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久保建英に立ちふさがる選手とは?リーガエスパニョーラ前半ベストイレブン

小宮良之スポーツライター・小説家
ゴールを祝福するジョアン・フェリックスとルイス・スアレス(写真:ロイター/アフロ)

リーガは混沌から生まれ変わる

 リーガエスパニョーラは、かつての勢いを失くしている。

 かつて欧州三連覇を果たしたレアル・マドリードだが、クリスティアーノ・ロナウドがイタリアに去ったあたりで、失速は明らかになった。FCバルセロナもシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタの退団で一時代に終わりを告げ、今やリオネル・メッシも退団が囁かれる。アトレティコ・マドリードも、ディエゴ・シメオネの長期政権は世代交代を余儀なくされることになった。

 リーガは大きく舵を取ろうとしている。

 時代の移行期、それは混沌とも言えるが、まさにそこから新しいものは生まれてくるものだろう。

 今シーズン、前半戦が終わった。アトレティコの躍進が目立ったが…。

 混沌のリーガを担うベストイレブンとは――。

絶対的な守護神

GK

ヤン・オブラク(アトレティコ)

 攻撃色が強くなったチームにおいても、守りの基礎になっている。折り返し地点で、わずか10失点。リーガ最少失点で、サモーラ賞(最優秀GK賞)の最有力候補だ。

 GKとして、オブラクは決して隙を見せない。いつもベストのポジションを取り、判断も迅速。バックラインと連携し、極力シュートを打たせず、打たせても正面が多い。

「GKにとって、一番大事なのは集中力だよ。それがなかったら、いくらスピードがあっても、止めるのは難しい。いつもすべてに気を配れるか」

 そう語るオブラクは、GKとしての完璧性を感じさせる。

「父がGKだった。いつも彼のプレーを真似ていたよ。自分よりも、ずっと能力の高い選手だった。町のチームでプレーしていたんだけど、父のようになりたかったんだ」

 子供のころから、GKとして生きてきた。そのセービングは分厚い。試行錯誤を重ねてきた結果だ。

 次点は、ウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)。テア・シュテーゲン(バルサ)、ティボー・クルトワ(マドリード)など、GKは今も世界の名手が集まっている印象だ。

サイドバックは円熟

DF

ヘスス・ナバス(セビージャ)

ジュル・クンデ(セビージャ)

ジョルディ・アルバ(バルサ)

 サイドバックはベテランの好プレーが目立った。

 右のナバスは35歳になるが、今もドリブルとクロスの切れ味は健在。キャプテンとしての貢献度も高い。円熟の境地だ。

 左のアルバは、守備面のミスがないわけではない。しかし、補って余りある攻撃力を見せる。リオネル・メッシとのコンビネーションプレーは、今や神がかりだ。

 センターバックのクンデは、とにかく絶対的なスピードがプレーの軸になっている。カバーリングやインターセプトでの速さはもはやスペクタクル。体のばねを生かした空中戦も圧巻で、弱点がほとんどない。

ジョアン・フェリックスは時代を背負えるか

MF

ジョルダン(セビージャ)

コケ(アトレティコ)

マルコス・ジョレンテ(アトレティコ)

ジョアン・フェリックス(アトレティコ)

 ジョルダンの屈強さは、セビージャの堅牢さにおいて欠かせない。彼がフィルターになって立ちはだかることで、攻守が安定。イヴァン・ラキティッチ、フェルナンドとの連係も抜群だ。

 コケは、ここ数シーズン低調だったが、完全に復活した。3バックのシステムが功を奏したか。前線でスアレスがボールを収められるだけに、ボールプレーの時間が増えたことは大きいだろう。

 ジョレンテは、まさに騎兵。迫力のある機動力で、相手ののど元にナイフを突きつける。二列目のアタッカーだけでなく、トップやウィングバック、サイドハーフなど複数のポジションをこなせるユーティリティ性も魅力だ。

 ジョアン・フェリックスは、まだ真価を発揮しているとは言えない。事実、リーガ先発出場は半分。ただ、チャンピオンズリーグ要員として、勝利をもたらしているプラスアルファでベストイレブンに値する。ボールを持った時の輝きは、リーガで1,2を争うファンタジスタだ。

 次点は、レアル・ソシエダのミケル・オジャルサバルか。

スアレスはMVP級

FW

ルイス・スアレス(アトレティコ)

リオネル・メッシ(バルサ)

カリム・ベンゼマ(マドリード)

 スアレスはオブラクと並び、前半戦のMVPと言える。コロナ陽性などで出遅れたが、ピッチに立った時の存在感は傑出していた。彼が1トップになることで、深みをつけられるし、幅を取れる。それによって、ジョレンテ、フェリックスが躍動し、攻撃力が増したのだ。

 チーム戦術を動かしているだけでなく、前半戦を終えて12得点で、ゴールランキングトップに立つ。

「ストライカーがゴールを続けているときは、それを享受するべきで、活用すべきだろうね。1年間、保つのは難しい。もちろん(ゴールできなくても)最大限、チームに貢献するけどね」

 スアレスは言うが、このままいけばシーズンMVPだろう。

 メッシは、メッシである。クラブは揺れ続けているし、彼自身も年収を公開されるという「事故」に遭った。しかしピッチでは“偽9番”として、ペドリ、アルバと好プレーを見せつつ、一人でも相手を仕留める強さを見せる。

 ベンゼマは、不調のマドリードを救っている。ボールをどう運び、相手に迫るか、攻撃戦術がほとんどなく、ヴィニシウスやアザールなど相棒に恵まれない状況でも、前線で拠点となって前線のプレーメーカーとして貢献。10得点で、スアレス、メッシとゴールランキング上位を争っているのだ。

 やはり、ベテランと言える選手の活躍が目立つ。その点、まだ新時代到来とは言えない。しかし、若手選手も台頭しつつある。例えば、バルサのペドリなどは「新人王」に値するのではないか。言うまでもないが、ヘタフェに新天地を求めた久保建英も活躍が期待される。

 アトレティコがけん引するシーズンになりそうだが、チャンピオンズリーグが再開する2,3月で形勢は変わり得る。

 そこで主役になる選手が、リーガのこれからを担うことになるかもしれない。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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