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二塁打3本の猛打賞でも成績が下がる?ウインターリーグで大活躍の吉田正

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

1軍、2軍共に最下位に沈んだオリックス、オープン戦と交流戦も12位で史上初の最下位4冠という不名誉な記録を作ってしまった。得点499点は12球団で唯一500点に届かず、失点635点もリーグ5位と低迷。攻守共に課題満載だが、来季以降への希望の光が全くなかったわけではない。

数少ない明るい話題はルーキーの吉田正。怪我で戦列を離れ、出場は63試合にとどまったものの体を目一杯使ったフルスイングから札幌ドームで逆方向に叩き込むなど2桁本塁打を放ち、今季最終戦では4番に抜擢された。

そんな将来の主軸候補は現在、台湾で行われているアジアウインターリーグにウエスタン選抜の一員として参加しているが、若手有望選手が集まるこの大会において1人だけ別次元の成績を残している。

最初の目覚ましい活躍は2戦目の韓国プロ野球選抜との試合。先制の適時二塁打を含む5打数5安打と1四球で6打席全て出塁し、アジアのライバルにその打棒を見せつけた。その後も吉田のバットは快音を残し続け、打率.521、5本塁打、23打点、OPS1.588という桁外れの成績で最優秀打者賞を受賞。リーグ戦終盤には高過ぎる打率が災いし、複数安打を放った試合で打率が下がるという状態が続いていた。

昨日行われた中華台北トレーニングチームとのプレーオフ準決勝では第1打席に死球を受け出塁すると、続く近藤(中日)の先制3点本塁打でホームを踏む。この後、先発の島袋(ソフトバンク)が崩れ9点を失うが、3回二死から吉田の死球をきっかけに3点を返し、先頭打者として安打を放った5回は相手のワイルドピッチで生還を果たす。7回にも安打とワイルドピッチで二塁に進むと宗(オリックス)の適時打を呼び込み追い上げに貢献。そして極めつけは2点ビハインドで迎えた8回の第5打席、一死一、二塁のチャンスで打席に立つと右中間へ逆転アーチを描く。死球、死球、安打、安打、本塁打で5得点。この活躍で出塁率は.638まで上がり長打率は1.039。ついに1.000を超えた。これは1打数で1塁打以上を獲得しているということであり、今後は単打を打つ度にこの数値が1.000に近づく、つまり下がってしまう。.549という高打率も相まって吉田正が成績を向上させるためには、最も出にくい三塁打やイースタン選抜投手陣が四死球を連発するという展開を除けば現実的なラインとして決勝で少なくとも二塁打2本か本塁打を含む4打数3安打以上の好結果を残さねばならない。仮に5打数3安打、しかも全て二塁打以上だったとしても恐ろしいことに出塁率が下がる。あまりにも上げ過ぎたハードルは本人ですら越えることが容易ではない。これだけの逸材がまだ23歳、オリックスの未来は明るいぞ。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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