「誰でもわかるNPO法改正」何がどう改正されたのか。シーズの関口さんに聞いてみた。

先日、参議院本会議でNPO法改正案(特定非営利活動促進法の一部を改正する法律案)が可決されました。特定非営利活動促進法(NPO法)は、私たちNPOが活動をするための、根幹となる法律ですが、今回の改正については、正直マニアック過ぎてあまりニュースでも取り上げられていません。

そこで、今回の改正に向けて積極的に提言活動をされていた「NPO法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」代表理事の関口宏聡さん(以下、関口さん)にお話を聞いてみることにしました。

【時流に合わせて法律は変わる】

駒崎 関口さん達のがんばりによって、先日NPO法改正案が参院で全会一致で可決されたわけですが、あまりにもニッチすぎて、NPO業界ですら、あまり知られていないんじゃないかと。それはいかん、と思いまして、急遽この対談を企画させていただきました。NPO制度のインフラでもあるNPO法が、今回どう変わったのか。皆さんにもっと知ってもらわないといけない、伝えなきゃいけない、ということで、今回は「誰でもわかるNPO法改正」と題して、関口さんにいろいろとお聞きしたいと思います。

関口さん ありがとうございます。そもそもNPO法は1998年に成立した法律で、いわばNPO活動におけるOSのようなものです。この法律によって、様々なNPO活動が支えられています。NPO法の成立は非常に画期的でしたが、法律は一度成立したら終わりではなく、時代の変化によって改正されていくものです。

駒崎 今までもNPO法は改正されてきたんでしょうか?

関口さん はい。2011年6月15日に大きく変わりました。まずは、それまでの内閣府の認証事務、国税庁の認定事務が、主たる事務所の都道府県・政令市に移管されました。このことで、事前相談、認証・認定事務、指導監査などが、各団体にとって身近な地方自治体で一元的に行われることになりました。この改正によって、以前より自治体とNPO法人とが協働しやすくなったと言えます。

また、大きかったのが税制の改正です。新しい寄付税制(寄附金税額控除等)により、寄付した額の50%が確定申告で免除されるという、大変画期的な改正が行われました。OSとしてはかなりのバージョンアップですよね。バージョン1から一気にバーション3になったくらいのインパクトです。

駒崎 なるほど。日本が今や「世界で最も寄付がしやすい国」になったのは、そういった法律の改正によるものなんですね。

関口さん そうなんです。ただ、2011年の大幅改正でも、いくつかやり残したことがありました。全国のNPOの方にヒアリングしていくうちに、問題点があぶり出されてきましたので、今回の改正案に入れてもらうよう、働きかけてきました。

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【もっと機動的にNPOを設立したい】

関口さん 問題の1つは、NPOの立ち上げに時間がかかるということ。これは工藤啓さんのブログ(パパ、スーパー戦隊は仕事なの?「スーパー戦隊と公共性」])にも詳しいので、ぜひ読んでいただきたいのですが、最短で4ヶ月かかるんです。今の時代は、情勢の変化が早く、4ヶ月経つと、状況がガラッと変わってしまうことも多いです。災害時など特にそうですよね。「NPOは時間がかかるから一般社団法人にしようか…」となり、せっかくの良さが活かしきれていないな、というところがありました。

NPO法人の設立には、2ヶ月の審査期間の前に、2ヶ月の縦覧期間が必要です。縦覧期間とは、”お知らせの期間”という意味ですね。役所で「こういう団体から設立の申請が出ています。」とお知らせするんですが、この期間を2ヶ月から1ヶ月に短縮しました。審査期間は条例によって短縮できますので、所轄によっては、設立にかかる時間を4ヶ月から2ヶ月へ短縮することも可能になりました。

駒崎50%OFFですね! 素晴らしい! でも、そもそも縦覧期間って必要なんですか?

関口さん 個人的には0(ゼロ)にしたいと思っていました。縦覧期間が定められているのはNPOだけなんですよね。当初の目的としては、情報公開を大事にすることで寄付者も集まりやすくなる、といった考えもあったのですが、将来的には縦覧期間そのものを無くしたいです。事前チェックを厳しく、というのが、NPO制度の趣旨になじまないのでは、と思っています。

