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初優勝をかけトップ棋士4人が激突――第15回朝日杯将棋オープン戦準決勝、決勝展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
名人経験者の佐藤天彦九段(左)ら準決勝進出者は強豪ぞろいだ(筆者撮影)

 第15回朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)は2月23日東京都千代田区「朝日ホール」で準決勝と決勝が行われる。ベスト4に勝ち進んでいるのは永瀬拓矢王座(29)、佐藤天彦九段(34)、菅井竜也八段(29)、稲葉陽八段(33)。

 4人とも実績十分の強豪だが本棋戦での優勝はなく、誰が勝っても初優勝となる。

 データを基に優勝の行方を予想してみた。

佐藤九段と永瀬王座がやや有利か

 準決勝の対戦カードは永瀬王座-稲葉八段戦、佐藤九段-菅井八段戦。それぞれの対戦成績と最近10局の勝敗(未放映のテレビ対局を除く)は以下のとおり。

<永瀬王座の対戦成績と最近10局>

対佐藤九段 4勝5敗

対菅井八段 7勝2敗

対稲葉八段 7勝0敗

最近10局 6勝4敗

<佐藤九段の対戦成績と最近10局>

対永瀬王座 5勝4敗

対菅井八段 6勝3敗

対稲葉八段 9勝6敗

最近10局 8勝2敗

<菅井八段の対戦成績と最近10局>

対永瀬王座 2勝7敗

対佐藤九段 3勝6敗

対稲葉八段 7勝4敗

最近10局 4勝6敗

<稲葉八段の対戦成績と最近10局>

対永瀬王座 0勝7敗

対佐藤九段 6勝9敗

対菅井八段 4勝7敗

最近10局 8勝2敗

 データからは、対戦相手全員に勝ち越している佐藤九段が直近も8勝2敗(6連勝中)と好調で有利に思えるが、二番手の永瀬王座も本棋戦準々決勝で藤井聡太竜王に勝つなど力のあるところを見せており差はわずかである。

 調子の面では稲葉八段も8勝2敗(6連勝中)と好調。ただし準決勝の相手永瀬王座に0勝7敗と苦手にしているのがマイナス材料だ。

 菅井八段は直近4勝6敗と負け越しており、他の3人のデータと比べるとやや苦しいか。

 総合すると優勝争いは佐藤九段が本命で対抗は永瀬王座と見る。

振り飛車の登場はほぼ確実

 今回のベスト4進出者の中で生粋の振り飛車党は菅井八段だけだが、永瀬王座や佐藤九段もまれに変化球として振り飛車を用いることがある。

 ただし朝日杯は持ち時間が40分と短く、通常は得意戦法を用いる可能性が高いだろう。

 永瀬王座-稲葉八段戦は両者がこのところ多用している相掛かりに進みそうだ。

 佐藤九段-菅井八段戦は菅井八段先手ならゴキゲン中飛車が大本命。後手なら角交換振り飛車か三間飛車、いずれにしても居飛車対振り飛車の対抗形になると思われる。

 実力、実績十分の4人の争いだけに熱戦が期待される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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