場合だと、今年4~6月にかけては総じて1オンス=1,200ドルの節目水準で取引されていたが、7月20日の取引では一時1,080.00ドルまで値下がりし、2010年2月以来となる5年5ヶ月ぶりの安値を更新している。背景にあるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が約10年ぶりの利上げに踏み切る時期が近いと見られることだ。

サブプライム・ローン問題やリーマン・ショックを受けて株式・債券・通貨といったペーパー資産に対する信認が極度に低下した11年9月には、金価格は過去最高値となる1,923.70ドルまで値上がりしていた。しかし、その後は米経済環境・金融市場の安定化、更には米金融政策の正常化プロセスに対する警戒感が、11~12年までみられた「ドル→金」の資金フローを、「金→ドル」に180度転換させた状態になっている。

特に、FRBが2014年10月で量的緩和政策による新規資産購入の終了を決定し、ドル紙幣の増刷政策にブレーキが掛かったインパクトは大きかった。量的緩和の終了後には当然に利上げ(=ゼロ金利政策の解除)が控えている訳であり、いよいよFRBが世界の主要先進国の先陣を切って経済危機後の初回利上げに踏み切ると見られることが、特に13年以降の金価格に対して強力な逆風になっている。

FRBが利上げに着手することは、ドルを保有することで金利というインカム・ゲインが発生することを意味し、保有しているだけでは何も収益を生むことのない金を保有する実質的なコストの増大を促すことになる。このコストを相殺するには、ドルに付与される金利上昇分を上回る金価格の上昇が必要になるが、それが難しいと判断されるのであれば金よりもドル保有が選好されることになる。

FRBの利上げ着手という流れそのものは規定路線に沿った動きだが、先週7月15~16日にイエレンFRB議長が議会証言において、年内の利上げ着手見通し、更には利上げ着手を先送りし続けるリスクに言及したことで、いよいよ利上げイベントの現実味が増している。イエレンFRB議長は具体的な利上げスケジュールについては曖昧な発言を繰り返しているが、早ければ9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが着手される可能性もある。その後の利上げペースは緩やかなものになることが想定されているが、ここにきての金相場急落は、マーケットがFRBの利上げ着手は確実と評価し始め、ドルに対する信認回復の流れが更に加速する流れを想定していることを示唆している。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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