「NPOが中小企業より給料が良い」時代になりつつある!?~ソーシャルセクター実態調査2017より~

(写真:アフロ)

 新公益連盟が、加盟する77団体を対象に、ソーシャルセクターで働く人たちの給与や働き方、育成やキャリアなどの状況の調査結果をまとめた、『ソーシャルセクター組織実態調査2017』を発表しました。

 多くの複雑な社会的課題を抱える日本社会において、その解決に取り組む、NPOやソーシャルビジネス等の「ソーシャルセクター」の役割は年々大きくなっています。

 その一方、ソーシャルセクターの仕事は、ボランティアなどと重ねてイメージされたり、一般の企業の働き方とは全く違うもの、と考えられている傾向がまだあります。それがソーシャルセクターへの人材の流入を妨げているのも、また事実かと思います。

 例えば、2008年度のRIETI調査では平均年収240万円、NPO白書2007年調査の「平均月給は15.8万円」等の調査結果が、それに拍車をかけました。

 では、そうした過去の調査から10年。ソーシャルセクターはキャリアとしての選択肢になっているのか。一般企業の現状と比較しながら、新公益連盟が調査結果をとりまとめた資料をもとに、その実情について解説します。

【調査の概要と組織概要】

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 平均社員数31人で2億6000万円。調査対象が44団体と少ないことはこれからの課題ですが、「ソーシャルビジネス界隈」の団体は概ね入っている印象です。

【給与・年収】

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 非役職者の平均年収は339万円。2007年頃のNPO関連調査では、190万~240万円と出ていましたが、10年経つと一般中小企業の非役職勤務者の年収を超え始めている団体達も現れていることが分かります。

 ただ、注意しなくてはいけないのは、母集団が全然違うのと、新公益連盟加入団体は、NPO/ソーシャルビジネス業界の中でも、比較的意識が高く、経営マインドの強い団体達であることを差し引かなくてはなりません。

 一方、経営層の平均年収は574万円と、一般企業の経営者層と比べると低い値になっています。スタッフと経営者の処遇にあまり差がない、というのはソーシャルセクターといえばソーシャルセクターらしいですが、ビジネスセクターの経営者がソーシャルセクターに参入するには、ある程度の所得水準がなくてはならないのも事実です。

 非役職者・管理職・経営陣を合計して全体平均値を出すと、年収383万円になりました。

【働き方】

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 一般企業よりも労働時間が少なく、残業時間も少ない傾向が見えます。

 また、一般企業に比べ、平均労働時間、残業時間ともに低く、リモートワークやワークシェアリング、週4社員などのフレキシブルな働き方ができているようです。

 中小企業よりちょっと給与が良く、でも大企業よりは低く、とはいえ働き方はホワイトで柔軟だから、ソーシャルセクターで働こう、となりつつあるのかもしれません。

 ただ、これも団体によって色々で、まだまだ溢れるやりがいと長時間労働が組織文化のNPO・ソーシャルビジネスも散見されていると個人的には感じます。

【人材育成】

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 人材育成の「制度」はあまり充実していないようです。しかし、独り立ちの期間は「3年以内」が7割という状況です。

 おそらく、早いうちから比較的大きな裁量を持たせられ、仕事を通してスピード感のある人材育成がなされていく、という環境なのだと推察されます。

 弊会フローレンスでも、新規事業に3年目の社員が中核メンバーでアサインされる、というのはザラにあります。

 おそらく、大企業や役所の職場環境というよりも、ベンチャー企業に近い感覚なのではないでしょうか。 

 そうした環境が向く人もいれば、もっと時間をかけて育ててほしい人もいるため、合う合わないはあるように感じます。

【転職事情】

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 創業から平均9年ということもあり、離職率は比較的高い傾向があります。転職先は一般企業等の事例も多々あり、NPOに一度勤めたからといって、ずっとNPO業界、というわけではなさそうです。またNPOでの職歴がハンデになっている様子もありません。

 フローレンスも一定数お辞めになる方はいますが、転職に苦労した、という話は聞いたことがありません。

 ただ、企業側に「NPOでの実務経験をどう評価するか」というアンケートは取れてはいないので、定量的な判断はまだできない段階だと思います。

 今後は、「NPOでの経験が、その後のキャリアに役に立っているか」というような質問を、転職者達に聞いてみることで、どのくらい成長に寄与しているかが測れるでしょう。

 願わくばオバマ大統領のように、NPO職員としての経験がその後の政治家としてのキャリアに大いに役に立ったのと同様に、ソーシャルセクターでのキャリアが、働く人たちのためになってほしいと思います。

【業界の成長】

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 経営者の成長意欲もあるようです。

 ただ、ソーシャルセクター経営者は、売上や職員数を達成目標として置いている人は少なく、どちらかというと「どれだけ多くの人を助けるか」に興味がある人が多いので、質問として適切かどうか、というところではあります。

 とはいえ、売上や従業員数のような一般指標を使用しないと、横で比べられないので、この指標が採用されているということでしょう。

 経営者として成長していくマインドが少なくともある、というのは働く人たちにとっても、良いことなのではないかな、と思います。

【まとめ】

 いかがでしたでしょうか。ソーシャルセクター(の一部)では、社員の年収が中小企業平均より良く、働き方は柔軟性が高く、制度はないけれど実践の中で裁量を任せられて社員が成長している、ということがあるようです。

 そう考えると、キャリアの一つの選択肢として、ソーシャルセクターで働く、ということも十分考えられるのではないでしょうか。

 ただ、今回の調査の参加団体は、初めてということもあり少なかったので、参加団体を増やしつつ、かつ経年で変化を見ていく必要もあるでしょう。

 また、こういう「調査モノ」は改めて取っていくのは、取る方も答える方も大変なので、例えば助成財団の助成金申請書に、申請とともに必須データとして取っておき、それを各団体で集めて集計していけば、より広範囲かつ精緻なデータとして利用ができるでしょう。

 民間でも社会課題を解決し、公益を担っていくプレイヤーが増えていくことによって、複雑化する社会課題に侵されつつある我が国が、少しでも良くなっていくことを、心から願っています。