都民ファーストが反ワクチン脳になりかけている件について

(ペイレスイメージズ/アフロ)

 医療法人理事もやってる駒崎です。新年早々、びっくりすることがありました。

 都民ファーストの政調会長代行の伊藤ゆう都議が、以下のような記事をフェイスブックにアップしていたのです。

筆者撮影
筆者撮影

 ここには反ワクチン団体がどのように議員にロビイングし、議員達を「反ワクチン脳」にコンバージョンしていくのか、よく分かるので、ひとつのケースとして取り上げていきたいと思います。

 なお、医療情報は正確を期すために、ナビタスクリニックの久住英二医師に監修いただきました。

【広い「副反応」の意味】

 伊藤ゆう都議は副反応疑いが「10万人に対し90.6人に及び、約1000人に1人の計算だから危険だ」と言っています。

 この時点で伊藤ゆう都議は、大きな思い違いをしていることが分かります。

 その前に、まずここで、日本でいう「副反応」とは何か、を確認してみましょう。

 普通は、「ワクチンが原因で起きた悪いこと」をイメージされるかと思います。実際に諸外国では、「副反応」とはワクチンが原因で生じた症状のことを意味します。一方で、ワクチン接種後におきた、ワクチンによらない症状や事故は「有害事象」と呼ばれます。

 他方で日本での「副反応」とは、ワクチン接種後に起きた、ワクチンによらない症状も全部含めた有害事象のこと全てを指します。「副反応」という言葉の定義が違うのです。ですから、日本では諸外国より「副反応」が大量に発生することになります。

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 (出典:https://www.pmda.go.jp/safety/reports/hcp/prev-vacc-act/0003.html

 したがって本当は、日本においては「副反応」症例を解析しても意味がなく、そのうちのどれをワクチン由来と認定するか否か、という作業をして、ワクチンによらない症状(紛れ込み)を除外してから考えなくてはならないのです。

 これ、知らない方も多かったのではないかと思います。僕も医師の方に教えて頂くまで、全く知りませんでした。厚労省の定義が特有であることで、おそらく多くの人が誤解しているのではないかな、と思います。

 さて、「副反応」はワクチンに関係ないものも含めマックス広くカウントして、1000人に1人、つまり0.1%ということになります。

 では、その(広すぎる)「副反応」の内訳を見てみましょう。

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 約9割が回復して、通院不要になっています。

 ( 厚労省副反応追跡調査結果について http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000097681.pdf )

【リスクが低いとは言えない?】

 伊藤ゆう都議は「リスクが低いとは言えない」と言っていますが、本当でしょうか。

 そもそも全てのワクチンは副反応があります。しかし、ワクチンを打たなかった時と比べて、どのくらいベネフィットがあるかを測定し、十分にベネフィットがあると判断されたものが、認可されていくのです。

 例えば子宮頸がんについては、年間約1万人が罹患し、約2900人が亡くなっています。

 これを、ワクチンの接種によって、65%~70%程度減らすことが出来ると報告されています。海外で使われている、より効果的なワクチンでは80%~90%まで予防効果が高まっています。

 とすると、もし全ての女性がHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)を打っていたとしたら、年間1800~2000人の人命を救えることとなるのです。

 一方で、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)が原因である死亡事例はゼロです。

(正確にいうとワクチン接種後に何らかの原因で亡くなられた方は3名いますが、自殺などワクチンとは無関係な死因によると考えられている)

 ただし、ものすごく定義を広く取って0.1%の副反応、しかも9割が回復しているという状況を鑑み、さらにリスクとベネフィットを計算してみて「リスクが低いとは言えない=リスクが優っている」と言っているのだとしたら、政治家としての資質が疑われます。

【チェリーピッキングに騙される政治家】

 ただし、伊藤ゆう都議にも同情すべき点があります。

 ワクチンの被害者であるという反ワクチン運動をされている方々が出してきた厚労省審議会の資料3だけ見せられて、伊藤ゆう都議は「ああ、なんて危ないんだ!」とパニクったわけですが、これは典型的なチェリーピッキングという手法です。

