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松坂世代とハンカチ世代、強いのはどちらか

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年
〇〇世代という言葉の誕生するきっかけとなった松坂はWBCでも大活躍した(写真:アフロスポーツ)

 延長17回の死闘、決勝戦引き分け再試合。数々の名勝負を生んだ夏の甲子園の中でも高校野球ファンの間で特に有名なのがこの2試合ではないだろうか。1998年のPL学園対横浜と2006年の早稲田実業対駒大苫小牧は大きな話題となり、どちらの年も大会全体としても大変な盛り上がりを見せた。さらに卒業後も多くの選手がプロの舞台で活躍しそれぞれ松坂世代、ハンカチ世代と称された。

 もし世代対抗戦があったとしたらどちらの世代が強いのだろうか。

いぶし銀の松坂世代打線、タレント揃いのハンカチ世代打線

 各選手のOPSの最も良かったシーズンをキャリアハイとして打線を組むと

松坂世代打線

1.(遊)東出(元広島) .294 0 26

2.(右)赤田(元西武) .259 9 41

3.(一)小谷野(元日本ハム) .311 16 109

4.(三)村田(元横浜) .323 46 114

5.(中)森本(元日本ハム) .285 9 42

6.(左)小池(元横浜) .243 20 53

7.(二)梵(元広島) .306 13 56

8.(捕)実松(元巨人) .273 2 3

 4番・村田の一発は魅力だが打線としてはしぶとくつなぐ攻撃が持ち味となりそう。派手さはなくともチーム打率.292でマシンガン打線並みの高数値だ。

ハンカチ世代打線

1.(中)秋山(レッズ) .359 14 55

2.(二)梶谷(DeNA) .273 18 56

3.(遊)坂本(巨人) .344 23 75

4.(右)柳田(ソフトバンク) .363 34 99

5.(三).宮崎(DeNA) .318 28 71

6.(一)福田永(中日) .261 13 63

7.(捕)會澤(広島) .277 12 63

8.(左)福田秀(ロッテ) .263 7 15

 上位から下位まで一発のあるタレントが並び、相手バッテリーは気を抜けるところがない。長打力のみならずチーム打率も.316と3割を超えた。

 セイバーメトリクスには打撃成績からどれだけの得点を生み出したかを示すRC(Runs Created)という指標がある。これを応用すると27個のアウトを取られるまで、つまり1試合で何点取れるかを算出出来る。それによると松坂世代打線は平均5.60得点、ハンカチ世代打線は平均7.52得点が見込まれるという結果になった。

先発ローテーションはどちらも超豪華

 攻撃面では後塵を拝する形となった松坂世代だが投手陣はどうだろうか。規定投球回に到達したシーズンで防御率の良かったシーズンの成績を並べてみると

松坂世代ローテーション

松坂(中日) 17勝5敗 防御率2.13

杉内(元ソフトバンク) 8勝7敗 防御率1.94

和田(ソフトバンク) 16勝5敗 防御率1.51

新垣(元ソフトバンク) 13勝5敗 防御率3.01

館山(元ヤクルト) 11勝5敗 防御率2.04

 トータル65勝27敗、123試合中36試合で完投するというローテーションが完成した。K/BBは4.17、WHIPは1.00だから相手打線はほぼ毎回奪三振を食らい、もらえる四球は試合を通して2つだけ。得点どころか走者を出すこともままならない。さらにブルペンでは広島で抑えを務めた永川や阪神最強リリーフJFKの久保田、藤川が控える鉄壁の布陣だ。

 ハンカチ世代の投手陣は甲子園優勝投手の斎藤(日本ハム)がプロでは結果を残せていないものの、現役メジャーリーガーの2本柱が強力だ。

ハンカチ世代ローテーション

田中(ヤンキース) 24勝0敗 防御率1.27

前田(ツインズ) 15勝8敗 防御率2.09

大野(中日) 11勝10敗 防御率2.52

石川(ロッテ) 14勝5敗 防御率2.16

澤村(巨人) 11勝11敗 防御率2.03

 田中の24勝0敗が光りトータル75勝34敗、完投は137試合中29試合だ。K/BBは4.22でWHIPは1.00だから松坂世代とほぼ同じ。こちらも難攻不落のローテーションだ。リリーフには増田(西武)、秋吉(日本ハム)らが控えている。

 互いに豪華なローテーションが完成したがより失点が少ないのはどちらか。奪三振、与四球、被本塁打から算出されるFIPは野手の守備力などの影響を受けないため、投手の真の実力を示す指標。防御率に近い数値となることから擬似防御率とも考えられている。松坂世代先発陣のFIPは2.75でハンカチ世代先発陣のFIPは2.86だった。

予想される試合展開は繊細な野球vs豪快な野球

 投打の成績を比べてみると松坂世代は打線が5.6得点を挙げ、先発陣が2.75失点に抑える。ハンカチ世代は打線が7.52得点を奪い、先発陣は2.86点しか与えない。打線はハンカチ世代に軍配が上がり、先発陣の擬似防御率はほとんど互角。ブルペンの厚みは松坂世代に分があるといったところか。

 もし試合をするのであれば松坂世代としては接戦で終盤勝負に持ち込みたい。長いペナントレースで考えるなら戦力的に打線で勝るハンカチ世代が高い勝率を残しそう。ただ近年は強固な勝利の方程式を築いたチームが得失点から予想される勝率以上の好結果を収めるケースが複数あり、松坂世代にも十分勝機はある。短期決戦となればなおさらだ。盗塁数、盗塁成功率はほぼ同じだが犠打数は松坂世代が136個でハンカチ世代が16個と大きな開きがある。継投を含めより細やかな采配を求められるのが松坂世代で、先発が抑えて打つべき人が打つというでんと構えた野球を展開するのがハンカチ世代。繊細さと豪快さがぶつかる好勝負となることは間違いない。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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