リクナビ求人が停止の可能性! ストライキの法的効果とは

 違法行為が指摘される企業の求人が、リクナビ、マイナビなどの求職サイトから消えるかもしれない。こんなことが現実味を増している。

 先月28日、労働組合・ブラック企業ユニオンが、大手求人サイト運営事業者三社(リクナビ、マイナビ、エン転職)に対し、サントリーグループの自動販売機オペレーター・ジャパンビバレッジ社の求人掲載を止めるよう申し入れたのだ。

 リクナビなど大手民間求人サイト三社にジャパンビバレッジ東京の求人の掲載停止を要請しました! 

 ブラック企業ユニオンによれば、ジャパンビバレッジ社は、労働基準監督署から約半年間に長時間労働や残業代不払い等の労働基準法違反について四度の是正勧告を受けている。

 

 それでも同社は「労基署とは見解が異なる」などと主張していることから、ブラック企業ユニオンは、残業代の支払いや労働環境の改善を求めてストライキを行ってきていた。

 実は、すでに、今年7月末には、東京都労働委員会がハローワーク(公共職業安定所)に対し、ジャパンビバレッジ社の求人を掲載しないよう通報している。

 今回、民間求人サイト運営事業者が、ハローワークに準じた対応をとれば、ブラック企業の求人が官民両方の「転職市場」から締め出されることになる。

「違法企業の求人」の止め方と法的根拠

 では、違法企業の求人は、どのような根拠で掲載停止を要請できるのだろうか。

 

ハローワークによる新卒求人掲載停止(若者雇用促進法第11条)

 第一に、若者雇用促進法にもとづいて、ハローワークの新卒求人を止める方法がある。同法によれば、労働基準法などの労働関係法令の規定に違反し、(1)是正勧告を受けたり、(2)国によって違反が公表された場合に、新卒者向けの求人が不受理の対象となる。

 これは、私が代表を務める「ブラック企業対策プロジェクト」も政府に求め続けてきた結果、最近法制化された措置である。

 ただし、(2)の企業名公表に至るケースはごく少数であり、また(1)は1年間に同じ事業場で2回以上同一条項の違反について是正勧告を受けている場合に限定されており、使い勝手が悪いというのが実情だ。

 そのうえ、求人停止の範囲も、ハローワークの新卒求人に限定されているため、仮に止まったとしてもそれ程大きな効果は望めないだろう。

ハローワークによる求人掲載停止(職業安定法第20条)

 第二に、職業安定法にもとづいて、ハローワークの求人を止める方法がある。同法は、ストライキが発生している事業場に、新しく労働者を採用して代わりに仕事をさせる「スト破り」を抑制するために、ハローワークの求人を止めることを定めている。

 ジャパンビバレッジ社のストライキでは、この法律が適用され、東京都労働委員会がハローワークに対し求人を止めるよう通報している。

 もちろん、ストライキが起きている会社=ブラック企業ではないが、同社のように違法行為を繰り返す企業に対抗する有効な手段であることは間違いないだろう。

 ただし、この規制も、リクナビ・マイナビ等の民間求人サイトには及ばない点で限界がある。

 

求人情報提供事業者による求人掲載停止(求人情報提供ガイドライン)

 第三に、求人情報適正化推進協議会が策定した求人情報提供ガイドラインにもとづいて、民間求人サイト運営事業者にブラック企業の求人の掲載を停止するよう求める方法がある。

 このガイドラインでは、民間求人サイト運営事業者が、「掲載を差し控えるべき事項」として、「事業の内容または募集の内容が法令に抵触するもの」、「ストライキが発生している旨の通報が、労働委員会から公共職業安定所になされたことが判明した場合の募集」という事項が挙げられている。

 大手民間求人サイト運営事業者のほとんどは、このガイドラインを遵守することを宣言しているため(適合メディア宣言)、私たちはガイドライン通りの運用を求めることができるのだ。

適合宣言メディア一覧 (54社 138メディア) 

 ジャパンビバレッジ社の場合には、労働基準監督署から四度の是正勧告を受けたことや、東京都労働委員会がハローワークにストライキが発生している旨の通報をしたことが確認されているため、ガイドラインの「掲載を差し控えるべき事項」に当たる可能性が高いと思われる。

 このように、ブラック企業で働く労働者がストライキを実施すれば、ハローワークだけでなく、民間求人サイトに掲載されている求人さえも止められる可能性があるのだ。

ブラック企業の求人を止める意義

 次に、ブラック企業の求人の掲載を止める社会的意義について考えてみよう。

 まず求職者にとっては、ブラック企業に就職してしまうリスクが減るというメリットがある。多くのブラック企業は、求人段階では違法な労働条件を隠そうとするため、求職者がブラック企業を見分けることは難しい。だが、労働の実態から、ブラック企業の求人を判別して求人の掲載を停止できれば、ブラック企業に騙されて入社する人は減るだろう。

 また、まともな経営者にとっても、ブラック企業の求人の掲載停止はメリットが大きい。ブラック企業の多くは、求人詐欺によって実態と異なる求人を出しているが、そうした求人との人材獲得競争に晒されることを防げるからだ。

 このように、違法な労働を強い、労働者の心身を危険にさらすブラック企業の求人の掲載を止めることは、多くの人にとって利益になるだろう。

ブラック企業への対抗手段

 日々、労働相談を受ける私の目線からは、ブラック企業の被害は一向に減っていない。そのような中で、労働者がストライキによって当該企業の求人を止める戦略は、ブラック企業に対する有効な対抗手段となりうるだろう。

 それというのも、ブラック企業は、大量採用・大量離職を前提に、違法で過酷な労務管理を行っているのだが、求人の掲載停止により、前提となっていた大量採用ができなくなれば、こうしたビジネスモデル自体が成り立たなくなるからだ。

 ストライキとそれに伴う求人の掲載停止は、ブラック企業の経営者に、ビジネスモデルの転換を迫ることになるのだ。

 日本の労働組合法では、職場に一人でも組合員がいれば、交渉権もストライキ権も行使できることになっている。ぜひ、多くの被害者にブラック企業ユニオンのような誰でも一人でも入れる労働組合(ユニオン)に相談・加入し、ストライキ権を行使することでブラック企業を改善してほしい。

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