Netflix会員2億人突破、コロナで動画活況 ディズニーやワーナーなど新戦略で対抗
米動画配信大手のネットフリックス(Netflix)は先ごろ、2020年末時点の世界の有料会員数が2億366万人となり、初めて2億人の大台を突破したと明らかにした(図1)。
20年の会員数の伸びは2月まで例年と同様の水準で推移していたが、3月以降、新型コロナウイルスによる巣ごもり需要の影響で急増した。
巣ごもり需要と海外事業の成長
ネットフリックスの20年10~12月期の売上高は前年同期比22%増の66億4444万ドル(約7000億円)。一方、純利益は5億4216万ドル(約570億円)で同8%減少した。ただ、20年通期の純利益は27億6139万5000ドル(約2900億円)で、前年から48%増加している。
同社は、21年通期のフリーキャッシュフロー(純現金収支)が収支トントンになると予測しており、「日常業務のための資金調達はもはや必要なくなる」との見通しを示している。
その背景には、新型コロナによる巣ごもり需要に加え、順調に会員を増やしている海外事業の成長があるようだ。
20年12月末時点の有料会員数は、3カ月前と比べて851万人増加した。その内訳は欧州・中東・アフリカが約446万人増、日本を含むアジアは約199万人増、中南米が約121万人増。これに対し米国・カナダは約86万人増にとどまった。
海外に積極投資
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ネットフリックスは海外投資を積極的に進めている。「サブサハラアフリカ」と呼ばれる、サハラ砂漠以南のアフリカ地域でコンテンツを拡充し、会員増加を狙っている。
20年1月には、フランス・パリに新たな拠点を設置した。フランス事業の投資を大幅に増やす計画で、オリジナル作品の制作・配信に力を入れている。
20年6月には、インド大手財閥リライアンス・インダストリーズ(RIL)と動画コンテンツ調達の複数年契約について協議中だとロイターなどが報じた。傘下の関連企業がネットフリックス向けの番組を制作・供給し、インドで独占配信する計画だ。
ネットフリックスによると、同社には撮影済みと配信準備が整っている作品が500タイトル以上あり、これらを21年に順次公開していく予定。
少なくとも1週間に1本のペースで新作を配信するとしている。新型コロナウイルスの影響で、他社の作品制作が停滞する中、ネットフリックスは巣ごもり需要に対応しており、これが同社の強みになっているとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
ディズニーなど競合続々、ネット戦略加速
ネットフリックスの競合サービスには、米ウォルト・ディズニーの「Disney+」や米AT&T傘下、米ワーナーメディアの「HBOマックス」、米コムキャストの「ピーコック」、ディスカバリー・コミュニケーションズの「Discovery+」、米バイアコムCBSの「パラマウント+」(21年3月に北米・中南米で開始予定)などがある。
このうち、19年11月にサービスを開始したDisney+が勢いを増している。ディズニーは20年10月、メディアとエンターテインメント事業を再編すると明らかにした。コロナの影響で映画興行事業が打撃を受ける中、Disney+などのコンテンツ配信と販売、広告などの事業を1つの組織に集約。直販戦略を加速させるという。
ディズニーは21年2月11日、Disney+の会員数が20年12月末時点で9490万人に達したと明らかにした(図2)。同11月時点では24年までに6000万〜9000万人になると予測していたが、それを上回った。
前述した通りディズニーは19年11月にDisney+を開始した。初日の登録会員数は約1000万人。その後3カ月ごとに2650万人、3350万人、5750万人と推移し、20年12月10日の投資家向け説明会で8680万人に達したと明らかにしていた。24年までの目標会員数を2億3000万〜2億6000万人に上方修正している。
20年5月にサービスを開始したワーナーメディアのHBOマックスは、Disney+のような規模には達していない。だが、同社も新戦略を打ち出している。ワーナーメディアは20年12月、米ワーナー・ブラザースの新作映画を1年間、劇場とネットで同時公開すると発表した。
こちらもコロナ禍に対応した施策だ。多くの映画館が閉鎖を余儀なくされる中、新作を劇場公開と同時にネット配信することで収益の拡大を図る。21年は「マトリックス4」や「DUNE/デューン 砂の惑星」など20本近くを公開する予定としている。
- (このコラムは「JBpress」2021年1月21日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)