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横行する便乗値上げ、ネット大手が対策強化 グーグルやFBがマスクの広告停止

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米CNBCなどの米メディアの報道によると、米グーグルは医療用マスクのネット広告を一時的に禁止することを決めた。

医療用マスクの広告一律禁止

 新型コロナウイルスの感染拡大の混乱に乗じて利益を得る行為が広告ポリシーに違反するためだという。同様に広告が増えている防護服や除菌剤なども引き続き監視を強化し、必要があれば適切な措置をとるとしている。

 グーグルはこれまで、新型コロナウイルス関連の虚偽情報排除に向けた取り組みを進めてきた。例えば、確固たる根拠もなく、感染を防止するなどと謳う商品を広告欄やショッピングページから削除してきた。マスクはそうした謳い文句がなくても一律禁止することにしたという。

 米フェイスブック(FB)も同様に「公衆衛生の緊急事態を悪用する行為を禁ずる」として、医療用マスクの広告などの掲載を一時停止している

米イーベイやメルカリ、ヤフオクも

 需要増に伴い品薄となった商品を自社のプラットフォームから削除する動きは、他の企業にも広がっている。米電子商取引(EC)大手イーベイは3月5日に医療用マスクやハンドサニタイザー(手指用消毒ジェル)、除菌シートなどの出品を禁じると明らかにした。日本でもフリーマーケットアプリ大手のメルカリやネットオークションのヤフオクが同様の措置をとったと伝えられた。

 いずれも新型コロナウイルス感染拡大の混乱に乗した価格つり上げを阻止するのが目的だ。米EC大手のアマゾン・ドット・コムでは、出品者がマスクを通常価格の約26倍、ハンドサニタイザーを同40倍以上で販売していると指摘された。

 これについて、アマゾンの広報担当者は「世界的な健康危機の中、不届き者が意図的に必需品の価格をつり上げていることに失望している。規約に従って数万点の商品を削除した」と述べた。

米上院議員がアマゾンCEOに質問書

 しかし、こうした報道内容を米民主党のエドワード・マーキー上院議員が問題視。アマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)に質問書を送った。

 マーキー上院議員は、価格つり上げへの対策が不十分だとして、アマゾンを厳しく批判。便乗値上げの判断基準、出品者への警告と商品の削除状況、新たな対策を回答するよう同社に求めた。

 CNBCによると、アマゾンは3月6日までに上院議員の質問に回答し、規約違反の商品53万点を削除し、2500件の出品者アカウントを一時停止したと明らかにしている。

 アマゾンの公共政策担当副社長は「マーケットプレイスの監視を強化し、出品者には規約順守を徹底させる」と説明。また、悪質出品者の訴追を視野に入れ、米各州の司法長官と協議していることも明らかにした。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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