コロナ問題で「生活保護」は使えるのか? 制度の仕組みと使い方を解説する

(写真:アフロ)

 この間、柔軟で多様な働き方として、非正規雇用が増加するとともに、フリーランスの推進が働き方改革のもとで謳われてきた。フリーランスはサラリーマンの副業や、高齢者の就業機会の確保として期待されてきたのである。

 しかし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、フリーランスという働き方の不安定性が浮き彫りになっている。イベントの自粛、一斉休校、フィットネスジムやライブハウスの運営自粛などが重なり、仕事がなくなり、収入が途絶えてしまうという人が少なくない。

 インターネット上のアンケート調査では、約6割の人が仕事と収入の減少を感じているというデータもある。

 また、会社に雇用されていないために、会社から出勤停止を命じられた時の休業手当や、自主的に休んだ時の傷病手当金などの保障を受けることもできない。

 こうしたことから、生活苦に陥るフリーランスの人も少なくないだろう。もはや、生活を支えてくれる制度は生活保護しかないと言っても過言ではない。そこで今回は、これまでの新型コロナ問題に伴うフリーランスへの支援策を紹介しつつ、生活保護制度について解説していく。

 また、ここで紹介する制度の利用方法は、フリーランスに限らず、非正規雇用や正社員を解雇されてしまった人たちにも使えるものだ。

新型コロナに関連するフリーランスへの支援策

 まず、新型コロナ感染拡大に伴うフリーランスへの支援策を簡単に見ていこう。

(1)新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金

 これは、小学校等の臨時休校に伴い、子どもの世話をするために契約した仕事ができなくなった保護者への支援金である。(詳しくは厚生労働省のHP

 2月27日から3月31日までの間で就業できなかった日について、1日当たり4100円が支給される。

 ただし、すでに批判がある通り、この金額では到底生活できない水準である。

(2)新型コロナウイルス感染症特別貸付・特別利子補給制度

 新型コロナによる影響で売上が減少した中小企業や個人事業主などの事業者への資金繰り支援である(詳しくは日本政策金融公庫のHP)。

 最近1ヶ月の売上が前年または前々年と比べて5%以上減少した者が対象で、個人事業主の場合には3000万円まで借り入れ可能となっている。また、特別利子補給制度により、借入後3年は実質無利子となる。

(3)生活福祉資金の拡充

 こちらはフリーランスに限らず、「新型コロナウイルスの影響を受け、休業等により収入の減少があり、緊急かつ一時的な生計維持のための貸付を必要とする世帯」を対象とした貸付制度である。

 一時的な生活困難に対応したものとして、「緊急小口資金」がある。20万円以内の貸付で、無利子かつ保証人は不要だ。

 もう少し長期間の生活困難に対応したものとして、「総合支援資金」がある。2人世帯で20万円以内、単身世帯で15万円以内を原則3ヶ月まで貸付する。こちらも無利子で保証人不要である。

 これらの貸付については、償還時になお所得の減少が続く場合に、償還免除とされることもある。

 これらの制度については以前の記事:「コロナで「お金」に困ったときに使える制度 様々な制度の「使い方」を解説する」で詳しく解説している。

 以上のように、「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」は金額が少な過ぎ、「新型コロナウイルス感染症特別貸付・特別利子補給制度」はあくまで事業資金の貸付である。生活苦が続く場合、「生活福祉資金」が実質給付となる可能性はあるが、長期間にわたる生活困難には対応しきれない。

 それに対し、家賃や生活費が現金給付、医療費が現物給付され、期間の定めのない生活保障の制度が生活保護なのである。

生活保護はどうすれば利用できるか

 それでは、生活保護制度の利用方法について解説していこう。まず、生活保護を利用し始める方法からはじめていく。

 生活保護は、(1)居住地の自治体で申請を行い(2)世帯の収入や資産について調査を実施し(3)受給要件を満たしていれば決定、満たしていなければ却下される。

 (1)居住地の自治体での申請については、居住地が「居住の実態」で判断されるというのがポイントだ。もし、いま現に住んでいる自治体と、住民票が置かれた自治体が違っている場合でも、今住んでいるところで申請できるということだ。

