上野愛咲美女流棋聖、偉業達成にあと1勝――第28期竜星戦決勝は9月23日対局

361路の盤上の戦いに男女のハンディはない(写真:アフロ)

 囲碁のテレビ棋戦、第28期竜星戦(囲碁・将棋チャンネル主催)で上野愛咲美女流棋聖(17)が男性トップ棋士を次々と破って決勝に進出している。

 決勝トーナメント1回戦で高尾紳路九段(42)、準々決勝は村川大介十段(28)、準決勝は許家元八段(21)と相手はビッグタイトル経験者ばかり。9月23日に行われる決勝の相手は公式戦優勝5回、七大タイトル挑戦5回の実績を持つ一力遼竜星(22)。

 全棋士参加棋戦で女流棋士がここまで勝ち進んだのは史上初の快挙だ。

平安時代から囲碁の強い女性は存在した

 日本に囲碁が伝わったのは奈良時代以前と考えられており、宮中の女性にも広まった。平安時代の文学作品「源氏物語」や「枕草子」には女性が碁を打つ場面がしばしば登場し、使われている囲碁用語が高度なことから作者の紫式部や清少納言は有段の腕前ではないかと推測される。

 武士の台頭した鎌倉時代以降、碁は男性中心に楽しまれていたようだが江戸時代に入ると再び女性の名手が表舞台に登場する。囲碁家元である林家分家の養女・林佐野(1825~1901年)は16歳で初段を認められ、のちに四段まで進んだ。

 林は明治維新にともない家元制が崩壊したあとの囲碁界の立て直しに尽力、女流囲碁の伝統を復活させただけでなく囲碁結社・方円社の創立にも関わった。林の養女・林文子(1875~1950年)も棋士として活躍、結婚して喜多姓となり六段にまで上った(1973年名誉八段追贈)。

 喜多は伊藤博文、犬養毅、頭山満ら政財界の後援者が多く、大正期にいくつかの団体に分かれていた囲碁組織をまとめ日本棋院の設立に大きな役割を果たした。さらに伊藤友恵七段、杉内寿子八段ら多くの女流棋士を育て現在の棋界繁栄の基礎を築いた。喜多は女性として初めて囲碁殿堂入りを果たしている。

「頭脳スポーツ」に男女差はほぼない

 囲碁界では女流トップが男性強豪を破ることは珍しいことではない。中国出身のゼイ・ノイ九段は2000年韓国の国手戦で並み居るトップ棋士を退け挑戦しタイトルを獲得している。

 チェスでも女性の世界トップランカーは存在する。ハンガリーのGM(グランドマスター)ユディット・ポルガーは世界ランキング最高8位(2004~2005年)まで上ったことがあり、ガルリ・カスパロフ(1985~2000年世界チャンピオン)をはじめ、ほぼすべてのトップ10プレイヤー(ポルガー以外はすべて男性)に勝利している。

 こうした事例から骨格、筋力などの基礎体力を除けば「頭脳スポーツ」で男女差はほぼないといってもいいだろう。

 上野女流棋聖の碁はおっとりした性格と対照的に「ハンマーを振り回すような豪快な攻め」が棋士の間でも評判になっている。竜星戦決勝でも持ち味を存分に発揮し、好局を期待したい。