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阪神と広島が抱える不安材料。鳥谷の守備範囲とミコライオ不在のリリーフ陣

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

投手力なら阪神有利

阪神は先発3柱が広島に対して相性がいい。メッセンジャーは甲子園の広島戦で2戦2勝、16イニング無失点。能見は2勝1敗で防御率1.71。藤浪は防御率3.49と抜群にいいとまでは言えないが打線の援護もあり6勝1敗、今季挙げた11勝の内半分以上を稼いでいるお得意様である。そしてリードして最終回を迎えればセーブ王・呉昇桓が控える。チームトップの64試合に登板しながら防御率は1.76。9、10月は何度もイニングまたぎを強いられるもほぼ完璧に仕事をこなした。終盤に福原がピンチを招くことが増えたのは気がかりだが、総合的に見て投手力での優位は間違いない。

鳥谷の守備範囲は過去最低?

野手陣で心配されるのは攻守の要、鳥谷の状態。交流戦終盤には右膝を痛め、9月には試合前の全体練習に姿を見せないことが多かった。首脳陣は「室内で打ち込んでいる」と口を揃えたが実際のところはどうか。9月は打率.255で長打は2塁打3本だけ。本塁打に至っては、8月17日のDeNA戦を最後に出ていない。選球眼や出塁率は高いパフォーマンスを維持しているが打席の中でどこまで強く踏み込めるか。また、打撃以上に気がかりなのが守備。鳥谷なら追いつけるのでは、と思われた打球が外野に抜ける場面が目立つ。もちろんヒット性の当たりには違いないし捕ればファインプレー。高い守備力を誇る鳥谷だからこその期待の裏返しではあるが無死1塁と1死走者無しでは雲泥の差がある。ショートでの守備率.991は12球団トップ。ただし今季の捕殺数(主にゴロをアウトにした回数)は363で、これは例年より100近く少ない。打球処理の際に負傷した影響で指名打者や代打での出場もありショートでの出場試合数が136試合だった2011年でも捕殺数は389。レギュラー定着後唯一400を切るシーズンとなったが、今季は144試合フルイニング出場を果たしながらその数字を下回る。3番・ショートでキャプテンを務める中心選手だけに万全の状態でCSに臨みたい。

広島は連敗を避ければ丸が叩く

上記の通り広島は苦手とするピッチャーが阪神に多く、多くの勝ち星を献上している。特に能見に対しては21イニングで4得点。しかもその内訳はソロ本塁打が3本でタイムリーはわずかに1本だけ。対戦打率は菊池が.111(9打数1安打)、丸が.000(10打数0安打)とチームの核が完全に抑えられている。メッセンジャー、能見に対して連勝出来れば言うことなしだが、最悪でも1勝1敗で3戦目に持ち込めば藤浪に対して丸が打率.583(24打数14安打)と好相性。ペナントレースで最後の対戦となった9月26日の試合前には「20打席ぐらいなんで相性とかわからないですよ。今日4打席抑えられるかもしれないですし」と話していたが、先制タイムリーツーベースを含む2安打1四球と大活躍。他にも藤浪に対しては松山が.421(19打数8安打)、キラが.333(15打数5安打)、天谷が.313(16打数5安打)と得意にしている。

不安は守護神不在のリリーフ陣

投手陣ではエース・前田が9月に37イニングを投げ8失点、月間防御率1.95と調子を上げている。昨季は阪神に対して45イニング2失点と無敵を誇った実績もあり、CSファーストステージ第1戦でも7回1失点と好投した。CSの本拠地開催が懸かった巨人とのシーズン最終戦も任された大黒柱の存在は頼もしい限りだ。反面、不安を抱えるのがリリーフ陣。抑えのミコライオは左足に違和感を訴え登録抹消。右肩痛で8月10日を最後に1軍マウンドから遠ざかっている一岡はCSに間に合うとしてもぶっつけ本番状態。セリーグ相手に防御率0.00を誇る投球がどこまで戻っているかは未知数な部分が多い。主力のリリーフ陣の中で9月の防御率が3.00を切るのは中崎だけで、中田の11.25、永川の4.15など大きな数字が並ぶ。先発が長い回を投げる展開に持ち込めるか。昨季のCSでは阪神の球団職員が「2000年代前半のジャイアンツ戦以来」と驚きの声を上げるほど三塁側をカープファンが埋め尽くし、甲子園を赤く染めた。熱いファンの声援に応えたい。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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