 また、(2)世帯の収入や資産についての調査についても、世帯状況は「実態」を見て判断する。もし実家で親と同居していれば、ほぼ間違いなく親と同一世帯とみなされる。

 生活保護制度は世帯人数と年齢で計算された世帯単位の「最低生活費」と、実際の世帯収入を比較し、後者が前者を下回れば適用される。

 例えば、都内単身者の最低生活費は約13万円であるが、夫婦や子どもがいる場合には、この「最低生活費」金額が増加していくことになる。

 さらに、資産については、自動車や生命保険などは原則保有できない(例外もあり)。預貯金は1ヶ月の最低生活費の半分しか保有できないことになっている。

 このように、世帯や資産についての調査を経て、原則14日以内(最長30日)で保護を開始するかどうかの決定がなされる。

生活保護で給付される8つの扶助

 生活保護が開始されると、8つの扶助を受ける権利を得られる。それぞれの内容について見ていこう。

(1)生活扶助

 世帯の人数と年齢で金額が決まる。例えば、都内単身者だと月約8万円だ。食費や光熱費などはここから捻出することになる。

(2)住宅扶助

 地域と居住人数によって上限額が決まっている。上限額以内であれば家賃実費が支給される。管理費や共益費は含まれないので注意。

(3)医療扶助

 保険の効く医療については無料となる。役所で医療券という書類をもらって病院に提出して診療を受ける。通院にかかる交通費も実費で支給される。

(4)生業扶助

 生計の維持を目的に営まれる小規模事業に必要な器具などを購入する費用が46000円以内で支給される。この金額で不足する「やむを得ない事情があると認められるとき」には、77000円まで増額される。また、公的な資格取得のための費用も一定額認められている。

(5)教育扶助

 小中学校に通う子どもがいる場合、その教材代、給食代、通学交通費が基本的に実費で支給され、クラブ活動費なども一定の範囲で支給される。

(6)介護扶助

 同居する親族などが介護を利用する場合、自己負担分が保護から支給される。

(7)出産扶助、(8)葬祭扶助

 これらは読んで字のとおり、出産や葬祭の場合に支給される。

 このように、生活保護はあらゆる生活上のリスクに対応している。特に「生業扶助」をうけることで、一度破綻してしまったフリーランスが再起するためにチャンスを得ることができるのである。

申請時の注意点

 ただし、役所では簡単に生活保護を出してくれない場合がある。本来は規則違反なのだが、申請しない方に「誘導」されてしまうことが多いのだ。

 フリーランスでも、まだ雇われて働ける年齢の場合、「とりあえずアルバイトをしてください」といわれてしまう可能性が高い。

 もちろん、最低生活費を上回るアルバイトが簡単に見つかるなら良いが、そもそも相談に訪れる人たちはそれが難しいから、生活保護の受給を考えている。若い失業者が「仕事を見つけなさい」と追い返された末に、餓死に至った事例も実在する。

 それでは、こうしたケースにどのように対応したら良いだろうか。基本的には、「申請」をすればよい。申請書を渡してくれない場合もあるが、自分で紙に申請する趣旨を書いて出せば大丈夫だ。

 申請をすれば規則上、行政側は保護の対象となるか、すでに述べた点を調査することになる。それが、保護すべきだと判断されれば、保護が開始される。

 生活保護についての専門知識や経験を積んだ支援者に支援を頼めば、より確実に申請をすることができる(末尾に相談窓口を示して置いた)。

生存危機だからこそ生活保護の活用を

 以上、生活保護制度の利用のノウハウと注意点について述べてきた。

 先にも述べたように、新型コロナ問題で不安定化するフリーランスの人たちの生活を長期的に支えることができるのは、生活保護制度しかないと言っても過言ではない。

 確かに、メディアでは「不正受給」についての報道が多く、ネガティブなイメージを持っている人も多いだろう(「不正受給」の報道は実際の件数や金額の少なさに比してフレームアップされ過ぎである)。

 しかし、新型コロナ問題で顕在化しつつある生存危機においては、憲法25条が謳う生存権を具体的に保障する生活保護が当然のこととして利用されるべきなのである。

生活保護についての無料相談窓口

NPO法人POSSE

03-6693-6313

seikatsusoudan@npoposse.jp

*社会福祉士を中心としたスタッフが福祉制度の利用をサポートしています。