特別養子縁組で3児の親になった夫婦-周囲、そして本人への告知-

前回に引き続き、特別養子縁組で3人の子どもを迎えた佐々木さんご夫婦のインタビューをお送りします。

こちらがオープンにしていれば嫌なことを言われることはない

-周囲の人にはどのように伝えましたか。

啓子:突然赤ちゃんを迎えるわけですから、まわりの人もあれ??と不思議に思うわけです。

知っている人には最初から話していて、家のご近所さんには会った時に「私が産めない体で、特別養子縁組で迎えました」と話しました。当時は町内でお掃除をする日が月に1度あって、その時にとかに。

まわりの反応は、基本「おめでとう!よかったねー」というのが大半。

こちらがオープンにしていれば、嫌なことを言われるいうことはなかったです。

誰にでも言うことでもありませんが、あえて隠すことでもない。子どもが大きくなる前に、疑問や質問は私に聞いてほしいと思っていました。そうしたら子どもは生活しやすくなるんじゃないかって。

啓子:区役所での届け出なんかも、とってもスムーズでした。

特別養子縁組で・・と言えば、「分かりました」と、時間がかかっても手続きについて調べてきてくれました。

赤ちゃんを連れて役所に行くときはとても緊張しているので、窓口の職員さんが優しくしてくれるとほっとしました。

職員さんが「よく育ってるね」と言ってくれたことが、とてもうれしかったことを憶えています。

裁判が終わるまでは、病院に連れて行った時など、子どもは生みのお母さんの苗字で呼ばれます。それが気になる養親さんもいるそうですが、うちは病院や検診などでもそのまま呼んでもらっていました。

今この子が持っているものを大切にしたいと思っていたので。

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-その後2年後に2人目のお子さんを迎えることになりますが、きょうだいを迎えたいというお話は夫婦でしていたんですか?

啓子:上の子が1歳過ぎた後くらい時に、もうひとりいたら楽しいだろうなと思っていました。

でも子どもも生みのお母さんも大変な決断をしてやってくるので、そんなことを口に出していいんだろうか、望んでいいんだろうか、という思いもありました。

たまたま私たちがお世話になった団体の方に会った時に、「2人目とか考えているの?」と聞かれたことがあって、その時はじめて「考えてます」と伝えることができました。

啓子:2人目、3人目を考えることができたのは、上の子たちがすくすくと大きくなってくれていたことが大きいです。

生みのお母さんに対しても団体を通して報告を送っていて、「向こうからこういう風に返事が来たよ」と聞いていたことや、団体の丁寧なケアによって、生みのお母さんが前を向いて暮らしていることを感じられたことも大きかった

自分だけの気持ちで進めていいのかと感じていましたが、生みのお母さんが「佐々木さんのおうちの子になってよかった」と感じてくれたことを知り、私自身も前向きに次の一歩を踏み出すことができました

お互いを全く知らないと、どんなひとだろう?って、妄想ばっかりが膨らんじゃいませんか?

生みのお母さんにしても、私たちの方にしても、何をしてるかわからない、どこにいるかもわからないだと不安になります。

私たちがお世話になった団体は、養子縁組が成立した後も生みの親と養親両方のケアをしているのですが、私達の養親としての経験からも、これはとても大切なことだと実感しています。

血がつながらなくても「縁」でつながっている

啓子:特別養子縁組のマッチングは、「赤ちゃんはどこにいってもいい」わけではありません。生みのお母さんの抱えている問題、子どもの状況、養親の心の準備がどれくらいできているか。

そういったことを見極めて、子どもがよりよい環境で育つために委託先を考えていくのだそうです。

子どもたちが私たちと家族になったということは「縁」があってのことだし、ここが最善と信じて託されたんだなって

「育てることはできなかったけれど、幸せになってほしい」そういう生みのお母さんの気持ちも、団体を通して伝わったからこそ、子どもたちにわかる言葉で伝えていくことが、私たちの責任だと思っています。

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子どもたちに早めに出自を伝えていく理由

-お子さんたちには真実告知はどんな風にしていますか?

健二:我が家では子どもたちが小さいころから、「お父さんとお母さんは、赤ちゃんを産むことができなかったの。〇〇ちゃんには、産んでくれた人がいるんだよ。」と伝えてきました。

「〇〇ちゃんを産んでくれた人はね、どうしても赤ちゃんを育てることができなくてね。お父さんとお母さんに代わりに育ててくださいねって言ってくれたんだよ。」

「お父さんとお母さんは、〇〇ちゃんに会えてとっても嬉しかったんだよ。お父さんとお母さんは〇〇ちゃんが大好きなんだよ。」と話しています。

啓子:私は最初は上の子が1歳半くらいの時から、つぶやいていました。

私の「心の準備」というのもあったと思います。赤ちゃんに話すのに、すごくドキドキしていました。

健二:2番目の娘の4歳の誕生日前に妻が「〇〇ちゃんを産んでくれた人の写真を見たい?」と聞くと「みたい!」と答えていたそうです。

誕生日が過ぎて数日後に、娘と過ごしているときに写真を見せると、娘は「わあ!」と嬉しそうな顔をして、写真にキスをして「ありがと」「ありがと」と言ったといいます。

妻が「どういう意味なの?」と聞くと娘は「産んでくれたから」と-

子どもたちにはいつも驚かされます。私も妻からそのことを聞いて、娘の心の成長に涙が出ました。まっすぐに、大きな愛をもった子どもに育っています。親バカのうれし泣きです。

啓子:それぞれ伝える情報は気をつけてあげないといけないけれど、子どもたちには「知りたいと思ったらいつでも知れるよ」ということを伝えています。私たちが持っている情報は整理して保管していて、それを使うか使わないかは、子どもたちが決めればいいと思っています。

