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アマゾンがドローン宅配の認可取得、さっそく試験サービス

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
写真出典:Amazon.com

 米アマゾン・ドット・コムが米連邦航空局(FAA)から、ドローン(無人機)を使った配送サービス「Prime Air(プライムエアー)」に必要な認可を受けたと、米ウォール・ストリート・ジャーナル米CNBCが報じた。

 これは、単体の飛行実験ではなく、複数機で構成するドローン配送システムを運行できるというもので、操縦者の視界を越える範囲の飛行も可能になる。また、アマゾンが今回得た認可は競合企業のものよりも広い地域での運行が可能になるとという。

 これを受け、アマゾンは試験サービスを開始する。プライムエアー担当デビッド・カーボン副社長は「この認可はプライムエアーにとって重要な一歩だ」と述べた。また、連邦航空局のマイケル・フエルタ長官は「(アマゾンの認可は)長い時間を経てようやく実現した」と述べている。

「注文から30分以内に配達」

 アマゾンは昨年6月、米ラスベガスで開催したカンファレンスで、配送用ドローンの最新モデルを披露した。

 これは、大きさが大人の身長ほどある。垂直離陸した後、一定の高度に達すると、回転翼をほぼ垂直に傾けて水平飛行する。安全のために回転翼を覆っているシュラウド(カバー)は水平飛行時に固定翼として機能する。こうしたメカニズムであるため電力効率が高いと、アマゾンは説明する。

 約2.3キログラムまでの荷物を運び、最長24キロメートルの飛行が可能。アマゾンは顧客宅の庭へ注文から30分以内に商品を届けることを目指している。

グーグルや物流大手もサービス展開

 一方、米グーグルの持ち株会社である米アルファベット傘下でドローンメーカーの米ウイングや、米物流大手のUPSも連邦航空局から認可を取得しており、すでに米国の一部地域で試験サービスを始めている。

 例えば、グーグルのウイングは昨年10月、米物流大手フェデックス(FedEx)や米ドラッグストアチェーン大手のウォルグリーン、地元の小売業者と提携し、バージニア州で宅配荷物や市販薬、スナック菓子、文房具などを届けるサービスを始めた

 こちらも回転翼と固定翼による垂直離着陸と水平飛行が可能なドローン。これにナビゲーションシステムを組み合わせ、小包ほどの荷物を数分で顧客の敷地内に届ける。ドローンは目的地に着くと上空からロープを垂らし、庭や玄関前、私道などに荷物を降ろす。

 また、UPSは昨年3月、ノースカロライナ州の医療機関と提携して医療用品を病院に運ぶサービスを開始した。今年5月には、米ドラッグストアチェーン大手CVSヘルスとも提携し、フロリダ州の高齢者居住地区「ザ・ビレッジズ」で処方薬を配送するサービスを始めている。

全米規模の本格展開には数年かかる

 こうした試みが進むものの、ドローンによる宅配サービスが全米各地で日常的に提供されるまでには数年がかかると指摘されている。

 連邦航空局は現在、米国内を飛行するドローンを対象に、識別情報と位置情報を発信する「リモートID」システムの装備を義務付ける規則を策定中だ。

 連邦航空局や治安当局が管轄内を飛行するドローンを追跡できるようにし、安全・治安対策を強化するのが目的という。

 今後は、人口密集地における日常的な飛行に関するルールの策定も必要になってくる。これらの連邦規則が整備・施行されるまでは、アマゾンやグーグル、UPSのようなサービスの本格展開は難しい状況だと指摘されている。

  • (このコラムは「JBpress」2020年9月2日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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