監督の手腕を数値化する。落合、野村両氏の名将ぶりと注目すべきは谷繁新監督

セイバーメトリクスにはチームの得失点から勝率を予想する指標がある。

(総得点の2乗)÷(総得点の2乗+総失点の2乗)

式がピタゴラスの定理に似ていることから「ピタゴラス勝率」と呼ばれている。それほど難しくない計算式ながら実際の勝利数とピタゴラス勝率による勝利数との差は多くの球団が±3以内に収まる。(引き分けは試合数から除外して計算)

+3・・・西武、中日

+2・・・日本ハム

+1・・・楽天

-1・・・オリックス、DeNA、ヤクルト

-2・・・カープ

-3・・・阪神

ピタゴラス勝率に比べて多くの勝利数を挙げたのが+4のロッテと+5の巨人。ロッテはこの上積みが無ければCS進出は果たせなかっただろうし、豊富な戦力を誇る巨人にしてもここまで独走しての優勝は無かっただろう。2位の阪神に12.5ゲーム差をつけたわけが、もしピタゴラス勝率通りの展開で進んでいればゲーム差は4.5。+5と-3が逆になっていれば優勝の行方はいよいよわからない。開幕前から巨人がダントツの優勝候補で唯一対抗できるとしたら阪神、との予想が多かったがあながち間違いではなかった。昨季も-6だった和田監督、来季こそは頼んまっせ!

ソフトバンクは優勝に値する戦力を持っていた

今季、最も特異な成績となったのがソフトバンク。点取り合戦のスポーツにおいて勝敗に直に影響するのが得点と失点。当然、得点が増えれば勝率は上がり、失点が増えれば勝率は下がる。ソフトバンクの今季の総得点は660で総失点は562。得失点差で100近いプラスを出しながら、73勝69敗2分で貯金はわずか4。投打がかみ合わなかったことが一目でわかる。ピタゴラス勝率との差異はなんと-9。全チームピタゴラス勝率通りなら楽天を上回り優勝している。報道によれば今オフも大型補強の準備を進めているらしいが、「戦力」よりも「戦略・戦術」の見直しに力を注いだ方がいいのかもしれない。

監督の手腕を表す指標になるかも

就任1年目でリーグ優勝・・

◯◯を見出した名監督・・

日本一◯◯度の名将・・・

選手と違い監督の手腕を数値化することは難しい。ただもし、実際の勝利数がピタゴラス勝率による勝利数を超えていれば「采配の巧みな監督」と呼べるのではないだろうか。もちろん、得点を増やすための采配、失点を減らすための采配があればこそだが、少なくともチームのマネジメント力、やりくりのうまさは数字として測れそうである。

過去に優れた監督は何人もいたに違いないが、25歳の筆者にとって名監督と聞けば思い浮かぶのは落合監督、野村監督の2人。

中日の黄金期を築いた落合監督

落合監督が中日で指揮を執ったのは2004年~2011年までの8年間。各年度の実際の勝利数とピタゴラス勝率による勝利数との差は

+4、±0、-4、-1、+4、-3、+6、+7

戦力以上に大きく白星を重ねたのが2010年と2011年。2年間ともシーズンでの得失点差はわずかにプラスという程度にも関わらず、144試合の戦いで15以上の貯金を積み上げた。リーグ優勝4回、8年間全てAクラスという輝かしい実績を残すと共に、接戦にしぶとく勝てる試合は絶対に落とさない、という落合色をチームに浸透させ常勝軍団を築いたことが分かる。

さすがの野村監督でも兼任監督は負担が大きい?

野村監督は3球団で専任監督を務めた。

ヤクルト 1990年~1998年

+2、-1、±0、-5、+9、+5、-1、-4、+6

阪神 1999年~2001年

-1、+4、+5

楽天 2006年~2009年

+4、+7、-8、+7

ヤクルトではトータル+11

阪神ではトータル+8

楽天ではトータル+10

戦力的に劣る球団を指揮しながら「葛西、遠山リレー」などが印象的な“弱者の戦法”で戦った成果は、全ての球団でプラスをもたらした。

ただし選手兼任監督であった南海では

-3、-2、+2、+3、-3、-10、-3、±0

トータルは-16

この経験が後の名将を生み出すことになったのだろうが、さすがの野村監督でも兼任監督は負担が大きかったようだ。

落合色を受け継ぎ、野村監督と同じ道を歩む谷繁新監督

来季注目したいのは、中日の谷繁新監督。

GMには落合氏が就任し、野村氏と同じく兼任監督となるなど不思議な縁を感じさせる。就任会見でも「0で抑えれば負けることはない」と語り、捕手というポジション、中日のチームカラーからも守り勝つ野球を目指す。就任1年目、どんな采配を見せてくれるのだろうか。今から数年後、名監督と言えば誰?と聞かれれば真っ先に名前が挙がり、WBCでも日本代表の指揮を執る名将になっているかもしれない。