関大付属は氷山の一角! 私立学校に蔓延する労働基準法違反

私立学校の長時間労働・残業代未払いは労働基準法違反

 関西大学付属の小学校・中学校・高等学校に対して、労働基準法違反の是正勧告が出されていたことが、4月3日に報道された。しかも、是正勧告は2017年4月、2018年3月と2年連続で出されていたという。

 報道や反響を見る限り、有名な「関西大学」というブランドが注目を集めている印象があるが、私立学校の長時間労働は、広く蔓延している問題である。

 昨今、公立学校の長時間労働が社会問題化しており、公立学校の教職員に労基法の適用の例外を認めている給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の見直しが話題になっている。その一方で、私立学校の教職員が陥っている長時間労働・残業代未払いの問題については、そこまで注目されているとは言いたがい。

 しかし、私立学校の教員には労働基準法が適用される。労働基準法に照らして私立教員の労働問題を改善させていくことは、公立学校の労働時間のあり方にも大きな影響を与えるはずだ

(私や内田良・名古屋大学准教授が先月に、以下の記事を公開しているので、こちらもぜひ参照してほしい)、。

私立学校の教員の残業代未払いは労働基準法違反!

私立高校 2割に労基署の指導・勧告 最新調査から私立校教員の働き方に迫る

 本記事では、関大付属の教職員組合関係者から筆者が得た情報も踏まえ、同校でどのような労働問題が起きていたのかを紹介しながら、私立学校の典型的な労働基準法違反を整理してみたい。

月残業170時間を12ヶ月? 1年で2年分働く超長時間労働

 学校法人・関西大学は、大学や大学院以外に、複数の小・中・高等学校の併設校を抱えている。そのなかで大阪府高槻市にあるのが、今回是正勧告を受けた関西大学初等部・中等部・高等部である。

 報道によると、労働基準監督署の是正勧告の内容は、2017年4月の1回目が、36協定を締結しない違法な時間外労働(労基法32条)、毎月の労働時間を賃金台帳に記入していなかったこと(労基法108条)。2018年3月の2回目が、残業代未払い(労基法37条)、36協定を締結しない違法な時間外労働(労基法32条)となっている。

 教員によっては、なんと年間2042時間の残業があったという。平均をとると、毎月約170時間残業を12ヶ月続けていたという計算になる。一般的な労働者の平均所定労働時間が月170時間程度だから、この教員は一般的な労働者のまるまる2年間分働いていたことになる。

 筆者は本件について、同校の労働組合関係者から情報を入手することができた。この年2042時間残業した教員は、時間割作成などを任される教務担当とクラブ活動などに追われて、これほどの超長時間労働になってしまったのだという。そのほかにも、15%以上の教員が過労死ラインを超える残業時間であったという。

 さらに、同校では36協定が締結されていない。残業時間の上限を決める36協定がなければ、1分でも残業をさせたら労働基準法違反となる。しかし、公立学校が給特法でこの規定を免除されているのをいいことに、同校と同じように、多くの私立学校でも36協定を締結しないまま、青天井で長時間の残業をさせているのが実態である。

「勤務の多寡にかかわらず」定額の手当を支給するのなら、残業代ではない

 この事件で気になるのは、なぜ昨年は残業代についての是正勧告が出ていなかったのに、今年は出ているのかという点だ。

 この点についても内情を聞くことができた。まず、同校がこれまで残業代を払っていたのかどうか。同校では「教育職員調整手当」という手当が存在しており、これを残業代であると認識していたという。同校の給与規程を引用しよう。

 「第10条 教育職員調整手当は、高・中・初等部就業規則第26条に規定する時間外及び休日勤務に対する手当として、その勤務の多寡にかかわらず、本俸の8%相当額を一律に支給する」

 要は、あらかじめ定額の手当を払うという「固定残業代」である。しかし、固定残業代であれば、その手当が何時間分の残業時間なのかを明記し、手当分を超えて残業した場合には追加で支払わなければならない。

 その点、この給与規定では、「勤務の多寡にかかわらず」、つまり何時間働いても、定額の手当しか払いませんとわざわざ宣言している。このため、同手当は労働基準監督署でも固定残業代として認められず、同校では1円も残業代を払っていなかったということになった。何時間働いても定額の手当しか払わないという違法状態は、私立学校の典型例である。

