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アマゾン、便乗値上げ対策を強化、新型コロナで40倍超の商品も

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米CNBCによると、米アマゾン・ドット・コムは新型コロナウイルスの感染拡大の混乱に乗じて虚偽表示をしたり、価格をつり上げたりした出品者の商品を販売停止にした。

 「感染症の治療薬」「感染症の予防に効く」「米疾病対策センターの基準を満たしている」などと疑わしい文言を使って説明している商品は100万点以上あったという。

マーケットプレイスの禁止事項

 また、アマゾンが不公正な価格と判断した商品は数万点あったという。同社のマーケットプレイスでは価格設定規約を設けており、いくつかの禁止事項がある。

 例えば、(1)短期間で価格を急激に引き上げること、(2)最小販売個数を定めること、(3)法外な送料を設定することなど。同社では消費者の信頼を損ねるこれらの行為を禁止している。

 規約違反が見つかった場合、「ショッピングカートボックス(Buy Box)」と呼ばれる、「カートに入れる」ボタンの資格剥奪や、商品の削除、販売権の一時停止・永久停止といった措置を取るとしている。

価格40倍以上の商品も

 しかし、衛生用品や紙製品の需要の高まりに伴い、依然として、これら商品の便乗値上げが増えているという。

 英フィナンシャル・タイムズによると、米国では通常販売価格が14.99ドル(約1600円)の3Mの20個入りマスクが387ドル(約4万1600円)と、約26倍。

 ピュレルのハンドサニタイザー(手指用消毒ジェル)の24個入りは10ドル(約1100円)以下だが、400ドル(約4万3000円)と、40倍以上に跳ね上がった。

不当な価格つり上げを数万点削除

 こうした中、アマゾンの広報担当者は「世界的な健康危機の中、不届き者が意図的に必需品の価格をつり上げていることに失望している。規約に従って数万点の商品を削除した」と述べている。

 「便乗値上げができるような場所はアマゾンにはない。引き続きマーケットプレイスを監視していく」と強調し、監視を強化していく方針を示している。

 ただ、サイト上には数多くの高価格商品が存在しており、アマゾンの監視が追いついているとは言えない状況だと指摘されている。

増大するマーケットプレイスの管理に苦慮

 アマゾンでは出品者をサードパーティーと呼んでおり、これら収益性の高いサードパーティー商品を積極的に販売する戦略を打ち出している。

 ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は昨年4月、株主あての書簡で同社のeコマースサイトにおける物品販売総額のうち、サードパーティーの占める比率が58%になったことを明らかにした。この比率は20年前では3%、10年前では30%だった(図1)。

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 こうして増大し続けるサードパーティー商品に紛れ込む膨大な不当行為にアマゾンは苦慮していると、フィナンシャル・タイムズは伝えている。

  • (このコラムは「JBpress」2020年3月5日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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