米アマゾン・ドット・コムが自社の電子商取引(EC)サイト内で展開する広告事業を拡大している。

「スポンサープロダクト」増加

例えばアマゾンのサイトで「歯磨き粉」を検索すると、コルゲートやクレスト、センソダインといった人気ブランドの商品が一覧表示される。それら上位に表示される商品を詳しく見ると、画像左下に小さく「スポンサー(Sponsored)」というラベルが付けられている(図1)。

図1 筆者撮影(アマゾンジャパンのサイト 2021年10月27日)
図1 筆者撮影(アマゾンジャパンのサイト 2021年10月27日)

これらは「スポンサープロダクト」と呼ばれる広告。アマゾンは、利用者が入力した検索キーワードや閲覧内容に関連するスポンサー企業の商品を、検索結果ページや商品詳細ページに表示している。

米CNBCによると、アマゾンでは「オーガニック(自然)検索」と呼ばれる、スポンサー広告に左右されない検索結果が減少傾向にある。アマゾンのスマートフォン用アプリでは、歯磨き粉を探している利用者がオーガニック検索の結果を表示できるまでに画面を2回スワイプする必要があるという。

アマゾンのECサイトではこれまで、検索結果ページの上部に表示されるスポンサープロダクトの数が2〜3件に抑えられていた。だが最近は最大で6件表示されるようになったと専門家は指摘している。

また、アマゾンも自社製品の販促に商品検索を利用している。米国サイトで「シャンプー」を検索すると、パンテーンやロレアル、ネクサスといったブランドのスポンサープロダクトに優先してアマゾンのプライベートブランド商品「ソリモ」が表示されるという。

広告事業、87%増の79億ドル

アマゾンの広告事業は急成長を遂げている。米調査会社のイーマーケターによると、2018年には米国の検索広告市場で米マイクロソフトを上回り、米グーグルに次ぐ2位に浮上した。アマゾンの検索広告はその後も成長が続いており、グーグルとの差を縮めている。

アマゾンは、広告事業の売上高を公表していない。だが、広告収入が大半を占める売上高の「その他」項目は21年4〜6月期に前年同期比87%増の79億1400万ドル(約9000億円)に達した(アマゾンの決算資料)。

米調査会社のジャンプショットによると、米国ではECの買い物客が商品を探す際、グーグルなどのネット検索サービスではなく、アマゾンのサイトで検索する人が増えている。その広告効果に期待する一般消費財メーカーや小売業者がアマゾンに広告を出稿している。

こうした中、アマゾンは広告技術の向上を図り、様々な広告枠を提供するようになった。例えば米調査会社のマーケットプレイス・パルスによると、同社は商品詳細ページの下に関連商品や評価の星が4つ以上の商品を表示している。これらはいずれもスポンサープロダクトだという。

20年には「おすすめ商品」の欄にスポンサープロダクトを表示する試みを始めた。それまでアマゾンのサイトでよく見かけた「この商品を買った人はこんな商品も買っています」や「この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています」の表示件数が徐々に減っている。このほか同社は動画広告や、特定ブランドの一連の商品を1ページに表示する「スポンサーブランド広告」も展開している。

背景にアマゾンアグリゲーターの存在

EC市場におけるシェア拡大に伴い、アマゾンの広告料金が上昇しているとCNBCは報じている。21年8月における、アマゾンの検索広告の1クリック当たりの料金は1.27ドルで、1年前から48%上昇した。

出品者はアマゾンに対し、取引手数料や物流サービスの費用なども支払っており、今では商品販売価格の5割以上をアマゾンに支払う大手も珍しくないという。こうした料金上昇の背景には、アマゾンアグリゲーターと呼ばれる、アマゾンセラー(出品者)買収ビジネスの存在があるとCNBCは伝えている。

アマゾンアグリゲーターは、ベンチャーキャピタルから得た豊富な資金と優秀な人材(ECエキスパート)を武器に中小のアマゾンセラーを買収し、事業を拡大させている企業。積極的な投資で事業拡大を図っており、アマゾンに支出する広告費も増えている。彼らの存在が、アマゾンの広告事業急成長の一因になっている。

  • (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2021年9月22日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)