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アマゾンが「社会的距離」違反に罰則、2回で解雇も、新型コロナ対策

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、人と人との距離を開け、接触機会を減らす「ソーシャル・ディスタンシング」(社会的距離)の重要性が叫ばれている。

 こうした中、米アマゾン・ドット・コムは3月中旬に米国の物流施設の従業員に対し、6フィート(約1.8メートル)の距離を取ることなどを義務付けた。

 米CNBCによると、その後、同社はこの規則に罰則を設けている。このことで従業員に不安が広がっているという。

故意の違反で厳重注意

 規則に故意に違反した従業員は文書による厳重注意を受ける。厳重注意を2回受けると、解雇処分となる場合もあると、広報担当者は述べているという。

 新たな規則は全米の物流施設で導入された。その中には東京ドーム約4個分の巨大フルフィルメントセンターもあり、そこでは数千人の従業員が働いているという。

 アマゾンの広報担当者は、「従業員の中には故意に違反を犯す人がいるが、それは本人と他の従業員を危険にさらす行為だ。社会が危機に直面している今、重要な仕事を担う従業員の健康と安全を守るために特別の措置を取っている」と説明している。

 しかし、アマゾンがどのように違反を確認するのか、その明確な基準とは何か、などは明らかになっていないという。中には不当に処分されるのではないかと不安を抱いている従業員もいるとCNBCは伝えている。

従業員、「安全対策不十分」と抗議

 そもそも、こうした感染症防止対策は、従業員の抗議などアマゾンに対する厳しい批判によって強化されたという経緯がある。例えば、3月30日、ニューヨーク・スタテン島にある物流施設で50人以上の従業員がストライキを実施したと、米ウォールストリート・ジャーナルや米ニューヨーク・タイムズが報じた。施設内で新型コロナウイルスの陽性が確認されたことを受けたもので、従業員らは、職場の安全対策の不十分さやリスクに対する賃金の低さなどを訴えた。

 4月1日には、デトロイト近郊にある施設で従業員らの抗議デモがあったと報じられた。こちらも新型コロナの感染が確認されたことがきっかけだった。

アマゾン、公衆衛生対策を強化

 こうした抗議や議員らの批判を受け、アマゾンは公衆衛生対策を強化。4月2日には、一部の物流施設で検温を始めたと発表した

 発熱がある場合は帰宅させ、3日連続の平熱を確認した後に復帰するよう指示している。また、「徹底した消毒・洗浄を行い、消毒シートや消毒液も十分に配置し、マスクも支給する」と説明している。

 しかし、これらの対策では不十分だと、従業員らは訴えている。一部の従業員は「もし会社が我々の健康と安全を真剣に考えているのなら、施設を2週間、閉鎖すべきだ」と抗議しているという。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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