労働時間の記録がないため、残業代未払いを労基署が是正勧告できず

 ところが、残業代が払われていなかったにもかかわらず、労基署は昨年、是正勧告を出さなかった。一応、労基署は昨年の段階で、残業代があるのであれば払うようにと、同校に緩く指導してはいたとが、未払いの残業代の存在を確定して、労基法違反であるとして是正勧告するまでには至らなかった。なぜか。

 それは、同校が労働時間をタイムカードなどで記録していなかったことが理由だという。労働時間の記録がないというずさんな労務管理のために、証拠がないとして、残業代未払いの存在じたいを明確に認めることができなかったというのだ。

 同校では労基署の指導を受けて、2017年4月から労働時間の把握をするようになったという。さらに、過去の労働時間についてもパソコンのログで把握できることを学校側は認めた。しかし、過去分も含めて残業代の存在を認めず、なかなか払わない。このため、2018年に初めて残業代の未払いを労働基準監督署が明確に確認し、かつ是正勧告したというのだ。

 労働時間の記録がなければ、長時間労働も残業代未払いも、確認すらできなくなってしまう。この労働時間把握の問題は、私立学校に限らず、公立学校でも非常に良く見られる実態である。

生徒と一緒の給食時間は「休憩」ではない! これも労働基準法違反

 また、学校ならではの問題として、同校には休憩の問題もあった。労働基準法では、8時間を超える労働をさせる場合は、1時間の休憩を取らせなければならない。これは給特法でも除外されておらず、公立学校の教員にも当てはまる。

 実は1回目の2017年4月の時点で、労働基準監督署は休憩の不取得(労働基準法34条違反)による是正勧告も出されていた。小中学校では、児童・生徒が給食を食べる時間が教員の「休憩」とされていたが、教員は彼らと一緒に給食を食べることになっていた。しかし、子どもたちにとっての「食事」や「休み時間」も、教員からすれば、労働時間にほかならない。このため、1時間の休憩が取れていなかったのだ。

理事長が是正勧告に対して「別のルールを持ち出された後だしジャンケン」

 関西大学付属校は、2年連続で是正勧告を受け、しかも同じ労基法違反も繰り返しており、極めて悪質な対応だといえよう。そればかりではない。今回の報道では触れられていないが、関係者によれば、同校は6年前の2012年3月にも休憩不取得の労働基準法違反での是正勧告と、労働時間の把握をしていないことについて改善指導を受けていた。今回は「3回目」だったのだ。

 さらに同校の法律軽視の対応は続き、現在に至るまで、過去の残業代未払い分についても時効にかかる2年分のうち半分の1年分(それでも総額9800万円に及ぶ)しか支払いを認めていない。しかも、それすら払おうとしないため、今年3月の是正勧告に至っている。その上、労働基準監督署に申告した教員(教職員組合の組合員)に対して、自宅待機命令を出す嫌がらせまでしているという。これも、事実であれば違法行為だ。

 こうした労働基準法に対する学校側の敵視を如実に示すのが、同法人の理事長から教職員組合に対して送られた、2017年12月8日付の書面である。印象的な箇所を引用しよう。

「私立学校には給特法の適用はありませんが、多くの私立学校においても公立準拠の形で現在においても続いています。また、本法人の併設三校においても、長年にわたり定着している方法です」

 多くの私立学校や同校が給特法の適用がないのに準拠している、つまり残業代不払いや36協定のない時間外労働が労働基準法違反であることを自覚していたということだ。違法であることを知っていながら、長時間労働と残業代不払いを続けていたというわけである。

 彼は続く文章で、こうした労務管理が「働き方改革」が叫ばれる社会においては「継続しがたい」という認識を示している。だが、同年4月の労基署の是正勧告については、次のように述べている。

「今回起こった、過去へ遡及しての超過勤務問題は…(略)…法人としては晴天(ママ)の霹靂であり、突然に別のルールを持ち出された後だしジャンケンを仕掛けられたとの感覚が正直な思いです。」

 

 労働基準監督署の是正勧告に対する「逆ギレ」とも言える文章である。労働基準法に従っていないこれまでの私立学校の「ルール」こそが、法律と相入れない「別のルール」だろう。とはいえ、これこそが、多くの私立学校の経営者の本音なのではないだろうか。

 私立学校経営者のこのような意識を変えなくては、私立学校教員の長時間労働・残業代不払いは改善していかないだろう。そして、それを変えるには、私立学校の教員自身が声をあげていくことが最も効果的であるはずだ。ぜひ、専門家に相談してみてほしい。

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