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生成AIの影響を受ける職業は? 米最新研究 米労働人口の8割、仕事の1割以上に影響

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(提供:イメージマート)

「高度な言語能力を持つ生成人工知能(AI)は、さまざまな専門職が現在行っている仕事の多くを迅速にこなすことができる」──。米ウォール・ストリート・ジャーナル米フォーブスが、米最新研究を基に報じた。

米労働人口の約2割、仕事の半分以上に影響

米ペンシルバニア大学や、生成AI「ChatGPT(チャットGPT)」開発の米オープンAI(OpenAI)などの共同研究によると、税理士は生成AIに最も影響を受ける職業の1つだという。その仕事の少なくとも半分は、AIを利用することで今よりはるかに迅速に行えることが分かったとしている。同様のことが数学者や通訳者、ライターなどにも当てはまるとしている。

研究グループは2023年3月27日に「大規模言語モデルの労働市場への影響に関する初期の考察」と題するワーキングペーパーを公表した

この調査は、GPT(Generative Pre-trained Transformer)モデルと関連技術が職業に与える潜在的な影響を調べ、各職業への影響度合いを評価したものだ。

それによると、米労働人口の約80%はGPTの導入によって、少なくとも仕事の10%が影響を受ける可能性がある。また、米労働人口の約19%は、仕事の50%以上が影響を受ける可能性があるという。

高収入職種に大きな影響へ

影響はすべての賃金レベルに及び、高収入の職種はより大きな影響を受ける。学位を必要とする仕事はその度合いが最も大きく、多くの場合は仕事の半分以上が影響を受ける可能性がある。ただしここで重要なことは、仕事が生成AIによって置き換えられるのではなく、大きな影響を受ける、または拡大されるのだという。

オープンAIのタイナ・エランドウ氏らは、「全体的に見た場合、AIがほぼすべての仕事を行うことのできる職種を見つけることは難しい」と話している。

翻訳者やライター、税理士、金融アナリストなど・・

エランドウ氏らの研究では、プログラミングと文書作成の仕事が生成AIの影響をより受けることを示している。一方で、科学や批判的(クリティカル)思考スキルを伴う職業・仕事は影響を受けにくいという。高度なAI技術によって影響される、あるいは拡大されるとみられる職業には次のようなものがあるという。

●通訳・翻訳者

●調査研究者/市場調査員

●詩人、作詞家

●動物科学者

●広報専門家

●ライター、作家

●数学者

●税理士

●金融データアナリスト

●ウェブデザイナー/デジタルインターフェイスデザイナー

フォーブスによると、この研究から得られる重要なポイントは、生成AIが現在では想像もつかない方法で職場を再形成することだという。一部の職業は最終的に消える可能性がある。だが、AIの生産性と能力を活用し、顧客や人々の生活を向上させる新しいイノベーションとサービスを生み出すことができる職業は、2020年代半ば〜後半の経済状況に際して、うまく機能するだろうと、フォーブスは報じている。

  • (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2023年3月30日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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