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メッシ・ロナウド時代の転換に挑む! 若手で世界一有望なGK、SB、CBは?

小宮良之スポーツライター・小説家
2019年、FIFAの年間ベストイレブン(写真:REX/アフロ)

新たな時代の旗を振るのは誰か

 2016、2017、2018年と欧州三連覇を遂げたレアル・マドリードだが、当時の主力は今も半数以上が残っている。堅牢さは失っていない。ジネディーヌ・ジダン監督も戻ってきた。

 しかし、クリスティアーノ・ロナウド移籍の穴は大きい。そして深刻なのは、主力のほとんどが三十代前後になっている点だろう。世代交代は急務だ。

 今のマドリードは、サッカー界で一つの時代が終わり、新しい時代が始まろうとしている象徴とも言える。

 新時代の旗を振るのは誰になるのか。各ポジションに、ルーキーが台頭。その実力とは――。

 まずはゴールキーパー、サイドバック、センターバック部門だ(年齢のくくりを、ヨーロッパでユース年代最後の戦いがあるU―21とした)

ドンナルンマは飛び抜けている

〇GK

 イタリア代表ジャンルイジ・ドンナルンマ(ACミラン、21歳)は、トップランナーと言える。イケル・カシージャス、ジャンルイジ・ブッフォンを継ぐ者にふさわしい。弱点のないGKと言える。高さ、速さ、反応の鋭さ、タイミング、ステップ、度胸。不用意には動かず、どの資質も持ち合わせている。

 ドンナルンマは、16歳8か月でセリエAデビュー。今年でレギュラーGKになって5年目になる。若くしてこれだけの場数を踏んでいるGKはいない。イタリアはワルテル・ゼンガ、ジャンルカ・パリュウカ、アンジェロ・ペルッツィ、そしてジャンルイジ・ブッフォンと世界的GKを生み出してきたが、その系譜を継ぐ若者だ。

 22歳だけに除外したが、スペインU―23代表ウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)も実力者。過去のスペイン代表GKの約半数はバスク人GKで、“名産地”である。クラブはケパ・アリサバラガを大金でチェルシーに売り払ったが、控えに信頼できる若手がいたからだった。シモンは出足が鋭く、反応が速い。リーガでも屈指のセービング率を誇る、将来のスペイン代表正GK候補だ。

サイドバックはブラジルの専売特許

〇サイドバック

 ブラジル代表ロディ(アトレティコ・マドリード、21歳)が次世代を背負う筆頭だろう。

 サイドバックのポジションは、ブラジルが人材を輩出してきた。右はカフー、ジョルジーニョ、ダニエウ・アウベス、左はレオナルド、ロベルト・カルロス、マルセロなど。サイドで戦いを有利に進め、プレーメーカー的な資質も持ち合わせる。ボールを引き出し起点になる一方、守備では相手に防御線を越えさせない。ボール技術は飛び抜け、ラストパス、もしくはフィニッシュに絡める――。

 そんなブラジル人サイドバックの血筋が、ロディだろう。今シーズン、欧州に渡ってきて、当初は適応に戸惑った。しかし今年に入って、順応してきている。CLラウンド16では欧州王者リバプールを相手に渡り合い、対面のモハメド・サラーに力を出し切らせていない。その上、左サイドからチャンスを巧みに作った。止めて蹴る、の基本に優れ、どんな体勢からでもぴたりと味方に合わせられる。キックのバリエーションと精度は世界トップレベルだ。

 次点は、カナダ代表アルフォンソ・デイビス(バイエルン・ミュンヘン、20歳)か。スペインU―23代表マルク・ククレジャ(ヘタフェ、21歳)も、大化けする可能性が。バルサの下部組織育ちで、そのスキルは抜きん出ている。エイバル、ヘタフェと渡り歩き、逞しくなった。バルサの次世代左サイドバックとして戻すべきでは…。

 右に関しては、イングランド代表トレント・アレクサンダー・アーノルド(リバプール、21歳)が抜けている。昨シーズンは、リバプールの欧州戴冠に貢献。攻撃的なセンスを、チームに落とし込み、アシストの数は際立っている。今シーズンも、アトレティコとの一戦でも、チームは敗れたとはいえ、八面六臂の活躍だった。

経験を要するポジション

〇センターバック

 このポジションは、GKの次に老練さが求められる。それだけに年少で頭角を現す選手が、他のポジションよりも少ない。現在世界最高センターバックと言えるフィルジル・ファン・ダイクも二十代後半に入って、真価を発揮するようになった。

 例えば、レアル・マドリード育ちのヘスス・バジェホは“フェルナンド・イエロ二世”と期待されていたが、思うような成長カーブが描けていない。スペイン2部のサラゴサ、ドイツ、フランクフルト(長谷部誠のチームメイトだった)での武者修行は及第点だったが、マドリードに復帰後は出場機会に恵まれず。今シーズン前半はプレミアリーグに期限付き移籍も鳴かず飛ばず、今年からグラナダでプレーしている。

 一時的に勢いで出てきても、長く続かなかったりして、スランプに入ると抜け出せない。バルサのフランス代表サミュエル・ウンティティも世界最高センターバックの領域に入りかけたが、ケガなどもあったにせよ、全く精彩を欠いている。今や放出候補の一人だ。

セルヒオ・ラモス、ピケの座を奪うのは

 その点、若手で刮目すべきは、フランス代表ダヨ・ウパメカノ(ライプツィヒ、21歳)だろう。

 ウパメカノは、現代センターバックに必須と言われるスプリント力とタイミングを備える。とにかく、走り負けない。足を入れる感覚にも優れ、体幹の強さで長い足を出し、簡単にボールをつつき出せる。また、ボールを持ち出すコースの読みをほとんど外さない。こぼれ球も含め、一瞬の反応の速さは必見。レアル・マドリードを最右翼に、欧州の有力クラブが食指を動かすのも当然だ。

 もう一人楽しみなのが、ウルグアイ代表ロナウド・アラウホ(バルサ、21歳)か。現在の主戦場はバルサBだが、トップデビューも飾っている。体格に優れ、スピードも抜群、ウルグアイ人らしく覇気も十分。バルサの下部組織でボールプレー技術を高め、臨戦態勢は整った。憧れのセンターバックはピケだ。

(続く)

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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