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いよいよ開幕!FIBAワールドカップ予選の全貌――W杯と五輪は直結。大改革したW杯のシステムとは

小永吉陽子Basketball Writer
いよいよ、東京五輪に直結したワールドカップ予選が始まる(写真/小永吉陽子)

ワールドカップ出場を目指し、かつてない過酷な旅が今、始まろうとしている。

2019年に中国で開催される『FIBAバスケットボールワールドカップ2019』の出場権をかけたアジア地区1次予選が、11月24日のフィリピン戦(東京・駒沢体育館)からスタートする。1次予選3回・2次予選3回、計6回のウインドウ(会期)を、2017年11月から2019年2月まで、1年3ヶ月かけて戦う長旅の始まりだ。FIBA(国際バスケットボール連盟)は、来たる2019年のワールドカップと予選の方式を大幅に改革した。これまでと何が変わるのか、新方式を説明しながら、ワールドカップの全貌を明らかにする。

2017年はFIBAの新カレンダー改革元年

FIBAは世界一を競うワールドカップをバスケットボールのメイン大会とする意向で、2019年大会より拡大することを決定した。2010年まで『世界選手権』だった名称は2014年から『ワールドカップ』となり、2019年大会からは出場国が24ヶ国から32ヶ国へと拡大する。もともと2018年に開催だったのを、サッカーW杯と同年開催であることから、話題が分散することを避けるために、会期を1年遅らせた。また予選をホーム&アウェーの方式に変更。各国のホームで予選を開催することにより、自国の代表を知り、応援する文化が生まれ、バスケットボールの広がりを期待するシステムを作ったのだ。

このようなシステム変更により、FIBAの大会は4年に一度のワールドカップを軸に回っていくことになる。そのための改革元年が2017年であり、今年度からFIBAのフォーマットは大きく変化している。その詳細を説明していこう。

まずは、アジアカップの変更点から。女子は今年7月、男子は9月に『アジアカップ』を開催したが、この大会は2015年まで『アジア選手権』の名称で行われた大会を引き継いでいるものだ。アジア選手権はこれまで2年に一度開催され、アジア王者を決定するとともに、交互にオリンピックとワールドカップ予選を兼ねていたが、2017年からは4年に一度の『アジアカップ』となり、大陸王者を決定するのみの大会となった。5大陸の大会総称は『コンチネンタルカップ』で、そのアジア版が『アジアカップ』というわけだ。

そして今年度より、アジア予選にオセアニア(オーストラリアとニュージーランド)が加わったが、その理由をFIBA事務総長のパトリック・バウマンは「アジアは競争力をつけることが必要。オセアニアのような世界レベルの国と戦えば、自分たちの位置を測定する機会になる」と2014年の来日時に語っている。

※女子のアジアカップは2年に一度の開催で、交互にワールドカップと五輪予選を兼ねる大会のまま変更なし。また男子のアジアカップについては、出場権をかけた予選が開始されるが、そのシステムはここでは割愛。

ワールドカップの出場枠はアジア3枠→7枠に増加

次に、大きく変わるワールドカップの大会方式と予選について説明したい。

出場枠の拡大に伴い、ワールドカップのアジア枠は『7枠』となり、これまでの『3枠』から大幅に拡大した。2019年ワールドカップ開催地である中国を除く7枠なので、出場の可能性は大きく広がったといえる。とはいえ、オセアニアを加えた中での7枠であり、日本は2015年のアジア選手権4位の成績を除いてはアジアで長く低迷している(※)。この現状を考えれば、険しい道のりに変わりはない。

予選の方式は、1次ラウンドは16チームを4チーム×4グループにわけ、ホームとアウェーで同一チームと1試合ずつ戦い、各グループの上位3チームが2次ラウンドに進出。2次ラウンドは12チームを6チーム×2グループにわけ、再びホームとアウェーで1試合ずつ戦う。各グループ上位3チーム、計6チームに入ればワールドカップ出場が決定。最後の1枠は各グループ4位チームのうち成績上位チームに与えられる。

日本はグループBに振り分けられ、アジアカップ優勝のオーストラリア、強豪フィリピン、東アジアのライバルであるチャイニーズ・タイペイと戦う。このうち、1次予選では上位3チームに入れば2次ラウンドに進出できる。2次ラウンドではグループDのイラン、カタール、カザフスタン、イラクのうち、上位3チームと対戦することになる。

※日本の近年のアジア選手権の成績=2001年6位、2003年6位、2005年5位、2007年8位、2009年10位、2011年7位、2013年9位、2015年4位、2017年ベスト8決定戦で敗退

オリンピック大陸予選は廃止。ワールドカップとオリンピックは直結している

2019年ワールドカップには、さらに大きな変更点がある。これまではアジア選手権の優勝国が五輪出場権を得て、3~4位までが世界最終予選(OQT)に回った。だが、2019年のワールドカップからは、ワールドカップそのものが、オリンピックの出場権をかけた大会となるのだ。ワールドカップにおいて各大陸の最高順位、または上位2チームがオリンピックの出場権を得ることになる。