 彼女達は自分達の主張を裏付けるのに都合の良さそうな資料だけを部分的に出してみせて、知識のない政治家にロビイングしたのです。

 現に、全く同じ審議会の違う資料を見てみましょう。

 例えば、このWHO(世界保健機構)のペーパーが資料16として出されていますが、そこにはこのようにあります。

Vaccine safety(ワクチンの安全性)

WHOのワクチン安全性に関する諮問委員会(GACVS)は HPV ワクチンの安全性に関する報告を定期的にレビューしている。委員会は承認後に得られた、米国、オーストラリア、日本や何らかの懸念のあった国からのサーベイランスのデータ、メーカーからの情報を収集してレビューしている。得られるすべてのデータからは、3つすべてのワクチンについて、安全性のプロファイルが再度確認されている。

 GACVSでは、根拠の乏しいエビデンスに基づいて、安全で有効なワクチンを使用しないでいることは深刻な害悪をもたらすと発言し続けている。2016年1月、GACVSは入手可能なデータからは HPVの使用に関して安全性の懸念を示すデータは提示されなかったと結論づけた。

 世界保健機構が、HPVワクチンの安全性にお墨付きを与えています。

 さらに、資料15として、「諸外国の公的機関及び国際機関が公表しているHPVワクチンに関する報告書」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000186460.pdf)では、アメリカ、イギリス、スウェーデン、デンマークでのHPVワクチンの安全性評価調査の結果があり、どの国においても問題がなかったことを表しています。

 また、資料12(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000186457.pdf)では、

「平成28年1月から実施されていた厚生労働科学研究事業の研究班による疫学調査の結果が、研究班から報告され、HPVワクチン接種歴のない者においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する者が一定数存在したこと、が明らかとなった。」

 と、「ワクチンのせいだ」と反ワクチンの運動家やメディアが言っていたことを明確に否定しています。

 これらの全ての資料は、厚生労働省のWEBに載っているものです。

 通常政治家は忙しく、会った人の言うことを真に受けて、「インターネットでちょっと検索してみる」「裏を取る」という作業をしない方が多いです。

 そういう政治家の特性を利用して、自分達の都合の良い情報だけをチェリーピックして、政策を誘導しようとする一部のロビイング団体の怖さが、よくわかるケースです。

【我々がしなくてはいけないこと】

 2011年、過激な反原発派の方々が活発に活動をしていた際に、東大の物理学教授だった早野龍五さん、元原子力技術者だった大前研一さん、ブロガーの池田信夫さんらが、積極的にネット上でデマを打ち消し、放射脳的言説を打ち消すような発信をしていたことが、人々の根拠なき不安を解除していったことを、僕は記憶しています。

 同様に、ネット上のインフルエンサーの方々は、ぜひこの話題を取り上げて頂けたらと思います。

 昨今喜ばしいことに、堀江貴文さん、音喜多駿都議や、やまもといちろうさん、三浦瑠麗さん、永江一石さん等のネットで影響力のある方々が子宮頸がんワクチンについて発信してくれています。

 新聞等マスメディアは、これまで反ワクチン的な言説を垂れ流してきてしまったこともあり、引っ込みがつかなくなっているため、非常に反応が鈍い状況です。反ワクチン運動と戦ってきた村中璃子先生のマドックス賞受賞に関しても、ごく一部のマスメディアしか報道しませんでした。

 こうした言論状況のため、空中戦をネットを中心にしっかりと行っていかねばならないでしょう。

 そして、医療コミュニティは、非専門家である政治家の方々に、根気強くHPVワクチンの安全性について理解を求めるべく、反ワクチン運動をされている方々以上に積極的に政治家達との対面コミュニケーションを図っていく必要があるでしょう。

 でないと、今回のように政治家がすぐに影響されてしまい、そしてついには政策に反映されていってしまうことになるのです。

 2018年は、子宮頸がんワクチンをめぐる状況が好転するよう、官民をあげて努力していかねばなりません。このままだと消えていく、幾千もの命を少しでも減らすために。