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世代交代が進んだ2019年将棋界を振り返る――豊島将之竜王・名人、渡辺明三冠、永瀬拓矢二冠が誕生

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
2019年棋界は豊島将之竜王・名人を軸に動いた(筆者撮影)

 2019年の将棋界は勢力図が大きく変わった1年だった。

 2018年夏には8人が8つのタイトルを分け合う群雄割拠の戦国時代だったが、棋界制覇をうかがう20代、30代の実力者にタイトルが集まる傾向が表れた。

羽生善治九段がタイトル戦番勝負から消える

 世代交代が進んだこの1年、昭和生まれの筆者にとって一番印象に残っているのは、永世七冠資格を保持しタイトル獲得通算99期の大記録を持つ羽生善治九段(49)が一度もタイトル戦に登場しなかったことだ。昨年は名人戦、棋聖戦、竜王戦で番勝負を戦い棋界の頂点を争っていただけに、一つの時代が終わったと見てもいいだろう。

豊島将之竜王・名人が現時点での覇者

 5月には平成生まれの豊島将之名人(29)が誕生し三冠になった。そのまま「豊島時代」確立に向け順調に歩みを進めると思われたがそうはならず、夏から秋にかけて棋聖、王位と立て続けに失冠した。

 王位戦七番勝負ではタイトル戦7度目の挑戦で史上最年長初タイトル獲得記録を更新した木村一基王位(46)が快挙を達成した。木村王位の頑張りは中高年ファンを勇気づけるものだった。

 「負けない将棋」をモットーとする永瀬拓矢二冠(27)の台頭も目を引いた。春に叡王、秋に王座と立て続けにタイトルを奪取し、天下取りに向け歩みを進めた。

 12月には豊島名人が竜王を奪取し史上4人目の「竜王・名人」の座に就いた。ビッグタイトル二冠は現時点の覇者といってもいいだろう。

2020年の棋界も波乱含み

 豊島竜王・名人を追う棋士の筆頭は現在棋王、王将、棋聖を保持しA級順位戦でもただ一人負けなしの6連勝で独走する渡辺明三冠(35)だろう。2人の覇権争いが来年も見られることは間違いない。

 そこに朝日杯連覇を達成した藤井聡太七段(17)やプロデビューから1年あまりで棋王戦挑戦者になった本田奎五段(22)ら若手が割って入る可能性は高い。

 最近の若手はAI(人工知能)を武器に驚異的な速さで棋力アップしているのが特徴で、豊島竜王・名人を筆頭に藤井七段、本田五段らがAIでの研究を主としていることは有名だ。

 2019年のタイトル戦は棋王戦以外すべて挑戦者が奪取しており、この流れが続くようだと2年連続で勢力図が激変する可能性もあって興味は尽きない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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