球数は歴代2位でも酷使度は斎藤佑樹以上。金足農業のエース・吉田は本当に大丈夫?

 秋田県勢103年ぶりの決勝進出を果たし、東北勢初となる優勝を狙った金足農業。決勝の舞台では大阪桐蔭に地力の差を見せつけられ、深紅の大優勝旗を手にすることは出来なかったが、この夏、最も輝いた球児は間違いなくエース・吉田だった。

 秋田大会初戦から先発完投の試合が続き、甲子園準決勝まで1人でマウンドを守り抜く。その姿は感動的でもあったが、同時に投げ過ぎを心配する声も少なくなかった。決勝では本来の力を出し切れず、5回12失点。甲子園での球数は2006年の早稲田実業・斎藤佑樹に次ぐ歴代2位の881球を数えた。

消耗度は2週間でプロ野球の倍以上に達する

 投手の消耗度を測る指標としてPAP(pitcher abuse point)、投手酷使指数というものがある。計算方法は投球数から100を引いた数を3乗し、その数値を合計する。例えば120球なら20×20×20で8000だ。100球以下の場合は0とする。中4日での登板が多いメジャーリーグでの目安だが10万を超えると故障のリスクが高まり、20万を超えるといつ故障してもおかしくないとされている。中6日が基本のプロ野球を見ると8月21日時点で最も球数の多い楽天・則本でPAPは36万弱。昨季も33万弱となっておりすでに黄色信号を通り越し、赤信号が灯っているとの見方も出来る。

 ただこの指標に当てはめると、吉田の消耗度はその比ではない。甲子園6試合、平均147球を投じPAPは則本の倍以上となる74万強。トレーナーや設備などバックアップ体制の充実するプロ野球のエースが5ヶ月で蓄積した疲労の2倍を吉田はたった2週間で超えてしまっている。しかも秋田大会の636球を含めればPAPは97万弱と100万に迫る。これはどう考えても投げ過ぎだ。

 吉田はフィールディングも抜群に上手く、走者を出せば1球毎にセットポジションの間合いを変え、盗塁を仕掛けそうなカウントでは長く持つなど投げる以外の能力も非常に高い。状況に応じてギアを上げるクレバーさの持ち主で常に三振狙いの全力投球というわけではなかった。ただ、秋田大会は5試合中4試合が3点差以内での勝利。気の抜けない接戦続きで、甲子園では鹿児島実業、大垣日大、横浜、近江、日大三、大阪桐蔭と高校野球ファンなら知らない者はいない強豪ばかりを相手にしてきた。多少の加減をすることはあっても、楽に投げられる場面はほとんど無かったはず。自分が打たれたら負けるという状況で腕を振り続け、しかも大会ナンバーワン右腕はU18代表にも選出された。まだ吉田の夏は終わっていない。

甲子園での投げ過ぎの先輩達は・・・

 近年の夏の甲子園を沸かせたエース達のPAPはどうだったかというと、948球という甲子園で最も多くの球数を投げた早稲田実業の斎藤で67万弱。斎藤の場合は延長15回、178球を投じた2006年の決勝戦1試合で48万弱に達している。2014年準優勝の三重・今井で48万弱、2010年に春夏連覇を成し遂げた興南の島袋が31万強。やはり吉田の74万強という数値は抜けている。選抜では2004年に愛工大名電の丸山が81万強となっており、吉田以上。その上には2013年に1試合で232球を投げた済美の安楽が260万と1人だけ桁違いの数字となっている。故障のリスクは個人差があるため将来に関して断言は出来ないが、ここに名前の挙がった投手達は高校時代以上の輝きを放っていないという点が共通してしまっている。数年後、吉田が痛々しい姿ではなく今よりもさらにスケールアップした姿を見せてくれることを願うばかりだ。