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森保JAPANは万全と言えるか?鎌田大地は初招集、香川真司は復帰

小宮良之スポーツライター・小説家
ロシアW杯ベルギー戦以来、代表に復帰する香川真司(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 3月14日、サッカー日本代表を率いる森保一監督は、同月22,26日のコロンビア、ボリビア戦に挑むメンバーを発表している。畠中槙之輔(横浜F・マリノス)、安西幸輝(鹿島アントラーズ)、鎌田大地(シントトロイデン)、鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)の4人が初招集となった。さらに、ロシアW杯以来、香川真司(ベジクタシュ)が復帰した。

 新陳代謝を図ったメンバーと言えるだろう。

森保JAPANは万全と言えるか

 ロシアワールドカップ後に発足した森保JAPANは、順調なスタートを切っている。

 コスタリカ、パナマ、ウルグアイというロシアW杯出場国を相手に破竹の3連勝。とりわけ強豪ウルグアイと撃ち合い、4-3で勝利した試合は、中島翔哉、南野拓実、堂安律ら若手の台頭もあって、”新時代到来”の予感があった。その後もベネズエラに引き分けたあと、キルギスにも勝利している。

 そして今年1月のアジアカップでも、グループステージではトルクメニスタン、オマーン、ウズベキスタンに3連勝。ノックアウトステージでも、サウジアラビア、ベトナムに連勝したあと、準決勝では強豪イランを3-0で下した。大迫勇也を中心にした攻撃は、破壊力抜群だった。

 ところが、決勝では伏兵カタールに力負けしている。ボランチとして攻守の舵を取っていた遠藤航の欠場が響いたのはあるだろう。とことんボランチの背後を取られ、後手を踏んでいた。守備が不安定だったことで、攻撃もリズムを創り出すことができなかった。

 森保JAPANは万全と言えるのか?

出足が良かった理由

 なぜ、これほどまでに出足が良かったのか?

 まずはそれを少し検証する必要があるだろう。

 過去に日本代表を率いたハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチは、スタートからノッキングしている。

「この選手を代表メンバーに選ぶの?」

 ネガティブな意味での選考が重なって、いたずらに混乱。選んだあとに実力不足がようやく分かって、ぽいっと捨てたり、明らかに結果を叩き出しているにもかかわらず、頑なに選ばない、ということもあった。ハリルホジッチ時代は、最後まで不可解な選考基準だった。

 一方、森保監督は日本人としてJリーグで長く活動し、日本人選手の事情や情報に精通している。どうすれば日本人らしさを集結し、力が引き出せるか、も心得ていた。これは外国人監督にはできない芸当と言える。余談になるが、西野朗監督がたった数ヶ月でロシアW杯に挑めたのも、日本人監督であった部分は大きい。外国人監督には短期間で成果は出せなかったはずだ。

 森保監督が選んだ戦い方は、実に論理的で真っ当。選手の力を引き出した。それが素晴らしい船出につながった。

 しかし中長期で見た場合、外国人監督の良さもある。

日本人監督と外国人監督

 外国人監督は独自の見識を持つ一方、日本人特有のしがらみに縛られない。その結果、なんの気兼ねもなく、ひょいっと選手を登用できる。それがネガティブなサプライズともなるが、瓢箪から駒、ということもある。

 偏見のない外国人ならでは、日本人には見えない才能の迸りを見抜き、大胆に起用できる。これは博打的だし、短期的には成果が出ないことが多い。しかし視点の違いが、選手にはカタルシスになることもあるのだ。

 クラブチームの話だが、ブラジル人監督のクルピはセレッソ大阪時代に香川真司、乾貴士、家長昭博、清武弘嗣、南野などを積極的に登用。その攻撃センスを開花させている。戦術的にチームを鍛える采配には長じていなかったが、選手のポテンシャルを見抜き、送り出す采配は抜群だった。

 そして外国人監督の存在は、有無を言わさずチームに刺激を与える。

<何をするか予測できない>

 その緊張感は、一定の効果を生む。言葉の壁も含めて、甘えた空気にならない。

 もっとも、刺激のさじ加減に難しさがある。ハリルホジッチのようにメンバーをシャッフルすることで刺激的でも、ぼやを広げる場合もあるだろう。しかしアルベルト・ザッケローニのように万事順調でも、固定メンバーが停滞し、倦んでしまうことも起きる。

 ともかく、緩和した集団は世界では戦えない。

健全な緊張

 その点、森保JAPANにも「健全な緊張」が必要だろう。

 最高のスタートを切ったのに間違いはない。中島、南野、堂安の攻撃トリオは進境著しく、遠藤もボランチとして存在感を増し、冨安健洋のようなセンターバックも出てきた。酒井宏樹、長友佑都、吉田麻也、そして大迫ら古参組も健在だ。

 しかし、ベストのチームを模索し続ける必要があるだろう。実際のところ、アジアカップ決勝はカタールに完敗に近かった。新たな変化による悪化の可能性はあっても、停滞は許されない。チームとして殻を破るため、失敗したとしても“血を入れ替え”、強い集団にする必要があるのだ。

<結果を出した選手は選ばれるべき>

 選手たちはそう言って、正当なメンバー選考を求める。例えば、ベルギーで得点を量産しているFW鎌田の招集に文句をいう選手はいないだろう。今回は外れた北川航也、武藤嘉紀は自然と発奮するはずだし、他のFWも同じで、それが正常な競争を生む。

 森保JAPANは強くなる途上にある。 

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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