Yahoo!ニュース

「観る碁」は増えるか? 将棋ブームに対抗、イベントでファン層拡大目指す囲碁界の課題

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
今年のジャパン碁コングレスin宝塚に出演する黒嘉嘉七段(台湾) 提供・関西棋院

 将棋界は藤井聡太七段(15)の活躍や国民栄誉賞を受賞した羽生善治竜王(47)らのタイトル戦情報など、毎日のように各種メディアでニュースが報じられている。

 昔から将棋と並んで人気のある盤上遊戯、囲碁は現状では大きく水をあけられている状況で「レジャー白書2017」によると囲碁人口はわずか200万人。将棋人口の530万人に比べてもさびしい結果になっている。

観戦を主とする囲碁ファンは少ない

 筆者は25年ほど前から囲碁・将棋界両方のメディアにかかわってきたが、囲碁ファンの年齢層は将棋ファンに比べて高く、碁会所などで対局したり指導碁を受けたりすることを楽しむ人が多い。実は、観戦のみを趣味とする層は少ない。

 一方、将棋は最近「観る将」(みるしょう)と呼ばれる、ほとんど指さなくとも棋士や棋界の情報を知ることを楽しむライトなファン層が増えてきたのが追い風だ。

1000万人超えの時代もあった

 囲碁は1999年に「ヒカルの碁」(週刊少年ジャンプ)の連載が始まってから数年は大きなブームとなったが、野球やサッカーのようにプレーしなくとも見ることを楽しむファンを定着させることはできなかった。

 手元の統計では1983年に囲碁人口1130万人という時代もあっただけに、囲碁界としては「ファン層拡大の妙手」を考えたいところだが、7月13日(金)から16日(月・祝)の期間、一大イベントが関西で企画されている。

 「第3回ジャパン碁コングレスin宝塚」(主催・ジャパン碁コングレスin宝塚実行委員会、共催・関西棋院、宝塚市、日本棋院ほか http://japangocongress.p-kit.com/)がそれ。

囲碁の魅力に多方面からアプローチ

昨年7月、宝塚での第2回ジャパン碁コングレスにおける国際交流試合の様子。世界各国から選手が多数訪れた
昨年7月、宝塚での第2回ジャパン碁コングレスにおける国際交流試合の様子。世界各国から選手が多数訪れた

 兵庫県「宝塚ソリオホール」をメイン会場としで開催される4日間のプログラムの中には参加型の大会や指導碁はもちろん「囲碁は認知機能を向上するのか」(飯塚あい氏・医師、元日本棋院院生)や「発達障害児の囲碁治療」(正岡徹氏・関西棋院理事長、医学博士)といった学術的テーマを講演する「囲碁学会」が開かれるほか、世界的人気を誇る女性棋士の黒嘉嘉七段(台湾)らを招いての「世界トップ女流棋士トーナメント」。「ワールド碁ペアマッチ」(村川大介八段&稲葉かりん初段vs余正麒七段&黒嘉嘉七段)。

 さらに最強国産AI「Zen」とトップ棋士による相談碁(結城聡九段、瀬戸大樹八段、坂井秀至八段)など「観る碁」(みるご)のファンを掘り起こすイベントが用意されている。

 囲碁の医学的効用に関する講演は、すでに数十校で行われている高等教育機関での囲碁授業の増加につながるかもしれないし、女性棋士を前面に押し出しての公開対局は将棋界に比べ女性プロの多い囲碁界の長所を生かしているといえるだろう。

 またAI対人間の対局は、将棋界では昨年の第2期電王戦で「Ponanza」が佐藤天彦名人に2連勝し最後となったが、囲碁界ではまだ国際的に人気があるカードだ。

将棋界に学ぶべきメディア戦略

 もっともこうしたイベントの実施だけでは囲碁人気のV字回復は簡単にはいかないだろう。

 将棋界では07年から続く漫画「3月のライオン」がアニメ化され、昨年は実写映画にもなった。これと並ぶ人気漫画「りゅうおうのおしごと!」は漫画とライトノベルが並行して刊行され今春アニメ化もされた。

 16年スタートの「将棋めし」は対局中の食事をテーマにしたグルメ漫画。近年ネット中継やニュースで対局者の昼食、夕食が報道されることもあって人気を集めテレビドラマ化もされた。

 今年になってからも「紅葉の棋節」、「将棋指す獣」、「リボーンの棋士」と続々連載が始まっている状況で、ほかにもウェブテレビや地上波の番組でも棋士の出演するクイズ、バラエティは多く、圧倒的だ。

 囲碁界としては井山裕太七冠(29)に続く若いスター棋士を育て、マンガ、テレビ、ウェブなど複数のメディアで魅力を発信することが喫緊の課題であろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

古作登の最近の記事