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NY原油26日:イエメン情勢悪化で大幅続伸、2/17以来の高値更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油5月限 前日比2.22ドル高

始値 49.02ドル

高値 52.48ドル

安値 48.73ドル

終値 51.43ドル

シリア情勢の緊迫化を受けて、原油相場は大幅続伸となった。2月17日以来の高値を更新している。

アジアタイムにサウジアラビアがイエメンに対する軍事介入を発表したことを受けて、一気に上値追いの展開になっている。イスラム系シーア派武装勢力の勢力拡大を受けて、スンニ派系の湾岸諸国が暫定政権の支援に動き出したことで、中東情勢が一気に緊迫化している。イエメンそのものは産油国として必ずしも重要ではないが、これによってサウジアラビアとイランとの対立などが激化すると、石油供給に対する懸念が高まるのは必至の状況にある。

最近は、地政学的リスクのみで原油相場が急伸することはなくなっていた。ISILの動向も、余り話題にならなくなっている。しかし、サウジの軍事介入に反発しているイランの出方によっては、中東地区からの原油供給が一気に止まるリスクもあるだけに、原油相場はリスクプレミアムも加算を促されている。ホルムズ海峡封鎖といった動きに発展すると、ここから20ドル、30ドルと上昇するリスクも存在する。現実の原油供給トラブルではなく地政学的「リスク」のレベルに留まるのであれば、このまま一方的に急伸するような事態にはならないと考えている。足元の原油需給がだぶついた状況にも変化は見られない。

ただ、この問題は最悪の事態になった場合のインパクトが余りに大きいだけに、イエメン情勢の流動化に一定の歯止めが掛かるまでは、原油相場も不安定な地合を強いられることになる。既に十分なリスクプレミアムを織り込んだと評価しているが、イエメン情勢の行方がより詳細に見通せる状況になるまでは、瞬間的な上昇リスクが残されることになる。ドル反発傾向にブレーキが掛かるなど、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の反発を支えてきたエネルギーは解消に向かっている。あとは、イエメン情勢という突発的な支援材料がなくなれば、上値の重さが再確認されよう。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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