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1番・鳥谷から始まる2015年版猛虎打線、福留の打棒が復活すれば全てがうまくいく

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年
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理想的な打順の組み方とは?

打順の組み合わせは投手を除く8番までで考えても40320通りにも及ぶ。基本的な考え方はいい打者にはより多くの、なるべくランナーを置いた場面で打席を回したい。そのため1、2番に出塁率の高い打者、3、4番に強打者を置くというのは単純に強い。今季の阪神は鳥谷が先陣を切る布陣で開幕を迎えるようだ。出塁率の高い生え抜きのキャプテンということもあり、打線を引っ張る存在としてうってつけ。一般的な打順のイメージとしては

1番は足が速くて出塁率が高い選手

2番は小技がうまくてしぶとい選手

3番は総合的な打撃力の高い選手

4番は試合を決める一発の打てる選手

5番は4番に次ぐ長打力と勝負強さを併せ持つ選手

こんなところだろうか。また、最強打者の前後にも強打者を置く、最強打者と最弱打者を離すというのもポイント。日本では最強打者は4番に据えるイメージが強いがメジャーでは3番を打つことが多いようだ。セイバーメトリクスの始祖、ビル・ジェームズは2番最強説を唱えたとも言われている。DHのあるパリーグと違い投手も打席に立つセリーグでは打線に1つ大きな穴が空く。なるべく多くの打席を回すためにと1番や2番に最強打者を置くと9番・投手が不利に働くこともある。2番最強説の打線を組むならば8番・投手は大いにアリだ。

トラの4番・ゴメスの強み

何を基準に最強打者とするかは人によって意見が分かれるところ。OPSだけで見るならばゴメスよりマートンの方が高いが、二死一塁で打席に迎えた時、怖いのはマートンよりゴメスだろう。IsoP(長打率−打率で計算され純粋なパワーを示す)は.209でチームトップ、セリーグ5位の数字を残している。

昨季、阪神と乱打戦を繰り返したヤクルトの捕手・中村は阪神打線について「打たれるイメージしか無いですね。特に中軸、両外国人じゃないですか」とマートンと共にゴメスを要注意人物に指定。その特徴については「打点つけるだけあってランナー還すところではきっちり仕事してくるいいバッター。ある程度選球眼あるんで、いかにムキにさせられるかですね」と話す。ゴメスは変化球を苦手とする弱点は抱えているが、ストライクからボールゾーンに逃げる変化球の見極めは出来る。昨季は開幕から27試合連続出塁を記録するなど、三振も少なくはないがいい意味で「当たればでかいが・・・」という前評判を覆した。ゴメスが日本に対応出来た理由についてオマリーコーチは「いろいろ理由はある。長いシーズン、いい試合と悪い試合の波が大きいのはダメ。ゴメスは調子の波が少ない。それと日本で5年やっているマートンの助けが大きい。毎日、マートン、オマリーと勉強ネ」と明かす。日本の配球について学ぶ姿勢も好結果につながった。

福留の打棒が復活すれば全てがうまくいく

ゴメスを4番に、鳥谷を1番に。これは和田監督の中で決定事項のようだ。更に5番にマートン、2番に上本も確実とまでは言えないがかなり有力。これで上位打線は年間通しての成績が見込める選手で5分の4が埋まった。空席になっているのは打線の要である3番のみ。オープン戦の並びを見る限り最も近い位置にいるのが西岡だ。ただ渡米前の3年間のOPSは.820、.787、.904の数字を残しているが、日本復帰後の2年間は.729、.724とクリーンアップとしてはやや物足りない。ゴメスを頂点とした山を作るためには少なくとも上本以上の長打力、打撃力の持ち主が理想的。また、鳥谷、上本は共に走塁に対する意識が実に高く、右方向への打球であれば一塁から2つ先の塁が狙える。特に左中間、右中間の膨らみが大きい甲子園ならば、二塁打で一塁からの長駆生還が可能。一発の出にくい球場を本拠地としているからこそ和田監督は足を活かした攻めに言及することが多い。打球方向を見てみると、福留は打球の半分近くがライト方向に飛ぶプルヒッター。今季初のオープン戦出場となった3月6日の西武戦では2打数1安打1打点と結果を残し、放った安打はやはりライト前へのものだった。打順の組み合わせについてコンピューターを使ったシミュレーションもあるが、走力という部分は盗塁面でしか反映されてないのではないか。この点も考慮すれば昨季の9月以降に見せた打棒が復活すればという条件はつくが、猛虎打線2015年版の3番打者として福留以上の適任者はいない。昨季、8月までの福留に目立ったのが2ボールや3ボールなど打者圧倒的有利なカウントからの凡退。狙い球を打ちに行って捉え切れなかったのだから感覚とのズレがあったのだろう。それでも9月以降は全盛期を思わせる活躍を見せた。打率や本塁打数もそうだが打席の内容も調子を見極める重要な判断材料だ。西武戦後に「もう少し精度上げて捉えられるように。打席の中でのアプローチをしっかり調整していけたら」と話した福留が3番にはまれば左、右、左、右とジグザグ打線が組め、ゴメスに1本が出なくてもその次には和田監督が「リーグ1のヒットマン」と厚い信頼を寄せるマートンが控える。この鳥谷、上本、福留、ゴメス、マートンの並びは上記に挙げた打線のイメージ

1番は足が速くて出塁率が高い選手

2番は小技がうまくてしぶとい選手

3番は総合的な打撃力の高い選手

4番は試合を決める一発の打てる選手

5番は4番に次ぐ長打力と勝負強さを併せ持つ選手

にも見事に一致し、主観的にも客観的にも理想的な打線となる。もちろん現場を指揮する監督としては、福留が復活した場合、しなかった場合の両方の最善策を用意しているはずだが、最終的にどんな決断を下すのだろうか。答えは3週間後の京セラドームの電光掲示板に示される。

野球の常識を覆す?バントをしない2番の強打者

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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