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2021年、日本サッカーのストライカー不在を解消する選手はいるか?

小宮良之スポーツライター・小説家
鹿島アントラーズの上田綺世(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 2020年は、人々の価値観や生活様式が一変することになった。スポーツもその余波を食らう形になっている。Jリーグでは、無観客から限定して客を入れられるようになったが、行動は制限されたままだ。

 そして2021年も、世界はまだしばらくコロナ禍に苦しむことになるだろう。

 しかし一つの時代の終わりを告げるように、次の時代の到来を感じさせるようなサッカー選手たちが台頭しつつある。2021年、Jリーグで注目すべき選手とは――。前編ではGK、DFの名前を挙げた

https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20210108-00216444/

 今回は後編として、MF、FWを。

MF

田中碧(22歳、川崎フロンターレ)

 田中は戦術的に優れ、ポジション取りが抜群に良い。予測で上回って相手よりも早く動けるし、それを周りにも伝播させられる。2020年は川崎のサッカーを動かし、MVP級の活躍だった。

 例えば横浜F・マリノス戦、相手GKを退場に追い込んだロングパスは垂涎だったと言える。相手のパスを味方が自陣で奪った後、左足のダイレクトで裏へ、測ったようなパスを出している。ビジョン、キック、判断、大胆さ、そのワンプレーにボランチとしての資質が出ていた。背走する形になった相手センターバックが判断を誤って、連係のミスを引き起こしたのだ。

 局面で相手と入れ替わるようなパワー、スピードもあり、攻守両面で弱点がなく、どのゾーンでもやるべきことを心得ている。周りを生かすのも得意で、インテリジェンスを感じさせ、それがアンカー、ボランチ、インサイドハーフなどでプレーできる理由だろう。現在のJリーグで、世界に推せるナンバー1のMFだ。

松尾佑介(23歳、横浜FC)

 松尾はスピードをベースにしているが、そこに依存していない。左サイドを主戦場にして、常に相手との駆け引きで優位なプレーを選択。タイミングを司っている。

 2020年、湘南ベルマーレ戦では、前半15分のプレーにその可能性が集約されていた。トップの選手が下がってボールを受けた瞬間、松尾は入れ替わるように裏に走り、スルーパスを受けている。一気に加速して相手ディフェンスを置き去り、追走する選手を交わし、さらにGKとの駆け引きでゴールネットを揺らした。目を引くのはスピードだが、走り出すタイミングやボールコントロールの質も非常に高いのだ。

 そして松尾はふてぶてしいまでに、久保と同じくすべてのプレーがゴールに結びついている。ゴールに近づくと精度が落ちるドリブラーは多い。レアル・マドリードのヴィニシウス・ジュニオールもそうだが、彼はむしろ質が上がる。

 相手の裏を取る動きはゴールから逆算し、”うまく見えるプレー”に溺れることがない。その点、周りを使うのがうまく、使われるのにも長ける。おかげで、コンビネーションプレーで相手を幻惑させられるのだ。

 戦力的に劣勢を強いられるリーグ戦、肩の故障で離脱を余儀なくされたJ1デビューシーズンにもかかわらず、チーム最多の7得点は立派だ。

中村仁郎(17歳、ガンバ大阪)

 中村は左利きのアタッカー。2019シーズン、J3最終節で見たが、ダイヤモンドの原石だった。

 右サイドからカットインしてのシュートはひとつのパターンだが、その動きは変幻自在で、自らのタイミングで"時間を操れる"。アイデアが多彩で、スピードの変化で相手の逆を取り、プレーの渦を作れる。濃厚にサッカーを感じさせた。

 2020年シーズンは最終節でJ1デビューを果たしたが、10分に満たない出場時間にもかかわらず、2本のシュートを打った。総攻撃に入った展開だったとはいえ、ルーキーがシュートまでいくのは簡単ではない。ボールを受け、簡単に相手を外し、末恐ろしい技量の高さを見せた。ガンバ大阪U―23から次々に有望な若手を送り出している森下仁志監督の指導を受け、生来のセンスを鍛えられている印象か。

 18歳になるシーズン、FC東京時代の久保建英に近いインパクトを見せられるか。楽しみな逸材だ。

FW上田綺世(22歳、鹿島アントラーズ)

 2020年シーズン後半、上田はダイナミックなゴールシーンを立て続けに演出している。エヴェラウドとのコンビで、二けたにのせた。とにかく、恵まれた体躯を生かした豪快さが際立った。

 しかしながら、そのプレーの根源にあるのは、細心さだろう。思索的で理論的だが、行動原理は本能的というのか。考え尽くしたうえで、感覚的なものを出せているのだ。

「僕はシュートを打つとき、選択肢を消去法で消していきます」

 法政大の学生としての最後のインタビューで、上田は語っていた。

「先(の映像)を見るというか。例えば左サイドの背後に出たボールで、GKと1対1に近い状態になるとします。僕の選択肢はだいたい4つ。ファーにゴロ、ニア、ループ、交わす。GKを見たとき、瞬間的にニアは当たる、ループできない・・・バババッと写真が頭の中に4枚あって弾かれるんです。たぶん、0.2秒くらいのなかで。それが自動的に起きればいいんですけど、ファーかな、ダメかなと迷うと判断が遅れる」

 彼は思考力を深める。考え抜くことでたどり着ける境地がある。その点、ポストプレーやサイドに流れるプレーなどのディテールでも抜きん出ている。

 上田のダイナミックなゴールは、日本サッカーの希望だ。

 8人の名前を挙げたが、DF渡辺剛(FC東京)、MF坂元達裕、FW西川潤(セレッソ大阪)も有望な存在だろう。また、ベストイレブンに選ばれた三苫薫は言及しなかったが、成熟が楽しみ。新鋭の台頭は、日本サッカーの明るさと言える。

 2021年は決して暗くない。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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