上の子は、先日おばあちゃんに「いつか会いたいな(産みのお母さんに)」と話していました。そう思うことは当然だと思いますし、言ってはいけないと思わないように、普段から自然と話せる関係を意識しています。

伝え方が上手くなかったなという時もあるんですが、そういう時は「ごめんね、伝え方がうまくなかったね」と正直に子どもに謝って、次は上手く伝えられるようにしたらいいと思うんです。

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「KISEKI NOTE」子どもたちが大人になって、生みのお母さんについて知りたいと思ったときのために佐々木さん夫婦が作っているノート。養子縁組の時にもらった資料や家庭裁判所の審判で使用した資料や、生みのお母さんについての情報が記されている。

上の子から満たしてあげないと、他の子に優しくできない

-きょうだいができた時に、お子さんはどんな反応でしたか?

啓子:上の子の場合は、2歳3ヶ月くらいの時に妹を家族に迎える体験をしています。「赤ちゃんが生まれたから迎えにいこうか」と伝えて一緒に迎えに行きました。

妹が来た時、上の子はバリバリ赤ちゃん返りがありましたね(笑)

2人目の子を迎えた時、「お兄ちゃんだから」と言わないように気をつけました。上の子のことを優先に、親が「ただいま」と帰ってきたら、先に上の子をだっこしていました。

健二:上の子のほうから満たしてあげないと、子どもも下の子に優しくできません。下の子をよしよしとする時は、おにいちゃんの後ろから、おにいちゃんと同じ目線で、下の子を見るようにしています。

2ヶ月、3ヶ月一緒に過ごしながら私たち夫婦も子どもたちも、4人の生活、5人の生活に慣れていった感じです。

上の子は家族増えてうれしいみたいで、「もうひとりいたらいいよね」なんて言ったりもします。

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-お子さんたちにこれからどんな風に育ってほしいですか?

健二:自分で考えられる人、そして、強くあってほしいです。これから必ず試練を味わうはずだけど、ずっと助けてあげられるわけじゃないので。

そう考えているから、普段は子どもの後ろから歩きます。親がどこかへ連れて行くんじゃなくて、子どもが先。

話も「お父さんわからないから、〇〇のお話を聞くのがいいんだよね。」と子どもの話もできるだけ聴いて、会話を続けるようにしています。

啓子:笑って、素直で、元気に育っていってほしいです。身体も元気だったら、心も健やかに過ごせると思うので。

いまはあったかい人に守られて、価値観も似ている人たちの中で過ごしていますが、小学校に上がると、いろいろな価値観に触れるでしょうね。

何か人と違うところとか、ほころびなど、心がイガイガしている子ほどそういうのを見つけやすい。養子であることを言われるときもあるでしょう。

でも、泣いて帰ってきても、ちゃんと受け止めてあげたいです。幸い、家族の中にいろいろな立場の大人がいるので、私にいえなくても夫に言えるかもしれないし、おばあちゃんに言えるかもしれないという安心感はあります。

健二:子どもが強くなるためには、甘えられる、受け止めてもらっている、というのが大事だと思っています。

この前、養子の子は「自己肯定感が2倍」という調査結果が出ていましたが、それは子どもを心から愛していることを親が意識して言葉にするから、というのもあるように思います。

心ではみんな思っていると思うけれど、それを言葉にしているかどうかで違いが出るのだと思います。

普通に血の繋がった家庭だとあまり言わないこともあるかもしれませんね。

養子家庭は言葉にすることを意識する割合が多いので、そういうのも自己肯定感に関係しているように思います。

啓子:今、上の子は小学校にあがったばかりで、気持ちが伸びる時。「だっこー」って言ってくるので、23キロくらいあって、少々厳しいですが(笑)、それも外で頑張っている反動。

家庭ではだっこ、と言われたら数秒でも手を止めて、向き合うのが大事かなと思っています。

家族をつくる「もう一つの道」があることを多くの人に知ってほしい

-最後に、日本で特別養子縁組が拡がっていくために、どうしたらよいと思いますか?

健二:不妊治療をしている人も、早い段階でこの制度を知ってほしいと願っています。多様な家族の形があることを多くの人に知ってほしいです。

いつも思うんですが、ひとつの家族が幸せにできる子どもの数は限られています。子どものすべてを受け止めて、愛情いっぱいの家庭で育つ子どもが増えるようになるといいなと想います。

啓子:私たちも普通に子育てして生活しているので、周りにいる人達にどれだけ伝わっていくかで偏見もなくなっていくのかなと思います。

近所のクリーニング屋のおばちゃんとかと話していていると、「実は親戚で子どもができなくて悩んでいる人がいて。あなたのこと言っていい?」と言われたりして、もちろん「いいですよ」と答えてます(笑)

世の中にもっと特別養子縁組に関する情報があったらいいですよね。今はブログもたくさんあるので、そういったものから情報集めしていくのもよいと思います。

啓子:あと、生みのお母さんの小さなSOSを受け止める社会になってほしいです。何も知らない頃は生みのお母さんは特殊なケースだと思っていたけど、そうじゃない。

自分には相談できる親がいて、友達がいて、たまたま陥らなかっただけで、それがなかったとしたら。

困難が重なる中で、追い詰められていたかもしれない。誰もが陥る可能性があったと思うんです。

そういう風に身近な問題として考えくさんの人が関心を持つことで、生まれたばかりの赤ちゃんが亡くなるようなことがなくなることを願っています。

※佐々木さん家族の記録ブログはこちら

5人家族になりました!~特別養子縁組への道、そして真実告知~