井山七冠にも勝った囲碁AI「Zen」と棋士の打ち込み勝負始まる

関西棋院所属の若手精鋭3棋士が相談碁でZenに挑んだ(写真はすべて筆者撮影)

 2016年3月、グーグル・ディープマインド社開発の囲碁AI「アルファ碁」がトップ棋士イ・セドル九段(韓国)を4勝1敗で破ってから2年あまり、囲碁の世界ではコンピュータソフトが人間を超えたことは広く知られるようになったが、力の差がどのくらいに達したのかは、はっきりしていない。

国産AIのZenも世界トップレベル

 国産最強の囲碁AI「Deep Zen Go」(以下Zenと記述)も昨年3月の「ワールド碁チャンピオンシップ2017」(日本棋院主催)に参加しミ・イクテイ九段(中国)、朴廷桓九段(韓国)に惜敗したものの井山裕太六冠(当時)に勝ち世界トップレベルの棋力にあることを示した。その後ネット対局場では改良を続けて強さを増し、プロに9割5分以上の圧倒的勝率を残してトップ棋士を超える強さに到達した。

 2018年3月から4月にかけ行われた「囲碁電王戦FINAL」(ドワンゴ主催)では過去に敗れていたミ九段、朴九段、趙治勲名誉名人(日本)の3人と対戦しミ九段には敗れたが残る2局を快勝、開発サイドから事前に発表されていたとおりZenの強化プロジェクトは終了し今後は新たな方向でソフトの活用を考えていくとのこと。

二子下手で打つ高段棋士も

 Zenの強さが明らかになった後のネット対局場ではプロ棋士がZen相手に定先の黒(コミなし)や二子下手のハンディをもらって打つことも試された。

 タイトル獲得実績もある高段棋士は「互先では大幅に負け越したので、ソフトの強さを認めて素直に教わる気持ちで定先、それでも負け越したら手合いを改めていく」と話していた。

「打ち込み碁」初戦は若手精鋭チームが惜敗

 適正手合い(ハンディキャップ)はどこにあるのか、関西棋院の機関誌「囲碁関西」では5月号(4月発売)からZenと棋士の二番手直り「打ち込み碁」企画がスタートした。

 打ち込み碁とは結果に応じてハンディを増減する対局方式で、二番手直りは同じ手合いで二つ負け越すと負けた側のハンディが一つ増える(互先なら定先、定先なら二子)というルール。プロにとって定先や二子に打ち込まれることは屈辱なので、通常の対局以上にプレッシャーがかかる。

佐田篤史三段
佐田篤史三段
西健伸二段
西健伸二段
大川拓也初段
大川拓也初段

 最初に互先で挑んだのは若手精鋭による持ち時間3時間の相談碁。

 メンバーは佐田篤史三段(22)、西健伸二段(18)、大川拓也初段(16)の3人。リーダー格の佐田三段は全棋士参加棋戦でもトップ棋士を破って上位進出の実績があり、西二段は2017年度の関西棋院新人賞。大川初段は昨年秋に入段したてのホープだ。

 また相談碁は見落としが少なくなるため一般には半目程度強くなる(互先と定先の中間くらい)といわれている。

 棋士チームは期待にたがわず白番で奮闘したが302手の熱戦の末2目半負け。詳しくは小野幸治四段の観戦記をご覧いただきたい。

人間には理解しづらいソフトの大局観

 筆者も棋士の読み筋とソフトの大局観の違いに注目し観戦した。

 途中棋士チームが有利を自覚した場面もあったが、ソフトはその局面で自分の勝率が高いと示していた。感情を持ち一局の流れを意識する人間には、現局面のみを計算し期待値の高い手を選ぶZenの大局観を正確に理解するところまで至っていないような気がする。

 この企画は少なくとも半年以上続くので、適正手合いがどこになるのか興味深い。筆者は定先と二子の間で落ち着くと予想している。