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世界スマホ出荷、2014年以降最大の落ち込み 上位5社でアップルのみプラス成長

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:REX/アフロ)

シンガポールに本部を置く調査会社カナリスがこのほど公表したスマートフォン市場リポートによると、2022年7〜9月期の世界出荷台数は前年同期比で9%減少した。3四半期連続の前年割れで、7〜9月期として2014年以降最大の落ち込みとなった。

アップル、シェア18%で2位

「悲観的な経済見通しによって、消費者は他の必需品への支出を優先させている」とカナリスは分析する。スマホ市場は今後6〜9カ月低迷する可能性があるという。

メーカー別出荷台数の上位5社は、首位から韓国サムスン電子、米アップル、中国・小米(シャオミ)、中国OPPO(オッポ)、中国vivo(ビボ)の順だった。

このうちアップルの出荷台数だけが前年同期比でプラス成長した。同社の「iPhone」に対する需要は比較的レジリエンス(強じん性)があるという。スマホ市場が低迷する中、アップルはシェアを前年同期の15%から18%に拡大させ、「市場での地位をさらに向上させた」(カナリス)。

一方、サムスンは流通チャネルの在庫削減を目的に大規模プロモーションを実施したことで、22%のシェアを獲得し首位を維持した。前年同期のシェアは21%だった。

小米、OPPO、vivoは中国国内市場の先行き不透明感を背景に海外展開に慎重なアプローチを取った。シェアはそれぞれ14%、10%、9%。小米のシェアは前年同期から横ばい、OPPOは1ポイント低下、vivoは2ポイント低下した。

優先事項は在庫リスクの軽減

カナリスによれば、スマホ市場は消費者需要に対し非常に敏感であるため、メーカー各社は厳しいビジネス環境への迅速な対応を余儀なくされている。大半のメーカーにとっての優先事項は、需要減を考慮して在庫が積み上がるリスクを軽減することだという。

各社は7月時点で大量の在庫を抱えていたが、その後の積極的なプロモーションや値下げ攻勢によって9月から在庫問題が徐々に解消されるようになった。新製品の価格戦略については、物価上昇に敏感な消費者からの反発を避けるため、アップルでさえも慎重な価格設定を強いられた。

スマホ市場はしばらく回復の兆しが見られない。「このため、22年10〜12月期および23年前半において、各社は流通チャネルと密接に連携しながら、サプライチェーン(供給網)と協力し、慎重な生産計画を立てる必要がある」とカナリスは指摘する。

アップル、増産計画見直し

アップルも慎重な生産計画を強いられているようだ。ブルームバーグ通信ロイター通信は先ごろ、アップルが「iPhone 14」シリーズの増産計画を見直したと報じた。

それによると、アップルは22年後半、新型iPhoneシリーズを最大600万台増産する計画だった。しかし当初予想していた需要増が見込めないと判断し、増産計画を取りやめた。サプライヤー各社には、当初の計画通り9000万台の生産を目指すと通知したという。

その一方で、高価格帯モデルの「iPhone 14 Pro」は普及モデルの「iPhone 14」よりも需要が高まっているとみている。ブルームバーグは、あるサプライヤーが生産能力を「Pro」にシフトしたと報じた。

22年10〜12月のスマホ市場は、需要が旺盛だった前年同期と比べ緩やかながら着実な販売が期待できるとみられる。しかしこの四半期を市場回復のターニングポイントと判断するのは時期尚早だとカナリスは指摘している。

  • (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年10月21日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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