駒崎 そうですね。ダメな団体はあとから監査などでキックアウトできますから、それよりは、必要な時に機動的に団体を設立できる方が趣旨にかなっていると思います。

【無意味な作業を無くしたい】

関口さん もう1つは、少しマニアックになるんですが、資産の総額の登記をやめましょう、ということ。法律ができた1998年当時には、インターネットも今ほど普及していなかったので、団体の財務情報を把握するために、登記簿に資産の総額を掲載することには確かに意味があったんですが。今は各団体の財務情報が内閣府のポータルサイトに掲載されてます。謄本を取得するのにはお金も手間もかかるけど、ポータルサイトなら簡単にアクセスできるし、タダだし…。これって必要?と。そもそも、登記することを忘れている団体さんも多くて、毎年、無意味な負荷がかかっているのでは、ということで、「やめましょう」と訴えました。

駒崎 当初の意味を失いつつあった、ということですね。僕は、毎年資産登記が必要だなんて知らなかったんですが、フローレンスもちゃんと登記してるんですかね。

関口さん 認定NPO法人なので、担当スタッフの方が、きちんとされてらっしゃると思いますよ(笑)都内の団体さんはまだ良いんですが、地方の団体さんにとっては結構辛いんです。法務局が遠かったり、普段つきあいがあまりないのでハードルが高かったり、それも毎年ですから。しかも実は法務局にとっても、NPOの登録免許税は0円なので、ただ手間になっているだけなんです。もうみんなドM状態で(笑) 今回の法改正で、2年後には資産登録の義務が無くなることになりました。

駒崎 素晴らしい!全国5万のNPOを苦行から解放したんですね! 

関口さん 無駄な時間・事務仕事を削減することで、その分現場の活動に時間をあてられますよね。法務局の職員の方の残業=公務員の人件費も減らせて一石二鳥です。

ボランティアで活動をがんばっていた団体さんが、活動の幅を広げるために認定NPO申請を取得しようと思った時に、今まで資産登録が漏れていたことに気づくケースも多いんですよね。確かに決まりではあるのですが、15年分遡って申告して、過料も7,8万円払わなくちゃいけなくって、となると気の毒で。

駒崎 ホームページに載ってるじゃん!って思ってしまいますよね。これは、地味だけれど非常に重要なインフラ整備だと思います。

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【現場の声をあげていくことが何より大切】

駒崎 法律って、水や空気のように、”あって当たり前”と思われがちですが、きちんと声をあげてアップグレードしていくことが必要ですね。

関口さん 今回の改正法案は、超党派のNPO議員連盟の皆さんが起案・提出してくださいました。お金にも票にもならないのに、自分の政治信条のために汗をかいてくださっている政治家の方がたくさんいらっしゃいます。

駒崎 すごいですよね。地道に根回しや説得をしてくださって。

関口さん 本当に感謝しかありません。多くのNPOの皆さんにとって、議員会館は遠く感じるかもしれませんが、こういった政治家の方がいらっしゃることも知って欲しいですね。

駒崎 シーズさんから何か伝えたい事はありますか?

関口さん 政治参加は投票だけではないことを伝えたいです。自ら立候補したり、ロビイ活動をしたり、デモや寄付をしたり、いろいろな参加方法があります。でも、どうしても政治参加というと投票のことばかり言われてしまう。NPOも、発想が貧弱ではいけないと思います。課題は現場にあるのですから、自分たちで声を上げていくことが必要ではないでしょうか。そういった意味でも、ロビイングは大事です。ロビイ仲間、議員会館で見かける仲間が増えると嬉しいな、と思います。今は駒崎さんくらいしか見かけない(笑)

駒崎 そうですね。議員会館に行くと、確かに関口さんとはよく会いますね(笑)では、今後の課題としては?

関口さん 次は5年後を見据えた抜本改正でしょうか。NPOセクターの成長は著しく、1998年当時想定していた規模を遥かに超えています。事業規模が大きいNPOも出てきており、NPOという事業体だからみんな一緒、では対応が難しくなっています。NPO制度も、都会型と地域型の両方の要望に応えていける制度にしていく必要があると思います。社会福祉法人のように外部監査を義務付けるなど、より社会責任を果たせるように、またもっと社会に貢献できるように税制改正も必要です。

駒崎 個人的には、議決権コントロールについて改正してほしいと思っています。今までは1人1票の議決権でしたが、出資金額によって議決権を割り当てられることができるようになった。これは非常に大きな前進だと思いますが、普通のNPO法人にしか認められていません。認定NPO法人には使えないんですね。NPO法人どうしの合併ができなかったり、事業継承が難しかったり、これは企業経営的にはまずい。大企業が中長期的な展望を持って企業経営ができるように、NPOも公器として時の試練を超えていけるような仕組みが必要ではないかと思っています。

関口さん やはり、声をあげて伝えることで、インフラを使いやすく整えていく、ということがとても大切だと思います。私たちも、引き続き提言を続けていきたいと思っていますので、ともに頑張っていきましょう!