学生アルバイトにも「休業補償100%」 たった一週間で支払われた舞台裏

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

学生アルバイトが「休業補償100%」を労使交渉で合意

 現在、就労先の休業によりアルバイト収入が絶たれ、生活困窮に陥った学生が増えている。生活困窮高等教育の無償化に取り組む学生団体の「高等教育無償化プロジェクトFREE」が行ったネット調査「新型コロナ感染拡大の学生生活への影響調査」が公表され、アンケートに回答した学生のうち、「退学を検討」している学生は20.3%、およそ5人に1人にも上っている。

 そのような状況に対して、政府は、5月19日、新型コロナウイルスの感染拡大による休業の影響でアルバイト収入が減少した学生への支援策として「学生支援緊急給付金」を給付することを閣議決定した。住民税非課税世帯の学生には20万円、それ以外の場合には10万円が支給される。しかし、その程度の金額では、高額な学費や日々の生活費を賄っていくには十分ではないという学生も多いのが現実だ。

 そこで、最近では、アルバイト先へ「休業補償」の支払いを求めユニオン(労働組合)に加入し、立ち上がる学生が増えてきている。今回紹介するのは、労働組合・ブラックバイトユニオンで「休業補償100%」を1週間で支払われた事例である。学生たちが生活を成り立たせ、学業を諦めないためにも、休業補償の全額支払いは非常に画期的である。

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たった1週間で「休業補償100%」を合意するまで

 今回休業補償全額をアルバイト先と合意したAさんは、東京都内の大学2年生だ。彼の家庭は母子家庭であり、母親は中小企業の事務職で働いているが、生活は決して楽ではない。Aさんは学費や自らの生活費だけではなく家計を支えるために、授業のない日に紹介会社を介して単発のアルバイトをしながら大学生活を送り、月2~3万円を家に入れていた。

 大学が春休みに入る3月、長期休暇中ということで授業期間以上に多くの金銭を稼ぐ必要のあったAさんは、10日ほど美術館の管理・警備業務等の単発のアルバイトを入れ、10万円ほどを稼ぐ予定だったという。しかし、新型コロナの影響で次々と仕事がキャンセルになっていった。働く予定だった会社からは電話一本でキャンセルが告げられるだけで、休業手当などについての説明は全くなかった。

 「このままでは大学に通えなくなる」。そんな危機感から、Aさんはネット検索でみつけた「ブラックバイトユニオン」に相談した。ユニオンのスタッフから「会社に100%の休業手当を請求することができる」と説明を受け、「生活のためには、ここで声をあげるしかない」と決意した。

 Aさんはユニオンに加入し、4月末に休業補償の全額支払い等を求めて会社に団体交渉の申し入れを行なった。そこには、Aさんと同様に労働問題を抱えたユニオンの仲間約10名が支援のために参加をした。そこで、Aさんたちは自身の置かれた経済的な状況や、友人ら多くの学生が生活がままならない状況を伝え、早期に休業補償全額の支払いをするよう会社と交渉したのである。

 交渉から1週間ほどして、アルバイト先の企業3社それぞれから休業補償の支払われるようになった。しかも、3社中2社は「休業補償100%」が支払われたのだ。休業補償の支払いを求めた場合、多くが支払わないか最低基準である6割の支払いしかしないことが多い中(労基法の罰則規定があるため)、「100%」の支払いを実現したことは非常に画期的である。

 Aさんは「一人だと心細かったが、ユニオンの人たちが一緒に闘ってくれて本当に心強かった。こんなにすぐに成果が出たのも、仲間がいたからだと思う。他の学生の人もあきらめずに声を上げてほしい。ぼくの闘いが、学生という立場の弱い人でも声をあげていくきっかけになれば嬉しい」と話している。

休業補償は「100%」を請求できる

 休業補償の請求について、法律上の権利をおさらいしたいと思う。民法536条2項により、使用者の「責めに帰すべき事由」(故意・過失またはこれと同視すべき事由)がある休業の場合、労働者は休業中の賃金を全額請求できる。労働者に何の落ち度もないのに雇用主側の都合で働くことができなかったということであれば、労働者は賃金を請求する権利を失わないということだ。

 新型コロナに関連する休業の場合、雇用主にそこまで責任が認められないということもあるだろう。このようなときは賃金全額を請求することが難しいケースもあるが、そのような場合でも、労働基準法26条に基づき、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いを求めることができる。

 雇用主が休業手当の支払義務を免れるのは、かなり限定的なケースだけだ(天変事変など不可抗力による場合のみ)。さらに、仮に企業が休業補償を免れるケースでも、休業手当を支払えば、国が雇用調整助成金で補助してくれる(もちろん、支払い義務がある場合でも助成される)。

 また、特措法に基づく休業要請を受けていて、解雇等をしていない場合、中小企業であれば補助率は100%に上る(上限額はあるものの学生の場合、多くは全額が補助されるだろう)。

 つまり、多くの場合、学生に休業手当を支払ったとしても、企業側に負担はないのである。政府の新型コロナ対策は、この「雇用調整助成金」が中心になっているため、この制度を企業が使わないことは、働く人たちの権利侵害に当たるといっても過言ではない。

労働組合で戦い「休業補償100%」を勝ち取ろう!

 新型コロナは多くの学生に深刻な影響を与えている。だがアルバイトが休業状態になり苦境に陥っている学生は、決してあきらめないでほしい。ブラックバイトユニオンをはじめ、個人で加入できる労働組合(ユニオン)に相談し、同様の問題を抱えた仲間と一緒に権利を行使することで、Aさんのように早期に問題を解決できるケースもある。

 労働組合には会社と団体交渉といって直接話し合いをする権利が保障されているからだ。また、会社が不誠実な対応をする場合には、会社前での抗議行動やメディアに会社の問題を取り上げてもらうなど、様々な宣伝行動が「合法的」にできる。労働組合は、会社と交渉する上で、とても強い「権利」を持っているのだ。

 ブラックバイトユニオンの他にも、例えば、アルバイトを組織する飲食店ユニオンでも、物流センターでシフト制で働いていたアルバイトが、ユニオンの団体交渉で休業手当の支払いを実現させつつあるという。

 会社側の弁護士は当初、「シフトが確定していない部分については休業手当の支払い義務はない」と話していたが、交渉の末、一部を支払うことには合意。今後も100%を目指した話しを継続するという(飲食店ユニオンのブログ参照)。

 アルバイト先の休業で生活困窮に至っている学生の方は、泣き寝入りをしてしまうのではなく、まずは以下の相談窓口へ相談をしてみて欲しい。

【無料相談窓口】

NPO法人POSSE 

03-6699-9359

soudan@npoposse.jp

*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。

ブラックバイトユニオン

TEL:03-6804-7245 (日曜日、13時から17時まで)

Mail:info@blackarbeit-union.com(24時間受け付けています)

*学生たちが作っている労働組合です。

仙台学生バイトユニオン

TEL:022-796-3894(平日17時~21時、土日祝13時~17時、水曜日定休)

Mail:sendai@sougou-u.jp

*仙台圏の学生たちが作っている労働組合です。

飲食店ユニオン新型コロナウイルス関連労働相談ホットライン

毎週火曜と金曜の17:00~21:00

*秘密厳守・相談料無料

総合サポートユニオン 

03-6804-7650

info@sougou-u.jp

*個別の労働事件に対応している労働組合。労働組合法上の権利を用いることで紛争解決に当たっています。