バーナンキ発言で、金価格は1ヶ月ぶりの安値更新

6月18~19日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)を受けて、ドル建て金価格は約1ヶ月ぶりの安値を更新している。

5月下旬から6月上旬にかけては日経平均株価の乱高下に象徴される株高トレンドの修正を受けて、「安全資産」としての金価格は1オンス=1,400ドル水準での取引になっていた。しかし、FOMC後は1,350ドルの節目を下抜き、再び年初来安値1,321.50ドル(4月16日)割れが現実的なターゲットに入り始めている。

日本では、日本銀行のマネタリーベース(日銀の供給する通貨)を2014年までに2倍に拡大するいわゆる「アベノミクス」が開始されたばかりであるが、その先行モデルとなる米国では早くも08年のリーマン・ショック後に展開されてきた異例な金融緩和策が「出口」を検討する時期を迎えている。

今年は年初の段階から、米連邦準備制度理事会(FRB)が現在展開している毎月850億ドル(約8兆2,000億円)の資産購入(=QE3)が縮小されるとの見方が、金相場の上値を圧迫してきた。ドル紙幣の増刷政策がピークを過ぎるのであれば、国際基軸通貨としてのドルに対する信認が毀損されるステージは終わりを迎えることになり、究極の「安全通貨」である金を保有する必要性が低下するためだ。

今回のFOMCは、こうした「ドルに対する信認回復」と「金に対する逃避需要の必要性後退」の流れを決定付ける内容と評価されている。

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■年後半にQE3縮小、来年半ばにはQE3停止

FOMC声明文であるが、ここでは「適切な政策緩和を維持するため、委員会には資産購入ペースを加速あるいは減速させる用意がある」と、前回につづいてQE3における資産購入の拡大と縮小という二つのカードを提示する方針を維持している。その意味では、声明文レベルで今後の金融政策についての言質をマーケットに与えて、政策判断の幅を狭めることは行われなかったと言える。

しかし、この声明文発表後に行われたバーナンキFRB議長の記者会見では、「現在の所、年内に購入ペースを緩めるのが適切だと委員会は見込んでいる」と発言し、事実上はQE3の縮小時期が今年後半であることを予告した形になっている。

これは、あくまでも現在の景気(特に雇用)見通しが維持されることを前提にしたものになるが、それに続いて「来年半ば頃に購入を停止する」と更に踏み込んだ発言を行ったことで、マーケットはバーナンキ議長のQE3縮小に向けての動きは本気だと、警戒感を強めている。

5月の議会証言でもQE3「縮小」の条件については発言していたが、その時期を絞るのみならず、QE「停止」にまで踏み込んだのは、明らかなサプライズである。これは、議長が今後の景気回復に強い自信を示していることを意味し、米金利上昇・ドル高・金価格下落という教科書的な反応が確認されている。この流れそのものは何ら意外感のあるものではなかったが、「まさかQE3終了時期にまで言及するとは・・・」というのが正直な印象である。

バーナンキ議長の発言内容を100%信頼するとしても、まだQE3に基づく資産購入が完全に停止するのは1年先であり、ドルの通貨価値を毀損する動きが止まる訳ではない。その意味では金価格の急落は先走りし過ぎとの印象も否めないが、将来の流れが決まっているのであればそれを前倒しで織り込むのがマーケットである。

投機マネーが再び金相場を本格物色する必要性が低下する中、現物需給や生産コストといった投資需要とは別の論理から、金価格の下落傾向に歯止めを掛けることができるのかが改めて問われるステージになる。問題は、4月に1,350~1,450ドル水準で活発に買い付けを行った現物筋が、もはや1,300ドル台中盤でも物色妙味を見せていないことである。消費者の「安値慣れ」が現物需給の均衡ラインを引き下げている。