内訳は、アジア、アフリカ、オセアニアは最上位国が五輪切符を獲得し、アメリカとヨーロッパは上位2位までが獲得する。たとえば、日本がワールドカップで15位だったとしても、それがアジアの中で最上位であれば、オリンピックに出場できる仕組みだ。またワールドカップで五輪出場権を獲得できなかった国は、前回同様、24チーム間にて世界最終予選を行う。(ワールドカップで獲得する五輪出場枠については、オセアニアはアジア枠ではなくオセアニア枠)

≪アジアカップ・ワールドカップ・オリンピック出場権の変更点まとめ≫

●2年に一度のアジア選手権は4年に一度のアジアカップとなり、大陸王者を決める大会へ

●W杯の出場国は24→32に拡大

●アジアからの2019年W杯出場枠は中国を除いた7ヶ国

●W杯予選は大陸選手権(アジア選手権)方式から、ホーム&アウェー方式へ変更

●W杯1次予選は2017年11月~2018年7月まで6回。2次予選は2018年9月~2019年2月まで3回の会期で開催

●W杯はオリンピック出場権獲得に直結している

●オセアニアはアジア地区に加わって予選を行うが、オリンピック出場枠はアジア・オセアニアと分ける

●W杯で得られるオリンピック出場権は以下の通り

アメリカ2、ヨーロッパ2、アジア1、オセアニア1、アフリカ1=計7チーム。残り4チームを世界最終予選で争い、開催地枠が認められない場合は世界最終予選枠が5枠となる

●世界最終予選の出場枠は、W杯で五輪出場権を獲得したチーム以外の上位16チーム+各大陸から推薦の8チーム=計24チーム(この場合、オセアニアはアジア枠)

日本はフィリピン、オーストラリア、チャイニーズ・タイペイと1次予選を戦う(写真/小永吉陽子)
日本はフィリピン、オーストラリア、チャイニーズ・タイペイと1次予選を戦う(写真/小永吉陽子)

日本は五輪開催地枠が保証されていない。だからW杯に出なければならない

バスケットボールはオリンピック開催地枠が保証されていない競技である。したがって、日本が出場できるか否かは、オリンピック前年のFIBAセントラルボード(中央理事会)で決定される。その基準は、開催地枠が廃止されたロンドン大会(2012年)から考察すると、競技の実力はもちろんのこと、計画性と将来性を持って強化を進めているか、国の統括組織である協会の財政面やガバナンス(統括能力)についてなど、総合評価によって決定されている。

今年6月に行われた東アジア選手権の記者発表にて、日本協会の三屋裕子会長は「五輪開催地枠を得るために、FIBAからはワールドカップのベスト16入りの課題が与えられている」と発言している。現状、ベスト16はあまりにも高い目標だ。その詳細を東野智弥技術委員長に聞くと、「私たちはFIBAから制裁を受けた国で、まだタスクフォース(改革チーム)のコントロール下にいます。そのメンバーに言われたのは、ワールドカップでベスト16になれ、というものではなく、ベスト16の水準でバスケができていることが大事と言われています。またアンダーカテゴリーを含めて、代表が成長していくことも必要だと言われています」との説明があった。まずは出場しなければ始まらないし、成長具合も評価してもらえない。そして、2006年にホスト国として出場して以来、ワールドカップの舞台から遠ざかっている日本としては、世界舞台を経験することはとても重要なことである。

日本は2014~2015年にかけて、FIBAから国際活動停止という制裁を受けた。理念が違う2つのトップリーグが存在する『リーグ分裂問題』や『代表強化』が改善されず、これらを統括する『日本協会のガバナンスが欠如』していたからだ。また日本としても、東京五輪を迎えるためにも、FIBAが新カレンダーをスタートさせる2017年の前には、強化に直結するプロリーグを立ち上げる必要があった。東京五輪を開催する国だからこそ、改革のためにFIBAも制裁に踏み切ったのだ。そして立ち上がったのがBリーグであり、プロリーグで戦う選手たちの意識は向上してきている。

ワールドカップの切符をつかむことは、東京五輪のためにも、Bリーグの発展のためにも、日本のバスケ界の将来のためにも使命である。1年3ヶ月かけた過酷な戦いが、今始まる。

≪FIBAによる説明動画(英語)≫

◆ワールドカップアジア地区予選の仕組み

◆2017年からのFIBAの新システム・ワールドカップアジア地区予選の仕組み

◆ワールドカップ2019の大会方式と東京五輪出場枠

Basketball Writer

「月刊バスケットボール」「HOOP」のバスケ専門誌編集部を経てフリーのスポーツライターに。ここではバスケの現場で起きていることやバスケに携わる人々を丁寧に綴る場とし、興味を持っているアジアバスケのレポートも発表したい。国内では旧姓で活動、FIBA国際大会ではパスポート名「YOKO TAKEDA」で活動。

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