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激動の将棋界、2018年を振り返る――女流棋士とアマも活躍

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
里見香奈女流四冠(左)は藤井聡太七段とも対局した(筆者撮影)

 2018年の将棋界は激動の一年だった。なんといっても一番の出来事は12月末に竜王戦七番勝負がフルセットで決着し、広瀬章人新竜王(31)が誕生、羽生善治九段(48)が27年ぶりに無冠となったことだろう。

来年初夏に三冠達成の可能性

 夏には8つのタイトルを8人の棋士で分け合う状況だったが、秋に豊島将之二冠(28)が誕生したことで、今後何人かの棋士にタイトルが集まる流れに向かっている。

 具体的に示すと豊島二冠(王位・棋聖)は佐藤天彦名人(30)への挑戦権を争うA級順位戦で6勝0敗と単独首位、来年初夏には三冠の可能性がある。

 年明けから始まる棋王戦の挑戦者になった広瀬竜王もA級順位戦で5勝1敗と羽生九段と同星で豊島二冠を追っており、同じく三冠の道が開けている。

 渡辺明棋王(34)も王将戦の挑戦者になっているので1年数カ月ぶりの複数冠(2017年12月初めは竜王・棋王)の可能性十分だ。

女流棋士とアマが公式戦で躍進

 頂上争い以外では女流棋士やアマチュアの公式戦活躍が目覚ましかった。

 女流タイトルホルダーの里見香奈女流四冠(26)と渡部愛女流王位(25)は男性も出場するプロ公式戦で2018年度は里見女流四冠が7勝8敗、渡辺女流王位が4勝4敗と対等に渡り合っている。

 アマチュア選手もテレビ棋戦の銀河戦で強豪相手に連勝を続ける選手が複数いる。

 折田翔吾アマは神崎健二八段、瀬川晶司五段、三枚堂達也六段、今泉健司四段を破り、木村孝太郎アマは斎藤明日斗四段、中座真七段、佐藤和俊六段を破っている。

 10代、20代の若手を中心にアマ棋界はかつてないほどにレベルが高くなった。

プロの壁の高さを公式戦で実感

 実は55歳の筆者も6月のアマチュア竜王戦全国大会で3位に入賞したことで推薦を受け、アマ代表として12月25日、2年連続で公式戦の竜王戦ランキング戦6組に出場する機会を得た。

 対戦相手の神崎八段は格下のアマが相手でも全力投球だった。序盤こそ筆者がまずまずの展開に持ち込んだが、神崎八段は終始正座で通され5時間の持ち時間を残り1分の秒読みになるまで使って貫禄を示された。対局開始から約12時間の長期戦、地力の差が出たようである。

 敗れたことでプロ棋士の壁の厚さを再確認すると同時に、これを乗り越えた里見女流四冠らの強さはいったいどのくらいなのだろうと敬意を覚えた。

 2019年はトップばかりでなく、女流棋士とアマの戦いぶりからも目が離せない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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