福島県はいつまで「風評被害対策」を続けるのか

いわき市の食材を楽しむ食のイベントでかまぼこをアピールする筆者

はじめまして、いわき市小名浜在住の小松理虔です。

このたび、こちらでブログを書かせて頂くことになりました。いわきならではの旬のネタをお届けできればと思っております。どうぞよろしくお願いします。

初回は何について書こうかなとあれこれ思案していたところ、2月13日(木)の「福島民友」のニュースがどうにもこうにも釈然としないので、福島県のかまぼこメーカーに勤める一社員の立場から、この問題をざっくりと書いてみます。

福島県産品「買わない」30% 首都圏消費者の意識調査(福島民友 2014/2/13)

県商工会連合会は12日、昨年12月に首都圏の一般消費者を対象に行った県産食品などに対する意識調査の結果を発表した。県産品を「買わない」と答えた消費者は30.2%で、前回調査(2012年9月)の30.4%と比べほぼ同水準だった。首都圏の消費者の県産品に対する意識はこの1年間でほとんど変化がなく、本県への風評が根強いことを裏付けた。同連合会は「本県の風評被害はあまり改善していない」と分析し、風評被害の払拭(ふっしょく)に向けたPR活動やイベントを実施する考え。

出典:福島民友

記事によると、県商工会連合会は今後も「風評被害の払拭に向けたPR活動やイベントを実施する考え」だというのですが、単純に、残りの7割の「買うかもしれない」層に対策費をつぎ込んだほうがよほど合理的だよな、というのが最初の話です。

今回の調査で、「首都圏の消費者の県産品に対する意識はこの1年間でほとんど変化がない」という結果が出たわけです。昨年1年間、県や県内の各自治体、関係各所があれだけ「風評被害対策」をやってきてこの状況なのですから、この3割の方々を動かすのは非常に難しいと言わざるを得ません。

福島県産を忌避する方にアピールするのは、まあ「ムスリムに豚肉を食べさせる」ようなもので、余計に福島県産品を毛嫌いさせることになるし、不安や不信感をさらに高め、ネガティブなノイズや悪質なデマの拡散に加担させることになりかねません。クレームを相手にしているだけで、生産者も摩耗してしまいます。

ですから、残りの7割の方に、福島県産のさらなる魅力をアピールしたり、継続して購入して頂けるサービスを提供していくべきで、そちらのほうに予算を割いたほうがよいと思うのです。「風評被害は未だ根強く残っている」ところから卒業しないと、いつまでも風評被害を固定化することになり、おいしさやこだわりを伝えるステップに進むことができません。

そもそも、買う気のない方に買わせるビジネスより、買う気があるかもしれない方に売るほうがよほど生産的ですよね。前者は3割、後者は7割もいるわけですから、どちらに目を向ければいいのか、新人営業マンだってわかるはずです。

2013年に小名浜漁港に水揚げされたカツオ
2013年に小名浜漁港に水揚げされたカツオ

ー福島県産品を買いたくても買えない問題

福島県全体として、福島県産品を忌避する方への対策に重点を置いてきたせいか、残りの7割の人たちに対するアプローチが多少おろそかになっていた感が否めません。「福島県産を買いたい人たちに、福島県産品が届いていない」という問題が続いているのです。

福島民友の記事のグラフをよく見ると、青の部分、「買う機会がない」と答えた人の割合「19%」は、2012年から13年にかけてほとんど改善されていないことが見て取れます。つまり、福島県産品の流通量が増えていない、身近なスーパーや販売店に、福島県産品が並んでいないということが言えるかと思います。

おそらく、スーパーのバイヤーや市場関係者、流通関係者のなかに、「福島県産品は売れないのではないか」、「いろいろクレームが来たりして面倒そうだ」という意識が残っているからだと推察されます。「他県産でも変わらない品質なら福島県産は要らない」という方も多いでしょう。

流通業者にとって、福島県産品を買う理由がないのです。安いから。売れるから。おいしいから。人気があるから・・・。他県産をしのぐ商品価値をつくり、流通関係者にアピールする場が求められます。マネキンさんではない自社の社員を売り場に派遣したり、手の出しやすい小ロットのコラボを企画したりと、流通との信頼関係を作ることも重要ですよね。

同時に、消費者の皆さんに「福島のものが食べたい」という声を上げてもらえるようなPRを進めることが重要なカギです。そこで大事なのは、「応援したいから」ではなく、「おいしいから」という声であること。当然ですよね。応援したくても、おいしくないものは売れませんから。

「風評被害対策」には予算も出るのですが、安全性をPRしたところで相手は3割です。今後は7割に向けた「流通業者との連携」や「おいしさ・こだわりのPR」を、芸能人や色モノに頼らず「普通に」やるべきです。県が率先して、それに取り組んで頂くことを望みます。

ふくしま市場(東京都江戸川区)のようなアンテナショップの充実化も求められる
ふくしま市場(東京都江戸川区)のようなアンテナショップの充実化も求められる

―自治体に助けてもらいたいこと

ついでなので言っておくと、今もっとも必要とされる支援は、私が思うに人材確保です。先ほど「流通業者との連携」と書きましたが、自社で直売の販路を作っておけば、流通から買い叩かれることもないし、消費者に直に自社商品をアピールできます。しかし、この直売を開拓できる人材が少ないのです。

福島の生産者は、長く首都圏の売り先に「大量に」出荷することで生計を立ててきました。生産者の仕事は「出荷」することであり、その先はすべて流通関係者やスーパーに任せてきたわけです。急に「情報発信しろ」、「接客もしろ」、「6次化だ」とか言ってもできるはずがありません。

そこで、首都圏の企業などで経験を積んだUターン希望者と、福島のメーカーとのマッチングを図っていく。特に求められるのは、営業、企画、広報・PRなどのスキルがある人材でしょうか。雑誌やウェブマガジンに広告を出稿したり、大学などでこまめに説明会を開いたりと、できることはまだまだあります。

自治体を通して人材を受け入れることで、当たり前の福利厚生を取り入れたり、給与体系を見直したりと、会社の体質改善にも(多少は)役立つような気もします。商品を売ると同時に会社の中身もよくしてしまう。そんな横断的な取り組みへの支援が必要です。

と、ここまで書いておいてアレなのですが、上に書いたような取り組みって、たぶん全国各地の食品メーカーが取り組んでいることだと思います。福島だからといって特別なわけではない。当たり前のことを当たり前にやるために、福島県は(そして私たち生産者は)、風評被害対策をそろそろ止めてみてはいかがでしょうか。