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アマゾンの新型コロナ対策で小規模業者に大打撃

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムが新型コロナウイルス感染拡大を受けて講じた対策が、数多くの小規模小売業者を窮地に追い込んでいると米CNBCが報じた。

一部の商品除いて新規の入荷をストップ

 多くはコスト削減を余儀なくされている。すでに従業員の一時帰休を実施した業者もあり、中には一時解雇に踏み込む業者も出てきそうだという。

 アマゾンは3月17日、欧米の物流施設で入荷制限を実施すると発表した。消費者が今最も必要としている生活必需品や医療用品などを除き、新規の入荷を止めるという措置だ。これにより補充と出荷の効率化を図り、顧客にいち早く商品を届けるのが狙いである。

 しかし、これは、衣料品や家電、旅行用品、玩具などを販売している業者にとって、アマゾンの倉庫に入荷できなくなることを意味する。これまでに預けた在庫がなくなれば、その時点でそれら業者の商売はストップする。

上位出品者のほぼ9割がアマゾンの物流サービス利用

 業者の多くは、商品の保管と配送などの業務をアマゾンが代行する出品者向けサービス「フルフィルメント・バイ・アマゾン」を利用している。

 アマゾンのマーケットプレイスでは、このサービスを利用しなくても出品することができる。しかしその場合、出品者が自ら保管場所を確保し、発送業務を行う必要がある。

 CNBCによると、アマゾンのマーケットプレイスでは販売額上位1万社のうち87%がこのフルフィルメント・バイ・アマゾンを利用しているという。

「フルフィルメント・バイ・アマゾン」のメリットとは

 それには、いくつかの理由があるとCNBCは伝えている。

 1つは、フルフィルメント・バイ・アマゾンの保管料と配送料が他の業者よりも安いこと。

 また、フルフィルメント・バイ・アマゾンを使うと、有料会員「プライム」向け特典の対象商品として扱われるようになる。プライム会員は、追加料金なしの急ぎ便で商品を受け取れるため、このロゴが付いた商品をより多く購入する傾向があるという。

 このサービスを利用している業者の多くは、この措置が長引くのではないかと懸念しているという。

 そうであれば、人件費をさらに削減する必要に迫られ、「一時帰休を一時解雇に変更せざるを得ない状況になる」とこぼす小売業者もいると、CNBCは伝えている。一方で、アマゾンの広報担当者は「当社の販売パートナーの理解に感謝している」と述べている。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響でネット通販の需要が急増している。アマゾンなどの大手では、多くの都市で日用品を中心に配送に遅延が生じていると伝えられていた。

 アマゾンもサービスに短期的な影響が出ているとし、「販売パートナーと商品確保に努め、配送体制も強化する」と述べていた。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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